学び続ける、マジシャン
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第5章ep.91 水の加護 までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
アタシがその様子を目撃したのは、山岳地帯(夜)での合成素材集め初日が終わった夜……いつもの見回りをしてた時のことだった。
「ウペウペペ?」
「ウペ!」
「ウッペー!」
LiEさんが……ウパぺんに向かって、ウパぺん語(?)で話しかけてる!?
しかもウパぺん、返事してるの!?
驚きすぎて固まってたら、LiEさんがアタシの存在に気づいて、挨拶してくれた。
「ペンタスさん、こんばんは。今夜は綺麗な夜ですね」
「え? あ、こんばんわ!?」
「? そんなに驚かれなくてもよろしいのに」
「いや、驚くでしょ! 今のは何、ウパぺん語!?」
そう聞くと、LiEさんは一瞬きょとんとしたけど、ウパぺんと顔を見合わせると……エリアチャットに書き込まれたスカオー語に目を走らせ、微笑んで答えた。
「うふふふ、そうなんですの。実はやっと、簡単な会話ならウパぺん語でできるようになりまして」
「ほ、ホントに!?」
「ええ」
「ウペウペ」
他の人がこんなこと言っても、冗談だと思うところだけど……スカオー語検定自称準2級を自称するLiEさんが言うと、すんなり信じられるから不思議よね。
ウパぺんも何か、頷いてるし。
「本当はスカオー語での会話をしてみたかったのですが、ウパぺんの身体ではそもそも、スカオー語の発音ができないとのことでしたので……代わりにウパぺん語を習ってみましたわ」
「なるほど、ペンギンに人語は難しいと。そらそうよね、身体の構造が違うんだもん」
ゲーム世界にもそれが適用されるなら、だけど。
「つかウパぺんからどうやって、ウパぺん語習ってるの……? ウパぺん語しか話せないわけでしょ?」
「それは勿論、チャットを介して意味を教わりながら、ですわ」
いやいやいや、サラッと言うけどそれってさ……。
「ウパぺんとのチャットってつまり……スカオー語よね……?」
「そうですわね。日本語で質問すれば、スカオー語で返してくださるので、とても助かっておりますわ!」
こともなげに言われたわ。
お互いが日本語・スカオー語を完全に理解してるから、できる芸当ってことかぁ。
「LiEさん、凄すぎるでしょ……。ちなみにさっきの会話、何て話してたの?」
「『そうなんですか?』、『はい』、『凄い!』といったところですわね。ウパぺん語は同じ言葉でも、文脈によって意味が複数あるそうで、とても大変ですが……」
「ええっ!? 聞いてるだけで、頭が混乱しそう……」
それでも学び続けようとするLiEさんって、ほんと凄いわ。もうそれしか言えないわ。
そんなことを考えてたらLiEさんから、
「うふふふ、嘘ですわ♪」
ふいにそう言われて、アタシはさらに混乱した。
「……え、嘘!? どこから!?」
「『簡単な会話ならウパぺん語でできるようになりまして』からですわ」
「それって全部じゃん!?」
「ウパぺんに、『勘違いしてるみたいだから、そういう悪戯をしよう』とスカオー語で提案されましたので。騙して申し訳ございません……」
あの時のエリアチャット!?
慌ててウパぺんの方を見ると、どうやら本当らしくって、ウパぺんはおどけた仕草を見せた。
「LiEさんは冗談言わないイメージだったから、完全に騙されたわ……」
「わたくしも、こんなに簡単に信じていただけるとは思いませんでしたわ」
「ウペ」
「ああでも、ウパぺん語を習おうとしたのは、本当ですわ」
……待って。今とんでもなくサラリと言われたけど、何回目の爆弾発言なのそれ!?
「今から!? 習おうとしてたの!?」
「そうですわね」
「それも冗談よね!?」
「本当ですわ」
ああ……開いた口が塞がらないって、こういう時に使うんだなぁ。
「ただ残念なことに、ウパぺん語については未完成すぎて、言葉の法則もないそうで」
「んん? つまりウパぺんっていつも、適当って言うか、雰囲気で喋ってるってこと?」
「公式で意味が決まっているウパぺん語が『ウパペ ウパペペ ウパペペンッ』の他は、はい・いいえくらいしかないそうですので、そうなりますわね。
ちなみに、『I love you』とか『I like you』の意味だそうですわ」
まあ、ウパぺんってただのマスコットだし……それで足りてたんでしょうね。
「じゃあ最初のも、雰囲気で会話っぽく話してただけなのね?」
「うふふふ。それらしく見えたのでしたら、とても……嬉しいですわ……」
まあ別に、いいんだけどねアタシは。ウパぺん好きの数人が、残念な顔するのは想像できるけど。
「ていうかさ、一番やりたいのはスカオー語での会話でしょ? そんなにウパぺんと仲がいいんなら、ウパぺんに頼んで、NPCの1人くらいスカオー語で話せるようにできないのかしら?」
「なるほど……仰る通りですね。どうでしょうか? アルファベット1文字ずつの発音が分かるだけでも、助かりますわ」
2人で同時にウパぺんの顔を見ると……少しだけ考えてから、ウパぺんは胸をドンと叩く仕草を見せた。
「任せろって言いたそうね」
「本当……ですの? 楽しみにしておりますわ!」
このお願いが聞き入れられたようで数日後、スカオー語講座をしてくれるNPCが密かに追加されたのは……ここだけの話。




