演奏会を開く、プリースト
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第5章ep.81 地の加護 までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
無事にガイアードを倒した、その夜。
「ああ、ペンタス丁度いいところに来たね。アンタにも招待状が来てるよ」
「招待状……ですか?」
花図鑑のグループ部屋に戻るや、向日葵先輩から声をかけられたアタシは、一体誰から何の招待かなと、考えを巡らせた。
「Ruyさん主催で、風属性選抜メンバー全員で音楽イベントするから、その招待状やて」
「音楽イベント! 確かに風属性選抜メンバーは、管楽器を模した武器所持者ばっかりだもんね」
しかも5人中3人が、休暇の時にやった演奏会の演者だから、期待大よね!
代表して向日葵先輩宛に届いたその招待状……という体裁で送信された個人チャットには、花図鑑の全員をイベントエリア「ステージ」に招待する旨が書かれてた。
「あ、これ開催するの今夜じゃん! しかも、もうすぐ開始!?」
「いっしょに……いこ~……」
ま、どうするかなんて考えるまでもないわね!
「勿論アタシも行くよっ!」
「やったポン!」
「にゃたしもいく(=`ω ´ )ノ」
「ミートゥー!!」
「よし、行くよお前たち!」
というわけで、急いでアタシたちはイベントエリア「ステージ」に向かう。招待されたのはもしかして、100人全員なんじゃないかってくらい、沢山の人がそこに集まってた。
ワールドチャット使えば一発なのに、わざわざ個人チャット使って招待するあたり、Ruyさんの人柄が出てるわねぇ……。
「って、何気にウパぺんもいるじゃん!」
「ここだけの話、折角やからゴールデンウパぺんにも伝えておいたんや」
他の人に聞こえないよう、菖蒲先輩が小声で教えてくれた。どうりで……。
あ、時間になったから、舞台袖から風属性選抜メンバーたちが出てきたわ!
みんなが拍手で迎えると、こんなに集まると思ってなかったのか、みんなちょっと驚いてた。
「よ~っす! 集まってくれて、みんなありがとなんだぞっ! 練習時間少なかったけど頑張るから、最後まで楽しむんだぞっ!」
代表してRuyさんがそう挨拶すると、より大きな拍手が贈られた。各メンバーはそれぞれ、用意されていた椅子に座る。
Ruyさんの目での合図で、早速1曲目の演奏が開始された。
んん? このイントロはもしかして……。
パーパラッパーーー、パーラーラーーー♪ パーパラッパーーー、パッパラッパーーー♪
「あ、やっぱり!」
おっと、思わず声が出ちゃったわ。
でもそれは、アタシだけじゃなかったみたいで……。
「聞くだけで、アニメの名シーンが思い浮かぶな!」
「俺は野球してたから、高校野球のブラスバンドかな~」
他にも小声で、そんな話をしてる人がいっぱいいた。軽快な曲だから、オープニングにもばっちりね!
実際1曲目が終わる頃には、かなり会場が盛り上がってた。
「ここからは、1人1曲ずつ演奏するぞっ!」
「うん、ぼく頑張るよ」
Ruyさんがそう説明すると、まずDylicaさんが立ち上がり、観客に手を振ってから演奏を始める……。
パッパーパラパーラ、パーララッパーー♪ パーパパララパーララーー♪
あ、これも知ってる! えーと、曲名は分かんないけど、あれね!
「ジブリの!」
「ハトのシーンのやつか!」
そうそう、それ!
Dylicaさんのソロは初めて聞くけど、やっぱ演者やってただけあって上手だわぁ。
途中からそのシーンを彷彿とさせるように、ウパぺん数匹がステージに上がり、Dylicaさんの周囲を羽を広げてトテトテと歩き回る。
さらにそこにRuyさんの、Dylicaさんをより引き立てるような演奏が加わったことで、広くて青い空を感じられるように!
曲が終わるとさらにリスペクトするように、Dylicaさんはウパぺんにお菓子をあげて、席に戻った。
「えっ、もうお父さんの出番かい? 魔獣と戦うより緊張するなぁ」
入れ替わりにRockさんが立ち上がり、照れくさそうに挨拶。
そう言えば、Rockさんの演奏は初めて聞くけど……どんな曲を選んだのかしら?
