奔走する、花図鑑たち
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第5章ep.72 風の加護 までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
休暇が終わり、珍しく見回りがいらない朝を迎えたアタシは、習慣でいつもの時間に目覚めたもんだから、優雅にイベントエリア「花畑」でお茶してたんだけど……
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向日葵:みんな 緊急集会やっぞ!
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突然、花図鑑部屋グループチャットに入ったその連絡を見て、驚いた。
さすがに昨日はみんなで夜更かししてるから、朝から問題起こす人はいないだろうってことで、見回りなしになってたんだけど……何かあったのかしら?
食べかけだったドーナツを急いで口に入れ、紅茶を飲み干してから、アタシは花図鑑部屋に向かった。
「一体どないしたん?」
「各グループマスターは、話し合いしてたはずにゃのに?ヾ(⌒(_*Φ ﻌ Φ*)_」
「ですネー!」
菖蒲先輩、菊先輩、百合先輩も呼び出された口みたいね。
「うぅ……ねみゅいよぉ……」
藤先輩はまだ寝てたのか、パジャマ姿のまま、目をこすりつつ花図鑑部屋に来る。
「とりあえず、全員集まったポン!」
梅先輩がそう報告したところで、向日葵先輩は口を開いた。
「その各グループマスターの話し合いで、今後の方針がさっき決まったんだけど……」
な、何かしら……。
みんな真剣な表情で、耳を傾ける。
「今日明日、火山地帯(夜)で合成素材集めをする編成パーティが……火属性選抜メンバー抜きの95名で、各3名または4名で1つのパーティ、合計24組作ることになったんだよ!」
「なんでやねん!」
さすが菖蒲先輩、ツッコミが早いわ。
……って、そうじゃなくて!
詳しく説明を聞くと、戦略的に納得の話だからそれはいいんだけど、実のところ今までと同じつもりで、夜のうちに各5名20組パーティをもう決めてたのよね。
つまり……
「ちょ、ちょっとタンマ! それって、今からパーティ編成やり直しってこと!?」
「にゃんですと!?Σ(艸ωΦ)」
まって待ってマッテ……適性者ギルドへの集合時間って、あと何分!?
「もう集合時間、20分前でース!」
「いや、一応集まった後、みんなに作戦の説明をする時間があるから、それが終わるまでに夜露死苦!」
「ちょっと待ちーな! それでもあと、30分もないやん!」
「ふえぇ……たいへぇ~ん……」
向日葵先輩が緊急集会って言った意味が、やっと分かった。こんなの今まで通り1人で決めてたら、時間に間に合わないわ!
さすがに藤先輩も目が覚めたらしくて、一瞬で着替えを終わらせた。
「全員で間に合わすよ! たらたらしてんじゃないよ!」
「がが、頑張るポン!」
というわけで、早速1から編成し直す作業にかかった。
「火属性選抜メンバー抜きの95名で、合計24組ってことは……戦力バランス考えたら、23組は属性選抜メンバーが1人ずつやね」
「じゃあ3人になる組を、属性選抜メンバー2人にしてぇ……ユウさんもそこにするぅ~?」
「オーケーですヨー!」
「そうにゃると、風属性選抜メンバーが入る5組はその分、その他のメンバー選びに気を遣わないといけないにゃ|ωΦ)ฅ」
「逆に水属性選抜メンバーが入るところは、多少その他のメンバーに不安があってもいいポン!」
ひいい、考えることばっかりじゃん!
そしてアタシは、ふいにそれに気づいた。気づいてしまった。
「ねえ……もしかして選抜メンバーがアイツだけのパーティも作るってこと? それって大丈夫なの……?」
全員にそれだけで意味が伝わり、一斉にピタリと動きが止まった。
「ジャスティアさん以外、選抜外メンバーのパーティ……ワーオ!」
「彼、水属性にゃから、選抜外メンバーを弱目にしすぎると……(ΦωΦ)」
「けんか……しそうだよぉ~……」
「あかん、多少丸くなったとはいえ、いきなりは不安すぎるわ」
だよね!!
「ユウさんと属性選抜メンバー2人にする組に、ジャスティアさん入れるのはどうポン!?」
「梅、やるやんけ!」
「じゃああと1人を選ぶの、ペンタス夜露死苦!」
「……え、アタシ!?」
「ペンタスが一番、ジャスティアさんのこと理解してるじゃんよ!」
とんでもない大役を、仰せつかった気がするんだけど!!
とはいえ、それ以上に面倒な作業を先輩たちがやってるだけに、断れる感じじゃないし、
「そろそろ集合時間でース!」
時間もないし!!
「アイツと組んで喧嘩にならないような選抜メンバー……」
まずくろんさんは、火属性選抜メンバーだから対象外。他だと……。
そう言えばチョコケーキさんに悪戯されても、当たりが強くなかったわね?
あ、駄目だわ、彼女も火属性選抜メンバーだから、対象外だわ。でも……何でそうだったのかしら?
ええい、考えろアタシ!
と、その時。アタシはチョコケーキさんたちと真夜中にパイ投げした時、自分のアバターを変えてたことを思い出した。
そうか、もしかしたらアイツって……。だとしたら、選ぶべき人は……!
「Dylica君っ!!」
過去のアイツの態度から推測した結果、それ以上の人がアタシには思い浮かばなかった。
「その心は?」
「アイツ多分、子供っぽく見える低身長プレイヤーには甘いわ! 実際、そういうプレイヤーと揉めてるの見たことないしっ! 水属性選抜メンバーまとめてるのも、低身長の真珠さんだしっ!」
まあ真珠さんには、言いくるめられてたらしいけど。
「それに、Dylica君は元々人懐っこいから、怖がらずに話しかけると思うっ! 風属性だから直接の戦力にはなれないけど、レンジャーだからバフ・デバフは完璧だしっ!」
アタシの意見に、先輩たちはしばし考え……
「低身長プレイヤー……言われてみれば確かにそうじゃんよ!」
「にゃんだふぉー(≧∇≦)」
「ユウさんも低身長やし、やるやんけ!」
「ミートゥー!!」
口々に賛成してくれた。
「でもそれにゃと……ジャスティアさん1人で、攻撃と回復と守りをすることになるにゃ!?Σ(艸ωΦ)」
「雑に扱うなって言われそうだポン!」
「だいじょーぶ、そこも考えたわっ!」
アタシは自信満々に続ける。
「鞭だけじゃなくて、飴もあればいいのよ。くろんさんがよく参戦しそうな合成素材が出るところに、配置してやりましょ!」
「なるほど。じゃあ、物攻合成素材が出るエリアだね。阿離我妬じゃんよ!」
こうしてアタシたちは、爆速でパーティ編成を進め……
「準備デキータ!?」
「がんばったぁ~……」
何とか作戦説明が終わる直前に、作業が終わった。
「じゃあ行くよ、お前たち!」
「あ、そっか。今から合成素材集めなんだっけ」
何となく終わった気分でいたけど、むしろここから始まりだったと気付き、アタシは天を仰いだ。




