年齢不詳な、ナイト
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第4章ep.61 休暇C までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
「ふわぁ、やっぱり湯船に浸かるのはいいわ……堕落する……」
裏方の仕事が大方終わり、イベントエリア「温泉」で疲れを癒していたアタシは、欠伸を噛み殺しつつ、浴衣姿で屋台エリアに向かった。
少しだけ迷ってから、世界で一番人気の炭酸飲料を注文し、一気に飲む。
くうう~、やっぱり風呂上がりの冷たい飲み物は最高ね!
「あっ」
その時すぐ近くのテーブルで、ぜっぴんさんが一人でグリューワインが入ったカップ片手に、星見酒を楽しんでるのを見つけた。
ぜっぴんさんって見た目が子供だけど、何て言うか仙人っぽい服装と雰囲気だから、すっごく長生きしてそうな感じもして、年齢不詳なのよね……。
「お疲れ! 料理すっごく美味しかったわ、あんがとねー!」
興味が出てきたアタシはすぐにそこに向かい、グラスを掲げる。お礼も言いたかったし、丁度いいわね!
「お疲れ様! 僕も楽しかったよ、またやろーね!」
ぜっぴんさんもそう言って、カップを掲げた。
「お酒飲んでるってことは、ぜっぴんさん成人してたのね?」
「あはは、みんな同じこと言うね~。こう見えて奥さんもいるよっ」
酔ってるせいか、普段より少しテンション高めに見えるわね……。今なら色々答えてくれそうっ!
「奥さんはどんな人なの?」
「えっとね~、一人称が『我』でぇ、本人曰く、『衣食住&ゲームの保証と引き換えに、幸運をもたらす神獣』だって~!」
「我……神獣……。何だか面白そうな人ね!」
「うん~、そんなところも好きだよ~!
あと普段から色々、料理のリクエストしてくるんだけど、食べっぷりがいいから、作ってても見てても気持ちいいんだよね~! 今日作った料理も実は、奥さんが好きな物ばっかりなんだ~」
これってつまり、ぜっぴんさんが毎日、料理してるってことよね?
まあ、あんだけ料理が上手なら、アタシだって毎日3食作ってほしいわ。
「ゲームの保証ってことは、奥さんもゲームするの?」
「というか奥さんが先にスカオーやってて、僕が『そのゲーム何?』って聞いたんだよ~」
奥さんもスカオーやってたんだ!
「あらすじ説明してくれた後にやるか聞かれたから、やる!って言ったら、奥さんがリセマラしてくれてね~。そしたら出た武器が剣盾だったから、僕はナイトすることになったんだよ~」
「えっ、そんな理由!? それでよくあんな、難しい職を続けられたわね……」
「うーん……まあ奥さんがプリーストで支えてくれたから、何とか?」
その頃のぜっぴんさん、ちょっと見てみたかったなぁ。
「こっちの世界には、奥さん来てないの?」
「うん~、丁度体調崩してる時だったから~」
そう言ってぜっぴんさんは、少しだけ寂しそうな表情を見せた。
「夫婦で来てるRockさんとたろ吉さん、リアル世界で同級生っぽいジャスティアさんとくろんさんを見てると、やっぱり2人一緒だから頑張れるってこともあるだろうな~って思うよ」
「確かに。心の支えって大事だもんね!」
「あ、でも気にしないで! 僕はやっぱり、奥さんにはこんな大変な思いしてほしくないから、ここにいなくて良かったと思ってるよっ!」
まあ、どっちが幸せかなんて決められるもんじゃないもんね。
あ、でも待てよ……?
「そう言えばアタシたちの身体って、入れ替わったアイたちが動かしてるはずよね? 今頃アイと奥さんが、仲良くしてるってことになるのかしら……?」
「あーー! そうだった! それは困るよ!」
ぜっぴんさんが頬を膨らませてそういう姿は、子供にしか見えないし、可愛らしかった。
「あっ、今何時だっけ?」
アタシは慌てて時間を確認する。よし、セーフっ!
そのまますぐに、ワールドチャットの画面を開いた。
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ペンタス:みんな 24時まであと3分よ! アレの準備はいい?
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これだけでほとんどの人は、すぐに何のことか分かるはず。
予想通り多くの人が、ジャンプしやすい場所に急いで移動し始めた。
「ああ~、あれかぁ。僕も混ぜてほしいな」
そう言いつつ椅子から立ち上がるぜっぴんさんの足元は、すでにおぼつかなかった。
「えっ、大丈夫!?」
「ん、おっけー!」
全然大丈夫そうに見えないんだけど……。
時間になったので、その場で思い切り5回転ジャンプしたぜっぴんさんは、意外にも着地はバッチリだったんだけど、回転のせいで酔いがさらに回ったらしく、よりフラフラになる。
「いやー危なかったぁ」
倒れそうだったから、アタシは慌ててぜっぴんさんを椅子に座らせる。
彼はそのままテーブルに突っ伏し、
「ドラッキちゃん……早く帰るから待っててね……」
そう呟いて、寝息を立て始めた。