パーーパラパラパラパーー、パラパラパラパーー、パラパラパラプパーーー♪
わぁ……アタシは聞いたことないけど、何かすごくいいムードの曲。BARで流れてそう! 行ったことないけど。
「かつての金曜夜のやつ!」
「やべぇ、映画が見たくなってきた!」
「渋いな~、でもRockさんらしいや」
確かにこれ、Rockさんのイメージに合ってる曲ね!
よく聞くと、さり気なくRuyさんが色んな楽器に持ち替えて、Rockさんの演奏をより盛り上げてた。器用ねぇ……。
演奏が終わると、Rockさんはほっとした表情になって、ラガマフィンさんと交代した。
彼女の演奏も、初めてね。
「えっと……すまん。ソロ曲もあるのすっっっかり忘れてて、練習してなかった。でも練習なしでもこれはできると思うから、やるぞー」
何ともラガマフィンさんらしい挨拶。選曲も彼女らしさ全開だった。
パラプーパッパッ、パラプーパッパッ、パラプーパッピーパッポーパッパッ♪
「まさかの猫曲www」
「滅茶苦茶らしいけどさwww」
でも彼女の演奏自体はかなり上手いし、コミカルな曲だから予想以上に盛り上がる。Ruyさんがすぐに伴奏に入ったことで、より猫がじゃれ合う感じが出てた。
ラガマフィンさんも満足そうに演奏を終え、鷹影さんと交代。
「それでは僭越ながら、演奏させていただきます」
すると鷹影さんは意外にも、懐から別の横笛を取り出し……ステージ上で胡坐をかいた。
え、和楽器!?
ポープーパルポーー、ポピペプーパルポーー、ポピパプーパルパーーポピパペーポー♪
これはこれでうまっ! 和風の音楽は今までなかったから、何だか新鮮ね!
「おー、戦略ゲームの!」
「鷹影さん歴史系好きそうだもんな。毛利家の曲だっけ?」
アタシは初めて聞くだから何か分かんないけど、そんなことを小声で言ってる人がいた。
Ruyさんも弦楽器に持ち替えて、鷹影さんの演奏をフォロー。より壮大な曲になって、戦国の世らしさを感じるわね!
……ってかRuyさんさっきから、全員のフォローしてるの凄いわ。
鷹影さんの演奏が終わって椅子に戻ると、Ruyさんが立ち上がった。
「次で最後の曲だぞっ! みんなが徐々に加わって演奏するから、良かったらみんなも参加してくれよなっ!」
ん? 参加型?
パラララッ♪ パラララッ♪ パララパーラーラーパーラーーー♪
パパララーパーラーパラ-ー、パララーラーパーラーラーーー♪
「ワーオ! 有名なアメリカの曲でース!」
アタシも聞いたことがある明るい曲に、百合先輩がバレないよう小声で反応した。
同じフレーズのメロディが繰り返されるたび、風属性選抜メンバー1人ずつが演奏に加わり、より明るい演奏になっていく。
「もしかしてプリーストだから、この曲?」
「んー、それだけじゃないかも」
ジャズの定番だけど、その歌詞の意味を知ってる人は、複雑な表情をしてた。
でも今は、苦しみも悲しみも、この曲で吹き飛ばさないとね!
楽器を模した武器を持ってる観客が、徐々に演奏に加わり始めた。
アタシは楽器が演奏できないから、手拍子で参加する。1人、また1人とその輪は広がっていき、最後には会場全体が一体となって、演奏が終わった。
惜しみない拍手が贈られ、それがだんだんと……
「アンコール! アンコール!」
そんな声に変わった。
さすがにそこまで用意してなかったみたいで、顔を見合わせる風属性選抜メンバーたち。
「そ……そんなにリクエストするな~。じゃあ予定になかったけど、私が退場曲を演奏するから、それで許してくれよなっ!」
Ruyさんはそう言って、静かに1人演奏を始める……。
パーラーラーラーパーラーラーー、パーラーラーラーパーラーラーー♪
パーラーラーラーパーラーラーラー、パーーラーーラーー♪
あ、この曲……ディズニーの……。
彼女の、私たちの願いは、星に届くだろうか。
ううん、絶対に届けて見せる。そんな風に、決意を新たにする夜となった。




