初心を忘れない、ナイト
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第5章ep.72 風の加護 までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
次の日の朝……適性者ギルドの見回りをしていたアタシは、珍しい組み合わせの2人が職業訓練所で瞑想してるのを見つけた。
1人は照輝さん。もう1人は……(≧▽≦)さん?
照輝さんはまあ、普段から行動原理が謎だから、瞑想くらいしそうだけど、まさか(≧▽≦)さんまで一緒とはねぇ。
しかも、いつも適性者ギルドにいる三毛猫が照輝さんの頭に乗って、顔の前で尻尾を揺らしてるんだけど、集中力がすっごく高いみたいで、照輝さんは全く気にしてないわ。凄っ!
「あ、おはよーっス!」
その時、気配でアタシの存在に気づいたのか、(≧▽≦)さんが瞑想をやめて挨拶してくれた。
「おはよっ! 邪魔したかしら?」
「いや、丁度終わる頃だぜ!」
言いながら、頭上の三毛猫を優しく床に降ろす照輝さん。まだ構ってほしいのか、三毛猫がその場に寝転がると、お腹を撫でてあげてた。
もしかして照輝さん、結構猫好きだったのかしら? そう言えば黒の執事服だから目立たないけど、いつも黒猫型のリュック背負ってるもんね。
「それで、また精神を鍛えてたわけ?」
「ああ、良いトレーニングだったぜ!」
「すごいっスよね! 俺、今までそんな発想がなかったから、尊敬するっス!」
よく聞いてみると、たまたま通りががった(≧▽≦)さんが、照輝さんのトレーニング姿に感動して、飛び入り参加したみたい。
「折角だから、俺様とマッスルフレンドにならないか?」
「OKっス!」
実はアークタルラ戦以降、照輝さんのファンが増えてるらしいんだけど、こうやって今後も増えるのかしら……?
「それにしても照輝の兄貴って、実は努力家なんスねぇ」
「前作の頃、こんな理念を掲げたギルドに所属してたからなっ!」
そう言って彼は、言葉をそらんじた。
「努力して後悔した人を見たことがない。
練習して下手になる人もいない。
勉強して馬鹿になる人もいない。
何かをして変わった人はいても、何もしないで変わった人はいない」
なるほど、だからいつもトレーニングしてるんだ……後悔しないために。
「初心を忘れないのは大事だからな。俺様は毎日、この言葉を思い出してるぜ」
「確かにいい理念っスね! 俺も真似するっス!」
照輝さんの新人時代かぁ……。まあそりゃ、誰だって新人時代があるんだけど、何かこう……失礼かもしんないけど……
「照輝さんっていつも、直感というか自己流でナイトやってる気がしてたわ。ちゃんと、誰かの指導を受けたことがあったのね」
アタシが真っ先に思ったのは、それだった。
「ははは、確かに筋肉を鍛えるナイトは少ないようだなっ! 実は俺様、比較的遅い時期にスカオーをやり始めてな……」
おっ、これはもしかして、照輝さんの昔の話が聞けるチャンス?
(≧▽≦)さんも興味津々って感じで、続く言葉を待った。
「レベルも低くて、ようやくナイトとしての立ち回りを覚えたくらいの頃、装備集めのために森林地帯(昼)で野良戦闘を繰り返してた。そしたら、たまたま共闘した人に『色々勉強になるから』と、ナイト養成所ってギルドを紹介されたぜ!
今思えばきっと、滅茶苦茶な立ち回りで不安にさせたんだろうなっ!」
ああ……何か分かる気がする。きっとその頃から、脳筋プレイしてたんだろうな……。
「そんなわけで早速、そのナイト養成所に加入したわけだ。
いやー凄いところだったぜ、常にギルド人数上限の100名くらいが所属してたからな。たまに入りきれなくて、空席待ちしてたらしいぜっ!」
「ええっ、それってナイトの大半が、そこに集まってるレベルじゃない!?」
スカオーのナイト人口から考えたら、信じられない光景ね。
「俺様も最初は驚いたぜ。何せナイトは、行き詰まっても相談相手にすら困る職業だからなっ!
しかも『ナイトの数だけ守り方もある』って考えのギルドマスターだから、俺様の戦い方も否定せずに、基礎からきっちり教えてくれたんだ」
「そりゃいいっスね! 俺もファイターでそんなギルドあったら、行ってみたかったッス」
ほんとよね。
「その後も『先輩が可能な限り後輩を見る』って方針だったから、俺様がギルドチャットで質問したことに、答えられる先輩がすぐ回答して、もし補足や訂正があればギルマスがフォローしてくれてたぜ。ほんと安心して、何でも質問できたな。
当然他の人のチャットログもあるから、それを読むだけで勉強になったし」
うーん、まさにナイトのための専門学校って感じかぁ……。
「そしたら割とすぐ、魔獣戦に耐えられるようになってな。それですっかりナイトにハマって、今に至るぜっ!」
「すごいっス! 加入延べ人数、どのくらいッスかね……?」
「う~ん、確かサ終直前に卒業証書貰った時、No.403までいたような気がするな……。ちなみに俺様は、加入No.325だぜっ!」
当然403人全員が一流のナイトになれたわけじゃなくて、ナイトの道を途中で諦めた人も多いだろうから……そのギルドがなかったらほんと、ナイト人口はもっともっと少なかったのかもなぁ。
「そのギルドマスターさん、会ってみたかったなぁ」
「ん? もう会ってるんじゃないか?」
「へっ?」
照輝さんの予想外の答えに、アタシは戸惑う。
「それってつまり、the 2ndにそのギルドマスターが来てるってこと?」
「ああ、言ってなかったか? 俺様も真珠さんから学んだ1人だぜっ!」
「…………うえええぇぇぇぇぇぇっっ!?」
「マジっスか!!」
さ、さすがナイトたちの母……照輝さんに指導って、凄く大変そうなのに。
「ってか、それってつまり、紅央さんは照輝さんの後輩なの!?」
「いや、俺様の方が加入はかなり後だ! 確か紅央さんは、No.150くらいだぜ」
ああ~、照輝さんは質問にしろ実践にしろ、臆せずガンガンやるタイプっぽいから、きっと壁にぶつかっては、ぶち壊してきたんだろうなぁ。
イマイチ自信がなくて、自己主張しそうにない紅央さんより、かなり早く成長したのかも。
「周りがどう思ってるかは知らんが、俺様自身はヘイト上書き戦術できんので、まだ一流のナイトとは思ってないしなっ!
おっと、もうこんな時間か。久々に仕上げで、全滅訓練するかっ!」
「ええっ、また!?」
「何スかそれ!? 俺もお供するっス!」
というわけでアタシはその後、呆れつつも救護室に待機して、全滅体験してきた2人を癒すことになった。




