気を利かせる、レンジャー
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第5章ep.72 風の加護 までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
「あ、ペンタスさんたちも来た。こっちこっちーっ☆」
イベントエリア「大晩餐会」の指定された一角に向かうと、そこにはもう°˖✧はぴ✧˖°さんと向日葵先輩、照輝さんがいた。
「わあ、すっごい綺麗じゃん! このお花はもしかして、花畑にあったやつ? いい香り~!」
「そうだよーっ☆ みんなも準備出来たかなぁ~っ?」
前回以上に色んな小物やお花で飾られた円卓に、アタシは自分が選んだ料理……マルゲリータピザを置く。食器ももう揃ってるから、用意は万全みたい。
ってか、円卓ってところにも配慮を感じるわ。この人数だと、その方が料理取りやすいもんね!
「わっ、これってもしかして、°˖✧はぴ✧˖°さんが用意してくれたの? お皿や飾りつけはうっかりしてたよ~! ありがとう」
後から来ていたMiyabiさんもそれに気づき、持ってきた料理を並べつつお礼を述べた。
「いいのいいのぉ~☆ Miyabiさんすごく忙しそうだったから、私が勝手にしただけだよ~っ♪ 途中から向日葵さんも手伝ってくれて、楽しかったしっ!」
うーん、アタシもそれはうっかりしてたわ。向日葵先輩はそれに気づいて、手伝いに回ったのかしら?
「お、くろんさんとジャスティアさんも来たね! ジャスティアさんは照輝さんの隣にどうぞ~っ♪」
「どーも」
「あ……じゃあ私は……ティアの隣にするわ……」
そうやってさり気なく、性別1の2人が並ぶように配慮するあたり、ほんと気配り上手よねぇ°˖✧はぴ✧˖°さんは……。
その後続々と人が集まり、あっという間にテーブルは料理や飲み物でいっぱいになった。
貸切じゃないから、参加してない人が興味津々って感じで見てるわね。
「全員揃ったよね? 各自好きなドリンクも持ってきた?」
「はぁ~い☆」
「じゃあ乾杯しよっか! お疲れ様!」
というわけで、Miyabiさんの音頭で乾杯がなされ、パーティは開始した。
「あれ? ここにもドリンクがある。何で?」
Miyabiさんの言う通り、円卓の一角に、中身が同じドリンクがまとめて置かれてた。人数分あるみたいだけど……。
「そいつは俺様の持ち寄り品だ!」
照輝さんの返事に、みんな一瞬固まる。
「ということは……これって……」
「見て分からないか? バナナプロテインだ」
くろんさんの質問に、照輝さんは自信満々の表情で返事した。
やっぱそうだよね!!
「予想を裏切らないよねꉂ(•ㅅ•*)ケラケラ」
「くぅ~、プロテインが五臓六腑に染み渡るぜ!」
「あ、でもこれ、ホントに美味しいよっ♪ 粉っぽくないし、細かい氷が入ってるから、普通のシェイクみたい☆」
照輝さんを気遣ってか、率先して°˖✧はぴ✧˖°さんはそれを飲み、感想を述べる。それを聞いた他の人たちも、恐る恐る口を付けた。
「ほんとだ、美味しいね~!」
「だろっ!? 俺様のイチオシだぜっ」
「プロテインドリンクって、甘いイメージしかねぇんだけど……俺は甘いもの駄目だぞ」
「む、そういうことならこっちの、コーヒープロテインがオススメだぜっ!」
そう言って、ただ1人バナナプロテインに口を付けようとしなかったジャスティアさんに、照輝さんは別のものを勧める。
「ゲテモノじゃねぇだろうな? ……お、確かにこいつはいける。普通のブラックコーヒーみてぇだ」
「そうだろそうだろ! お前とは筋肉の相性が良いらしい!」
「そんな相性はねぇ! けど、現実世界での身体の鍛え方くらいなら、聞いてもいいぜ」
あれっ、意外にも性別1の2人でいい感じになってるじゃん!
……照輝さんが絶対、くろんさんに興味なさそうだからかしらね……。
「唐揚げって定番だしあんまりハズレないけど、これはその中でも特に美味しいねヾ(*•ᆺ•)ノ」
「でしょ~っ? 私のオススメだよっ☆」
「やっぱり°˖✧はぴ✧˖°さんだったんだ! レモンとマヨネーズと毛沢東スパイスが添えてあるから、そんな気はしたけど!」
ホントだ。普通添えるならどれか1つだと思うけど、好みが人それぞれだからってことよね。
「どれどれ……」
アタシは自分の取り皿に唐揚げを1つ乗せて、まずそのまま1口食べる。
「うん! 確かにこれ美味しいわ! すっごくジューシー!」
続けてレモンを絞って残りを食べた。
きっと現実世界でも、°˖✧はぴ✧˖°さんは気配り凄いんだろうなぁ……。
こんな感じで、みんなしばらく食事を楽しんでたんだけど、
「と・こ・ろ・で・さ! やっぱり2人は、付き合ってるよねっ!」
ついにMiyabiさんが、そう切り出した。多分これを聞きたくて、このパーティ企画したわね!
