虫が苦手な、マジシャン
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」のep.19 銅等級昇格 までをお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
「戻りましたっ」
「ただいまやでっ」
菖蒲先輩と花図鑑グループに戻ったアタシは、すでに他の先輩たちも戻っているのに気づいた。ちょっと時間かかっちゃったかな?
「おかえりにゃ(=´ ∇`=) その様子にゃと、早速誰かのお悩みを解決したみたいにゃね?ヾ(⌒(_*Φ ﻌ Φ*)_」
「凄かったで、ペンタスちゃん! 次から1人で任せられそうや」
「へぇ、やるじゃんよ!」
「そ、そんな、たまたまですから」
早速事細かに報告されるもんだから、赤面しちゃうわ。特にクリフさんと同じ、ナイトの百合先輩が熱心に聞いてた。
「他のエブリワァーンは、どうデシータ!?」
「ふえぇ……やっぱり何人か、気になる子がいるよぉ~」
「じゃあみんなも、1人ずつ報告夜露死苦」
ん? 報告?
「えっと、情報共有するんですか?」
「そうだポン。得た情報をポンたちが悪用することはないけど、1人で対処できることはしれてるポン。みんなで対処できるように、共有してるポン」
なるほど。だからさっき、菖蒲先輩が事細かにクリフさんのこと説明してたのね。百合先輩が特に熱心だったのも、今後ナイト部屋では、特にクリフさんを注視するためかな? あれだけでちゃんとフォローできてるかの確認もいるだろうし。
「じゃあポンから! マジシャン部屋に、青い顔してるポンがいたから、声かけたポン!」
◆◇◆◇◆
そのポンは、森林地帯(昼)で装備集めしてる姿を見た時から気になってた。
パーティは別だったけど、近くにいたから見えた、何かに怯える姿。特定の敵が歩いている方向を、絶対に見ようとしないことからも明らかだった。
避けてるのは蜂型と蜘蛛型。リス型・兎型・鳥型は平気そう。これはもしかして……。
同じマジシャンだったので、青い顔してマジシャン部屋に1人でいるのを見つけて即、話しかけようと思った。
うーん、このポンの場合は、フレンドリーな方がよさそう。声はこのままでいいポンね、アバターだけかえて……っと。
「Miyabiさん、ポンばんわ!」
とびきりの笑顔で挨拶したら、Miyabiさんははっとして、こちらを見た。
「こんばんわぁ……」
「大丈夫ポン? 顔が青いポンよ?」
「大丈夫じゃないのぉぉ! ちょっと聞いてよぉぉ!」
首が前後にガクガク揺れるほど激しく揺さぶられ、さすがに驚く。
「お、落ち着くポン! ちゃんと聞くポン!」
その言葉でようやくMiyabiさんは少し落ち着いたみたいで、お悩みを話してくれた。
「あ、あのね、私……虫全般が駄目なの! 名前も聞きたくないし、姿も見たくないの!!」
やっぱり……。
「でも森林地帯(昼)って虫だらけじゃない!? しかも大きいじゃない!?
なるべく見ないようにしてるんだけど、だけどぉ、怖いものは怖いのぉぉ!!」
「それは……今日1日頑張ったポンね……」
Miyabiさんにとって、森林地帯(昼)そのものが地獄だったんだろうなぁ。
「でも、装備集めが終わるまでの辛抱なら、あと少しだポン!」
「違うの、それだけじゃないの! このままだと私、まずいのぉぉ!!」
「まずいポン?」
「だって私……私……武器がすごく、火属性に偏ってるんだもん……!!!」
その一言で、Miyabiさんがこうも取り乱す理由が分かって、顔が引きつったポン。
つまり火属性選抜チームに選ばれる可能性が、すごく高いわけで……。
森林地帯(昼)のボスは……巨大蜘蛛。
「それは……確かに深刻ポン……」
「でしょおおお!? 私どーーーしたらいいのぉ!?!?」
「蜘蛛が苦手」と言う理由で選抜チームを辞退することは……可能かもしれないけど、その場合は「次の候補者がクエストクリアできるか」という別の問題が出るわけで。
恐らくMiyabiさん自身がそれをよく分かってるから、逃げるんじゃなくて、どう立ち向かうかを考えようとしてくれてる……。
これは、支えないわけにはいかない!
「…………何か他のものに置き換える、とかどうポン?」
我ながら、いいアイディアが浮かんだんじゃないかしら?
「……置き換える?」
「そうだポン! 名前も呼びたくない黒い虫のことを、みんながGって隠語で呼ぶのも、その1つだポン! 最近ではCMも姿は出なくて、『結果』なんて文字に置き換えられてるポン!」
「言われてみれば……そっかぁ! 置き換えたらいいのね!? いいね、それで行こうか!」
Miyabiさんの顔がパーッと明るくなったので、ほっとした。この様子なら、大丈夫そう。
「ありがとう! 私、希望が見えた! ちょっと真剣に考えてみるわ!」
「やったポン!」
◆◇◆◇◆
「……というわけで、解決してきたポン!」
虫かぁ、確かに苦手な人は多そうよねぇ。アタシもアークタルラと対峙するって考えたら、後列にいても怖いかも……。
「やるじゃんよ、梅!
となると、虫がいるエリアは森林地帯(昼)だけじゃないから、みんなMiyabiさんについては、他エリアの虫の時も注意だよっ!」
「任せてくだサーイ!」
こんな感じで、報告会は進んでいくらしい。アタシは忘れないように、メモを残すことにする。
余談だけど、次の日にアークタルラのことを「タラバガニ」と呼びながら戦うMiyabiさんを見て、アタシたちは全員、笑みがこぼれた。




