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サ終ゲームのリスタート side story ~新米花図鑑の人物分析結果録~  作者: 橋 みさと
第9章 アクアム・アクアスに勝つまでの記録
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約束する、ファイター

本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第5章ep.91 水の加護 までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。


未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。

風属性選抜チーム主催の音楽会から一夜明け、山岳地帯(夜)での合成素材集めをする日の朝。

珍しく何の予定もないんだけど、早く目が覚めたもんだから、アタシはイベントエリア「花畑」に向かうことにした。


ここって、朝の散歩にはもってこいだもんね!


入った瞬間、花の香りに包まれる。

ウパぺんたちが調整を続けてるから、最近は少し、自然の香りに近いものが増えてきた気がするわ。


香りを楽しみつつ、ゆっくりと花畑の中を歩いてたら……芝生エリアに人影があるのに気づいた。


「んん? あれって……(≧▽≦)さんよね?」


意外にも1人で、空手の演武っぽいことをやってた。しかもかなり、サマになってるじゃん!


でも気になったのは実はそこじゃなくて……その近くの木陰に身を隠して、(≧▽≦)さんの方を伺ってるクリフくんが、丸見えってことなんだけどね。


実は2人が同じ学校に通ってるって判明してからクリフくん、(≧▽≦)さんのことがすごく気になるみたいなんだけど……。

ど、どうしよこれ……気づかないふりしてあげた方がいいのかな……? めっちゃ「好きな人を目で追っちゃう乙女」みたいなことになってんだけど。


「お、ペンタスさんチーっス!」


そんな風に迷ってるうちに、(≧▽≦)さんに見つかって声を掛けられる。

さすがに無視するわけにもいかないから、アタシはクリフくんに気づかない風を装って、(≧▽≦)さんに近づいた。


「おはよ! 随分早起きね」

「実は照輝さんが毎朝トレーニングしてるって聞いて、真似することにしたっス! ただ俺がやりたいトレーニングは、狭い場所ではやりにくくて……それでこっちに来たっス!」


確かにあの演武を、適性者ギルドでやるのは危ないかも。


「やっぱり精神を鍛えたくて?」

「それだけじゃなくて、えっと……何て言ったらいいんスかね」


そう言って(≧▽≦)さんは考えてたけど、おもむろにポンと手を叩き、説明してくれた。


「例えば足を滑らせたら、転ぶっスよね?」

「そうね?」

「でもその時、バランス感覚いい人なら立て直せるし、反応速度が速い人なら何かを掴めるし、受け身の取り方を知ってる人なら怪我せず上手に転べるっス!

そういうのってみんな、考えてやってるわけじゃないっスよね?」


ってことは……


「つまり、咄嗟にうまく反応できるようになりたい、ってこと?」

「それっス!」


ははあ、なるほどね。


「言われてみればそれ、結構大事かも……。このゲームは1回武器使ったら、次に使えるのが4秒後だから、それまでに何をするのか即、決めなきゃいけないもんね」

「あ、ゲーム内もそうなんスけど……リアルに戻った時のこと考えてたっス」

「えっ、リアル?」


言いながら(≧▽≦)さんはちらっと、クリフくんがいる方に視線を向ける。するとクリフくんは目が合う前に、サッと姿を隠した。

……もしかして、クリフくんがそこにいるの、最初から気づいてたのかしら?


「俺、リアル世界では高校1年って話したっスよね?」

「ああ、そうだったわね!」

「実はすぐ後ろの席の女の子、すげー可愛いのに、いっつも暗い顔してて、休み時間になるたびに、すぐどっか行っちゃうんスよ。何かに怯えてるみたいで」


あ~それは(≧▽≦)さんの性格的に、ほっとけなさそう。


「だからちょっと話かけてみようと思ってたんスけど、上手くいかないままゲーム世界に来たから……チャンス来たら即、動けるようにしたいなって思ってたっス! それで……」


すると(≧▽≦)さんはふいに声をひそめて、アタシに予想外のことを言い出した。


「折角だから、ちょっと手伝ってくれないっスか?」

「えっ、手伝う?」


そしてそっと、クリフくんが隠れた木の方を指さす。

……待って? それってつまり……そういうこと!?


「クリフくんがその、クラスメイトの女の子なの!?」

「まだ確認できてないし、アバターも使用ボイスも性別1っスけど……色々考えた結果、十中八九当たってると思うっス。だから確かめようと思うっス!」


そう言われて今までのことを振り返ると、確かにクリフくんが(≧▽≦)さんのこと気にして、あんな乙女チックな覗き見する理由も納得だわ……。


多分クリフくんも、(≧▽≦)さんがクラスメイトって勘づいてるのね。


「そうね、そう言うことなら……アタシとしても、今のうちにクリフくんの絶対的な味方になってほしいかな。勿論、リアル世界に戻った後も」

「ペンタスさんはクリフくんのこと、何か知ってそうっスね?」

「言えないけど、ちょっとね。そこは本人から聞いてよ」

「OKっス!」


というわけで、こそこそ作戦会議をすることに。

ふんふん、なるほどね!


また(≧▽≦)さんがクリフくんがいる方向に視線を向けようとした途端、クリフくんが木陰に隠れたので、アタシたちはこの瞬間、作戦を決行した。


次に木陰から顔を出したクリフくんは、まっすぐクリフくんに近寄るアタシの姿は見えど、(≧▽≦)さんの姿が見えないことにビックリしてるはず……。


「おはよ!」

「お、おはよう……。あの、さっきまでそこに、(≧▽≦)さんがいませんでした……?」

「ああ、うん、それはね?」


次の瞬間、アタシのすぐ後ろに身を隠して距離を詰めてた(≧▽≦)さんは、死角から素早い動きで回り込み、


「やっと捕まえたっス!」


クリフくんの手を掴むと、心底嬉しそうな笑顔を見せた。


「うわぁあぁ! (≧▽≦)さん!?」

「顔が見えないと反応が分かりにくいから、直接言いたかったのに、なかなか捕まらなくて困ってたっス。やっとチャンス到来っスね!」


言いながら、素早く個人チャットに切り替え、何かを言う(≧▽≦)さん。クリフくんの表情が、驚きのそれに変わった。


「どどど、どうして私の本名を!?」


クリフくん、驚きすぎてチャット切り替えてないわね。一人称も私になってるし。

まあでもこれで、確定でしょ。


次に(≧▽≦)さんが、自分のことを指さして何か言う。多分今、本名名乗ったんだろうなって分かった。

クリフくんはもう、驚きすぎて声も出ないみたいね。


「ちょっと待ってよ……こんなことってある!?」

「そういうわけで俺、リアル世界に戻っても絶対、クリフくんの味方になるから、改めてよろしくっス!」


うわぁ、過去一いい笑顔きたわ。

迷いのない瞳でそんなこと言われたクリフくんは、


「よ、よろしく……」


わずかに頬を染めて、そう答えるのがやっとだった。

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