「え、えええっ……と……その……」
「何で女って、そんな話題が好きなんだよ……別にいいだろ?」
真っ赤になって言葉に詰まるくろんさんを横目に、ジャスティアさんが面倒くさそうに肯定すると、Miyabiさんと°˖✧はぴ✧˖°さんは手を取り合って喜んだ。
「いやーん、やっぱりぃぃ! 尊いよ~!」
「おめでとニャンっ♪」
「えと……ありがとう……。でも私、その……」
やや不満げに、ちらっとジャスティアさんの方を見るくろんさん。
もしかして、あのことかな?
「何かこいつに言いたいことがあるの?(「 •ㅅ•)「」
「上手く言えないけど……ちょっとモヤモヤすることがあって……」
「は? 俺何かしたか?」
「まあまあ。まずは聞いてみようよーっ♪」
°˖✧はぴ✧˖°さんに促されて、くろんさんは言葉を続けた。
「昨日、合成素材集めの時に……ティアがその……後ろからユウさんの手を取って……装備編成を代わりにしてたって、Dylica君に聞いて……」
「ああ、あれか。……え? それ駄目か? あいつ男じゃね!?」
「分からないじゃない……! 中性的な感じだし……」
やっぱりね。そんな気がしたもん。
「あーうん、それは微妙かもꉂ(•ㅅ•*)ケラケラ」
「あのくろんちゃんが、嫉妬するようになったんだ! 成長してるー!」
可愛らしくジャスティアさんに不満をぶつけるくろんさんを、微笑ましく見てた性別2メンバーだけど……
「まあそこは、お互い様なんじゃないか? くろんさんは蛇が怖くて、サマーウパぺんを強く抱きしめてたしなっ!」
ここで思わぬところから、火種が投げ込まれた。
ちょっ、照輝さんっ!?
「はあ? だから俺、あの時大丈夫かって聞いたのに」
予想通り、今度はジャスティアさんが不満げな顔になった。
「あ、あれは……心地よさそうだったから……落ち着くかなって思って……」
「言いてぇのはそうじゃなくて、何でそこでウパぺんに頼るんだよ?」
「こっちはこっちで嫉妬してるꉂ(•ㅅ•*)ケラケラ」
「はいはいストーーップ! パイを顔に投げつけられたい?」
チョコケーキさんは笑ってるけど、ちょっと雰囲気が悪くなりそうだったので、すかさず止めに入るMiyabiさん。
「そうそう、一緒にこれでも食べて、仲直りしようよーっ☆」
それに合わせて、°˖✧はぴ✧˖°さんは円卓のターンテーブルを使い、2人にたこ焼きを勧めた。
その気の利かせ具合は完璧なんだけど……こ、これってまさか……!
勧められるままに、くろんさんはそのたこ焼きを1つ爪楊枝で取り、口に入れる。
数秒後に一瞬動きが止まったから、もしかして当たりを引いたのかと思ったけど……
「……ふふっ、すごく美味しいわ」
くろんさんは笑みをこぼした。しかも意外なことに、それだけでは終わらず、
「ティアにも……食べさせてあげるわ。仲直りしましょう……?」
そう言いながら、別のたこ焼きを爪楊枝に刺し、ジャスティアさんに差し出す!
まさかの「あーん」ですか!?
「きゃー! くろんちゃんやるようになったわね!」
「ほらティア、口を開けて……?」
「お、おう……」
若干戸惑いつつも、素直に口を開けたところに、くろんさんはたこ焼きを突っ込む。
「…………? んぐっ!」
2回ほど租借したところで一旦動きを止めたジャスティアさんは、急に苦悶の表情で口を押えた。
それを見たくろんさんは、気分がすっきりしたのか笑い出す。
「何!? やっぱりロシアンたこ焼きだったの!?」
言いながら、そんなわけないと自分でも思った。
もし食べたのが当たりなら、くろんさんが無事なわけないし、ハズレだったらくろんさんだってロシアンたこ焼きだと気づかないもんね。
「違うわ。でも……ある意味全部当たりよ」
意味が分からず、恐る恐るアタシも1つ食べてみる。
……んん? これたこ焼きの味じゃないわね?
「もしかしてこれ、鈴カステラ? チョコソースかけてる?」
「ええっ、そうなのぉ~っ!? ……ホントだぁ☆ この鰹節っぽいの、削ったチョコレートだねっ♪ 緑色のも青のりじゃなくて、もしかしてピスタチオ!? 気づかずに勧めちゃったぁ♪」
「こいつは面白いな! ここまで外見がそっくりだと、俺様も騙されるぜ!」
しかも中身はたこの替わりに、キャラメルソースになってる。こりゃほんとに美味しいけど、かなり甘いわ。
周りの関係ない人たちもその会話が耳に入ったようで、チラ見してる人多数。
ジャスティアさんは自分で用意してたブラックコーヒーを飲み干すだけでは足りず、コーヒープロテインも半分ほど飲んで、ようやく落ち着きを取り戻した。
「つか誰だよ、こんなもん用意したの!!」
「はいはーい!!ヾ(*•ᆺ•)ノ」
「やっぱお前かよ!!!」
「ごめんねめんね~!!ε≡≡ヾ(*•ㅅ•)ノシュタタタタ」
半ギレのジャスティアさんから、距離を取るチョコケーキさん。
とはいえ、甘いと知ってて食べさせたのはくろんさんなので、それ以上怒ることはなく……ただし何かを思いついたようで、ジャスティアさんは急に、黒い笑みを浮かべた。
「いいぜくろん、仲直りしようぜ」




