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赤き竜のための協奏曲  作者: 烏合衆国
第三章 エルダープサー
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3−5 サタナ記念⑤


〖十五頭がいっせいに発翔スタートしました! 横並びの竜群から最初に抜け出したのは4番アルキザック、後ろに9番ガットアップ、6番ザールカーフが続きます! その後ろには四頭ほど固まっています、内から1番マカイーラス、7番ナゼジャガー、10番エルダープサー、15番ユークスラメルと並び、それを下から見上げるように3番ヤチルテルビナは八番手に控えています! 外に回って13番バルサガ、2番ゼイケデイス! 後団には5番シャッターレックス、11番チャタモンガ、14番ケザーシャ、8番アクマルハン、少し上ずり気味でしょうか12番フェサーナ!〗




 発翔スタートからはそんな展開だった。テルビナはやや低空で、十五頭のちょうど真ん中を飛ぶ。併翔を経て、とりあえずの作戦はこういった形になった。ボンヴァルノン号のような、逃げ続けるための体力はないが、爆発スパート力についてはマーファハーブ号に匹敵する才能がある、と僕は見ている。低空気味なのは、多頭立てに慣れていないテルビナに配慮し、竜群と距離を取らせるという、ベレー様の作戦であろう。

 プサーは先頭集団に睨みを利かせられる中団先頭辺りを狙っていて、その飛翔は今年の五歳竜、エルダーフェス号に似ている。かなり強気な飛翔だといえるだろう。




〖最初のコーナー、先頭入れ替わって9番ガットアップ、6番ザールカーフが続く、アルキザックは下がって三番手! 15番ユークスラメルは抜け出してこの位置、マカイーラスとエルダープサーが追います! 7番ナゼジャガー、少し下がってヤチルテルビナと並ぶ、2番ゼイケデイスは内を通り上がってこの位置! 13番バルサガと5番シャッターレックスはこれに喰らいつきます! 11番チャタモンガはその後ろ、8番アクマルハン、14番ケザーシャが続きます! 少し離れてフェサーナは巻き返せるか!〗




 序盤に飛び出したアルキザック号はすぐに落ちてきて、先頭が入れ替わる。体力が続くなら、逃げ策も悪くはないが、生憎ボンヴァルノン号のような竜はそうはいない。ザールカーフ号は先頭は取らず、仕掛ける時機を窺う飛翔だ。

 ゼイケデイス号は、コーナーで開いた内側を、最短距離で翔ける。アルガ様の騎乗、流石の巧さだ。コーナーに慣れていないと、膨らんで回りがちになってしまうものだが、ゼイケデイス号はとても綺麗に、一気にテルビナの後ろにまで上がってくる。




〖さァ直線に入って、先頭は依然9番ガットアップ、6番ザールカーフがそれを追う! 三番手にはユークスラメル、後ろには10番エルダープサー!4番アルキザックはうわずり気味に7番ナゼジャガーと並びます! 内から2番ゼイケデイス、3番ヤチルテルビナは低空を保つ、マカイーラスは竜群を嫌ってか翔路コースを外れていきます! 5番シャッターレックスは十番手、バルサガとチャタモンガが続きます、8番アクマルハン、14番ケザーシャ、12番フェサーナは大きく離されている!〗




 上ずり気味、とは前方の竜に並べず、やや高度が上がっている状態を指す。上ずるのは、速力か翔路コース取りに問題があるのだが、どちらにせよ体力を消耗する飛び方だ。反対に、高度が下がってしまうのを潜り気味というが、今のテルビナのような飛翔は潜り気味とはいわない。竜群から外れてはいるわけだが、その瞳は、常に入線ゴールを見据えている、確信の伴う飛翔だからだ。




〖第3コーナー、ここでザールカーフが仕掛ける! 後続を突き放してコーナーを回った、これに続くはエルダープサー、少し遅れて15番ユークスラメル! 直線に入ってここで低空のまま仕掛けたヤチルテルビナ! チャタモンガが追い上げてくる、先頭6番ザールカーフに迫る10番エルダープサー、3番ヤチルテルビナはユークスラメルに並ぶ、11番チャタモンガはゼイケデイスに追いついて更に速度を上げる!〗




 ザールカーフ号は少し早めに仕掛けたようだ。ふつうは第4コーナーで速度を上げ最後の直線で勝ち切るというのが定石セオリーだろうが、この早めの仕掛け(スパート)はそれだけ自信があるということか。それを見て、竜群も恐れず飛び出したプサーは翼色はねいろ充分に見える。


 テルビナは低空のまま仕掛けたが、これにはなるほどと思わされる。下からいけば、上の竜からの視線を切れるため、上の竜は、先行リードしているのにも関わらず、後続を恐れて楽には飛ばせてもらえない。それに通常、高度を下げながら入線するような飛翔が一般的に行われるが、その損失ロスも補える飛び方だ。ゼイケデイス号はチャタモンガ号に並ばれるが、ユークスラメル号の失速を考えると、まだ巻き返せる位置にはいる。




〖エルダープサー先頭、ここでヤチルテルビナだ、ヤチルテルビナ上がってきた、ザールカーフ苦しいか、チャタモンガが追い上げてくる、ヤチルテルビナ追いすがる、エルダープサーか、ザールカーフか、翼をひらめかせ――入線ゴール! さァ判定はどうでしょう⁉ 大接戦を制したのは――






 ――ヤチルテルビナ! 3番ヤチルテルビナが最初の重賞を獲りました! まずは一冠を獲りましたヤチルテルビナ、そして騎手はベレー・ハイジン=ハスト様!〗






「――ッしゃ!」




 僕は両隣に敵竜ライバルの担当がいたことも忘れて思い切り喜ぶ――左に座るシャーラも、両手を天に突き上げて喜んでいた。手には小さな《《券》》を持っていた。




〖――続く二着はザールカーフ号、三着はエルダープサー号! 稀に見る大接戦でしたサタナ記念、今年も素晴らしい竜たちの戦いに期待が募ります!〗




 掲示板によると、

 一着、ヤチルテルビナ号。

 二着、アタマ差でザールカーフ号。

 三着、ハナ差でエルダープサー号。

 四着、半竜身差でチャタモンガ号。

 五着、3/4竜身差でゼイケデイス号、という結果だった。


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