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秘密の特訓をする、レンジャー

本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第5章ep.81 地の加護 までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。


未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。

「えっ、ママ本気!?」

「ちょ、パパ声が大きいですよ……? 別に、おかしなことは言っていません」


翌朝、いつものように見回りしてたアタシは、適性者ギルドに戻ったところでその会話を耳にした。

えっ、何? 揉め事?


でも言い争ってる2人の姿を見て……アタシはちょっと安心した。


Rockさんとたろ吉さんは、リアル世界で夫婦だって聞いてるから、夫婦喧嘩くらいなら別に普通にありそうだもんね。


「どうしたの、朝からふ……」


いけない、夫婦だってことは公表してないんだっけ。


「……っと、喧嘩?」


アタシは「夫婦喧嘩」って言いそうになったのをこらえ、そう言いなおした。


「喧嘩じゃありませんよ。ただ、パパが普段やっている練習方法を、先生もやりたいと言っただけです」

「練習……って何の?」

「それは……」

「ほら、ママは三段渦紋亀戦で、後列攻撃受ける係して気絶しちゃったことがあっ……げふっ!」


後半部分は、たろ吉さんの右ストレートがRockさんの鳩尾に決まったことで言葉になってなかったけど……まあ経緯は分かったわ。


「まあ何ですか。つまり今後の魔獣戦に備えて、耐久訓練したいって話をしたんですよ」

「なるほどねぇ。でも……」


実際どんな訓練をしてるのか、アタシは全部を知ってるわけじゃないけど……照輝さんがやってる全滅訓練が公認なわけだから……。


ちらっとRockさんの方を見ると、困ったように頭をかいて考えてた。


きっと他のナイトさんたちも、軽々しく言えないくらい無茶な訓練やってるんだろなって想像できちゃって、アタシは顔を引きつらせる。

でもそれを知らないたろ吉さんには当然、伝わらないから……。


「というわけで、早く普段の訓練方法を教えてください」


そう言って、Rockさんに詰め寄った。


「あーええと…………内緒にしてくれるかい?」

「そんなに知られるとまずいことをしているんですか?」

「いやまあ、パパはまずくないけど、特に性別2のナイトさんたちが……ね?」


性別2……? どういう意味かしら?

同じことをたろ吉さんも思ったようで、眉をひそめてた。


「よく分かりませんが、まあいいでしょう」

「助かるよ。じゃあ、職業訓練所に行こうか」


話がまとまったところで2人が歩き出したので、アタシは慌てて声を掛けた。


「ちなみにそれ、アタシも観戦エリアから見学していい? 待機してた方がいい気がするんだけど」

「待機?」


勿論たろ吉さんには何のことか分かんないだろうけど、Rockさんはそれだけで、アタシが言いたいことを察してくれた。


「ああーそうだね、その方がいいかな。お願いできるかい? 勿論やってる内容は、みんなに内緒で」

「オッケー!」


というわけでアタシも2人についていき、近くのNPCから「職業訓練をする」ってクエストを受託した。

アタシは先に観戦エリアを作成し、2人の戦闘エリア入室を待つ。


「えっと……音声はONになってるわね、よし」


程なくして、2人が戦闘エリアに入った。


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「それで、この後どうするんです?」

「最初の1手だけ動いて、後は何もしなくていいよ」

「はっ?」

「パパは前に行ってくるよ! ママは……後ろでいいんじゃないかい?」

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Rockさんはそう答えるや否や、敵1匹にデバフを付与する魔導具で前列移動する。

それを待っていたように、練習用自動人形4体が一斉に動き出した。


「あ、味方全体にガッツ5回付与を確認」


思わず解説するアタシ。

たろ吉さんは頭に疑問符を山ほど浮かべつつも、普段使ってる攻撃バフ付与の弓を使い、自傷ダメージの痛みで小さくうめいた。


えっと……練習用自動人形が攻撃しそうなんだけど……。


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「パパ……物凄く嫌な予感がするんですが……」

「うん、今のうちに言っておくね。許してちょんまげ」

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その瞬間、詠唱を終えた練習用自動人形が一斉に攻撃を始め、2人のHPをどんどん削っていった。


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「ちょ、痛っ! 痛いですよ!!」

「そりゃそうだよー、耐久訓練なんだから」

「被ダメージ軽減バフも、かけないんですか!?」

「それやったら、訓練にならないからねぇ……。

 大丈夫だよ、HPあるうちはまだ、ボスの単体攻撃より痛くないから! 後列なら痛みも半減だし!」

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今、何気に「まだ」って言ったわよね……?

たろ吉さんは当然、HP回復武器を編成してなかったから、HPが1に近づくにつれ表情を強張らせた。


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「ひっ! ぐうっ!」

「これこれ。ガッツ消費するようになってからが本番なんだよー」

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そしてついにHP1になり……ガッツを消費しつつ、ただひたすら練習用自動人形の攻撃を受ける。

あ、そっか。この練習用自動人形、定期的にガッツを5回付与するから、自傷でもしない限り戦闘不能にならないんだっけ……。


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「何でパパは前列にいて、涼しい顔してるんですか!?」

「もう大分慣れたからねぇ」

「はあ!? というかこれ、いつまでやるんですか!? 痛すぎますよ!!」

「パパたちは毎日30分してるけど……ママは初めてだし、10分くらいからにしとく?」

「馬鹿ですか、ドMですか!?」

「そう言われるって分かってるから、性別2の子たちがみんなに知られるの、嫌がるんだよー」

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たろ吉さんはそれを聞き、口をパクパクさせていたけど……結局何も言わず、武器の詠唱を開始した。


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「えっ、ママ?」

「この痛みに耐えながら動けないようでは、本番では何もできないってことですよね……?」

「そうだけど、ちょっとママ落ち着いて!」

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それに構わず、普段のボス戦を想定した立ち回りを始めたたろ吉さんを見て、Rockさんは慌て始める。

それもそのはずよね、たろ吉さんは自傷武器を構わず使ってるんだもん!


そしてついに……


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「きゃうっ!」

「あ、ママ!」

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練習用自動人形がガッツを付与しなおす前に自傷武器を使ってしまい、戦闘不能になった。

そしてそのまま気絶する。


こうなるともう続けられないから、Rockさんはリタイアボタンで戦闘を強制終了させ、たろ吉さんと共に戦闘エリアから出てきた。

アタシは慌てて観戦エリアを解除し、たろ吉さんの回復を始める。


「ガッツ受け開始から1分か……初めてにしてはママ、頑張ったね。次はもっと頑張れるよきっと」

「Rockさん、鬼なの……?」


これにはさすがに、アタシもドン引きする。


「勿論、ママが希望しない限りやらないよー」


手をパタパタさせつつそう言う姿を見て、やっぱりRockさんもそれなりに、訓練に関しては色んな意味でヤバい人だと思った。


「ん……」

「あ、起きた? お疲れ!」


たろ吉さんはアタシの顔を見てすぐ、自分の状況を把握したみたい。


「……有難う御座いました。さすがに最後の戦闘不能はきつかったです。今回のところは、このくらいにしておきます」

「歩けるかい? パパが運んであげようか?」

「いりません!」


そう言いながら、ふらつく足でなんとか立ち上がったたろ吉さんを、Rockさんは苦笑いしつつ見守る。

ん~強がれるなら、大丈夫かなっ!


「それにしてもさっきのママの悲鳴、可愛かった……あたっ!」


その余計な一言でたろ吉さんの顔は真っ赤になり、案の定Rockさんの脛を、思い切り蹴飛ばした。

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