夢を叶える、ナイト
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第5章ep.91 水の加護 までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
次の日の夕方……地属性選抜メンバーは、5人中4人も戦闘不能者を出しながら、アクアム・アクアスとの戦いを制した。
「いけない、アタシも早く向かわなきゃ!」
ユウさんの職業特性のお陰で、クエストクリアフラグが立ったのを確かめてから、アタシは急いで観戦エリアの出入口に向かう。
精神にかなりダメージを受けてるはずだから、急いでみんなを回復してあげないと……!
「ごめん、そこ通して!」
アタシは何とか人ごみをかき分けて、みんなのところへと走る。
幸いなことに、ようやく辿り着いた時にはもう、熾天使セラフィムさんによって全員のHPが満タンになってたので、少しだけ安心した。
「熾天使セラフィムさん、あんがとねー! 後はアタシが見てるわ」
「オッケぇ~♡ じゃあ慣れてるペンタスちゃんに、お任せするわぁ~♡」
というわけで、アタシは後を引き継ぐことに。
「そうですか。じゃあ……全員温かいところに移動した方がいいですよね? ……温泉とか?」
「そう願えますか?」
そっか、みんな寒そうだったから……確かにそれが一番よね。
ユウさんとたろ吉さんの会話を聞いて、アタシもそれに納得する。
ただ問題は……どう運ぶかなのよねぇ。まだLiEさんと有紗さんの2人、意識が戻ってないし。
……あ、そうだ!
「ねぇウパぺんたち、今の聞いてたでしょ? 手伝ってもらってもいい?」
前回手伝ってくれたから、今回もしてくれる気がして、アタシはすぐに声を掛ける。
幸いウパぺんたちに元々、その気があったみたいで、
「ウペ!」
「ウッペン!」
すぐに集まって、早速LiEさんと有紗さんを持ち上げてくれた。
「できれば俺も運んでほしいっス……」
「私も、まだ自分で歩くのはキツイかもぉ~」
「あ~、そりゃそうよね」
というかどう見ても、みんな自力で歩ける状態じゃないわ。だけど……
「LiEさんと有紗さんを運ぶのにウパぺん50匹中、半分くらい使ってるから……あと半分で3人を運ぶのは、さすがに無理よねぇ? 増援ってお願いできる?」
一応聞いてみたけど、ウパぺんに首を横に振られた。
「大丈夫です……先生が自力で移動します」
「ちょ、ちょっとタンマ! いくら何でも、まだ無理よ!」
それでも立ち上がろうとしてできず、その場で倒れそうになったたろ吉さんを、慌てて支える。
早く相互フレンドの人を探さなきゃって考えてたら……人ごみをかき分けて、救世主が来た。
「大丈夫、お父さんに任せなさい!」
「あ、Rockさん! たろ吉さんが……」
「意地張ってるんだろう? こういう時くらい、人を頼ってもいいのにねぇ」
さすがRockさん、何もかも分かってるって感じね。
そして彼は有無を言わせず……
「それ、どっこいしょ」
たろ吉さんをひょいと抱き上げた。
こ、こ、これは……お姫様抱っこ!!!
「な、なん……!?」
すぐに状況を把握したたろ吉さんは、あっという間に真っ赤になり、
「お、おろ、降ろしてください……!」
Rockさんの頭を、何度も平手で叩く。でもさすがに力が入らないみたいで、
「おおっ、今日のママの攻撃は、全然痛くないぞ!」
Rockさんはやたら、嬉しそうだった。
どう見ても「ペチペチ」って感じだから、じゃれ合ってるように見えるしね。
この間に(≧▽≦)さんと紅央さんもそれぞれ、ウパぺんたちに持ち上げられたので、アタシたちは一緒に歩き始めた。
「いや~、一度やってみたかったんだよねぇ、これ。やっとパパの夢が叶ったよ。ゲーム世界だと結構簡単にできるんだなぁ」
「簡単!? いてて……マジっすか?」
何故かやたら食いつく(≧▽≦)さん。
え、何? もしかしてお姫様抱っこって、男性の憧れか何かなの?
「ママが低身長設定で、パパが高身長設定だからかもだけど……現実世界より、明らかに軽くて楽だよ」
「いや、お互い性別1設定ですから! 恥ずかしいですよ、いくら何でも!」
今度は足をバタつかせて、抵抗を試みるたろ吉さんだけど……これも全然、効果なさそう。
「何? じゃあパパが性別2に変更すれば、恥ずかしくない?」
「どうしてそうなるんですか!!」
「だって同性に見えるのが嫌なら、それで解決するだろ?
……そうだ! 『先に保健室で待っています』とか言ってたし、2人だけでそっち行く?」
「そんな意味で言ってません!! 謹んでお断り申し上げます!!」
2人の掛け合いに、紅央さんは必死で笑いを堪えて、肩を震わせ始めた。
(≧▽≦)さんもニヤニヤしてるわね。
「たろ吉さん、もう諦めたら? それだけRockさんが心配してるってことじゃない」
さすがにそろそろ止めた方がいいと思って、アタシは声を掛けた。
「あと、身長差だけで言えば、(≧▽≦)さんがお姫様抱っこされてもいいけど……たろ吉さんはそれでいいの?」
「そ、それは……ああもう、分かりましたよ!」
ようやく観念したようで、たろ吉さんは自分の顔を両手で覆い隠して、
「早く運んでください……」
小さな声でそう呟く。
Rockさんは満足そうに、たろ吉さんを抱え直した。




