3-2 サタナ記念②
サタナ記念は、距離8フェレンで執り行われる。テルビナの新竜戦は、これに合わせた距離であった、新竜戦での飛翔を見る限り、この距離に適性がないということはないだろう。問題は――頭数である。
新竜戦は六頭立て。対してサタナ記念は――十五頭立てだ。
なんと競争相手が、二倍以上に増えるのである。
距離は同じでも、頭数が多いと、競争展開は随分と変わってくる。逃げ策が被ったり、仕掛ける時機が重なったりと、より複雑になっていくのである。騎手の方々はほとんどがこれまで多くの競争に出場しており、経験を積まれているため、気遣うべきなのは竜のほうだ。
竜は生態的に群れない生物であるため、近くに他の個体がいればいるほど、緊張状態に陥る。勿論、それに伴う悍性の強さが、競争での爆発的な飛翔に繋がるわけだが、それでも、生まれて初めて十数頭も他の竜がいるところに放り出されて、調教通りに飛べというのは無理な話である。
ではどうすればよいのか。まっさきに思いつくのは模擬競争である。要は、本番さながらに、竜を招集して発翔から入線まで飛んでみるのである。しかしこれにはいくつか問題がある。まず、そんなに竜は集まらない。十数頭の竜を集めるには、十数人の調教師、あるいは騎手の予定を調整しなければならない。そしてそもそも、それだけの頭数の競争には必然、練習場や競竜場の貸し切りが必要になる。また、本番さながらといっても、主たる目的は多頭立てに慣れさせることであるため、怪我の恐れがあるような、あまりにも過酷な飛翔はさせられず、結局、競争というにはお粗末な、普段の調教でやっているような緊張感のない慣らし飛行しかできないだろうというような理由で、ふつう模擬競争は行われない。
一般的に、他の竜と共に飛ぶ感覚というのは、併翔によって養う。三頭ほどが一緒に飛び、飛翔時間を競ったり、実戦に向けた作戦を練ったり試したりする。競争直前に、調教の仕上げとして行われることが多いが、競争にて他の竜と飛ぶことじたいに慣れさせるためや、飛調を確かめるためにも併翔は向いている。
では併翔相手を、どうやって探せばいいかというと、繋がりを利用するしかない。そのほうが予定を擦り合わせやすいし、竜主様どうしのご関係がある以上、見ず知らずの相手と勝手に組むというのは控えるべきだ。
そもそも、同じ世代の竜から選ぶとしたら、ふつうは競争の敵どうしになる。よって、変に気を遣い合うよりは、同じ競争に出ない竜に打診してみたり、竜主様の他の持ち竜から選んだりするものだ。
テルビナの評判は既に立っていて、声をかければ恐らく、数頭は併翔相手として名乗り出てもらえるだろう。そこからの選別は、竜主様かベレー様に、お任せすることになるだろうが。




