3−4 サタナ記念④
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帝立第三競竜場。
華麗月の重賞、サタナ記念。
二歳竜最初の重賞にして、十二の重賞の開幕戦である。十五頭立ての中には、ヤチルテルビナ号は勿論のこと、グィーベが担当するエルダープサー号、シャーラの担当するザールカーフ号、ミレイの担当するゼイケデイス号も漏れなく含まれている。
僕たちは観客席にて、並んで競争の動向を見守っている。厳密にいえば、座っている僕の右隣に、ミレイがむくれて座っており、左隣のシャーラはずっと新聞とにらめっこをしている。グィーベはというと、前のほうで立ち見をしていた。シャーラは今日も買うつもりらしいが、グィーベが会話をしてくれないらしくて、独りで勝利竜を当てるつもりのようである。同じ理由で、ミレイはずっと不機嫌だ。ミレイにグィーベが話しかけるほうが、珍しいとは思うが。
下見所に竜たちと騎手たちが姿を見せる。
〖――勝利の女神は誰に微笑むか、快晴の帝立第三競竜場、サタナ記念。出翔竜を紹介いたします――〗
サタナ記念は、神話の女神の名を冠した重賞だ。最初の重賞にして、競争の女神に愛されているか否か、それが完全に決定づけられる、大一番である。
十二の重賞も、最初こそ十五頭立てと多いが、次第に出翔可能頭数は減っていく。ここで結果を残せなければ、次の重賞では他の竜に枠を奪われる。最初の重賞二つに連続出翔できたかどうかで、十二の重賞の完翔率はかなりの差が開く。
〖――天は自ら助くる者を助く。2番ゼイケデイス、アルガ・オテュール様――〗
ミレイの担当竜の騎手は、今年大帝賞を翔ける五歳竜世代の、セーレーサガット号などに騎乗されている、アルガ様が務められる。まだ若い騎士様で、確かそのセーレーサガット号と共に競竜界に現れ、その初年に剣賞を獲られた新進気鋭であられる。ザラエグ様やベレー様に取って代わる新世代と持ち上げられることも多いが、本人はそれに乗っかるというよりは、一歩引いて、後進として慎ましい態度を見せており、騎手にも観客にも人気がある。
ゼイケデイス号は、灰褐色の鱗の竜で、アルガ様に曳かれて堂々と下見所に現れた。他の竜というよりは、観客席が気になっているようで、一瞬その鋭い眼が僕を睨んだ気がした。
〖――“怪獣”ヤチルシームの産竜が遂に競竜場に降り立った。3番ヤチルテルビナ、ベレー・ハイジン=ハスト様――〗
今回は3番という位置だ。悪くはないが、結局多頭環境でのテルビナの飛翔がどうなるかにはまだ不安がある。
〖――太陽のごとき輝き、6番ザールカーフ、サルダット・タルギサガス様――〗
シャーラの調教したザールカーフ号は、予定通りサルダット様が騎乗されるようだ。テルビナと新竜戦にて競ったガラン号はその後、未勝利戦で勝ちはしたらしいが、サタナ記念には出翔登録すらしなかったらしい。やはり、『新竜戦に勝った』という実績を与えることだけが目的だったのだろう。
テルビナより明るい茶色、橙色に近くもある鱗で、やや大柄なほうだろうか、骨格のがっしりとした乗りやすそうな外形をしている。
〖――エルダーの血統は今年も競竜界を騒がすか。10番エルダープサー、ザラエグ・ロラン様――〗
そしてプサーである。
近頃は、厩舎のある練習場では見かけておらず、どこか別のところで調教を行っているらしい。どう仕上げてきているかは見ものである。まあ彼のことだから、満足のいく水準まで仕上げていることには疑う余地はないが。
〖――魔力提出が完了いたしました。各竜のゲート入りが完了するまで今しばらくお待ち下さい――〗
竜たちが順にゲートに入っていく。ゲートには、奇数番の竜が1番から順に入った後、偶数番の竜が2番から順に入る。よって、3番のテルビナは二番目に入ることになる。魔法的ゲートは、機械的ゲートに比べて圧迫感は軽減されているが、それでも十五頭立てで、最初のほうに入った竜は、最後の竜、今回は14番の竜が入るまで、ゲートに収まっていなければならないのは、竜にとっては負荷となる。ゲートに入るのを嫌がる竜が数頭いると、先に収まった竜たちがゲート内にいなければならない時間はかなり長くなる。
幸い、今回はそのような竜はおらず、プサーも、比較的早くゲートに入っていた。
十五頭の竜が、ゲートに入り終える。
〖――新たな世代の三年が今、幕を開けます。華麗月の帝立第三競竜場、サタナ記念、8フェレン。――発翔しました!〗




