お菓子作りが得意な、レンジャー
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第4章ep.61 休暇C までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
「こ、これってまさか……!」
目の前に広がるそれらに、アタシは心を奪われてた。
ケーキ、シュークリーム、カヌレ、クレープ……色も形も様々な洋菓子が所狭しと並べられてるだけじゃなくて、香りもすごくいい。食べなくてもわかる、絶対これ美味しい!
「全部、エレさんが開発に携わってくれたの!?」
実はウパぺんたちが、現実世界のアタシたちの食べ物や癒し空間を、ゲーム世界で再現する実験をしてたって知って、その開発の手伝いをする代わりにイベントエリア解放の約束を取り付けたんだけど……予想以上に進んでてびっくりよ!
「こっちがお願いしたことではあるんだけど、まさかここまでやってくれてると思わなかったわ」
「はい、上手にできました♪ ああでも、甘いだけがお菓子じゃないですよ」
そう言われてよく見たら、確かにケーク・サレ、プレッツェル、黒胡椒やハーブが効いたクッキーもあるわね。
今のところ、ウパぺんたちが考えたものは軽食ばかりだったから、晩餐会にふさわしい料理の開発をぜっぴんさんに、デザートをエレさんにお願いしたんだけど、大正解だったみたい!
人選した先輩たちのリサーチ力も凄いわ……。
「それにしても凄いですね♪ 私が頭の中で思い浮かべるだけで、ウパぺんたちが再現してくれるって」
「ホントよね! まあその代わり、リアリティを求めるなら、材料や作る工程レベルで細かく記憶がある人が適任らしいけど……」
ウパぺんたちが実験で作った飲食物は、ゲーム世界に元々ある飲食物のアイコンに、ウパぺんたちが体験した記憶の味を無理やり繋げてる感じだから、見た目と実際の味が一致しないものが沢山あるのよね。
それはそれで面白そうだから、今回晩餐会とは別に提供することになったけど。
ちなみにエレさんに手伝ってもらった飲食物は、イラストが得意なウパぺんが見た目の再現をして、そこにエレさんの味と香りの記憶を繋げてるらしいわ。
「あっ! なるほど♪ それで私ですか。こんなことで良ければ、いつでもお手伝いするよっ♪」
そう言いつつ、エレさんはいつも身に着けてる絞り袋でイラストアイコンに触れる。するとアイコンがみるみる本物のティラミスになった。
うーん、さすがゲーム世界。
「ペンタスさんも、ここらでお茶にしようか♪」
「えっ、食べていいの?」
「ぜひ試食してみてください」
「サンキュー♪」
というわけで椅子に座り、アタシはウパぺんが用意してくれたフォークを握った。
「へぇ……良い見た目してるじゃん。味は……お、イイ感じ! すごく美味しいわ!」
「良かった。疲れてるように見えたので、少しでも元気になってくれれば嬉しいですっ♪」
「それを言うならエレさんのほうじゃない? 黒妖狼と戦ったばっかりじゃん!」
「う~ん、まあそうなんですけど……」
そう言って、言葉を探すエレさん。
「私の中で、レンジャーの仕事とお菓子作りは、実は繋がってて……。サポートは任せてくれたほうが、楽しいんですよっ♪」
「サポート……お菓子で?」
「はいっ♪ お菓子って、なくても人は生きていけるじゃないですか。でもみんな食べますよね?」
「まあ、それはそうよね?」
あれ? この感覚、前にもあったような……。
「嬉しい時、悲しい時、辛い時……どんな時でも、お菓子がそこにあるだけで、上手くいったりしますよね?
レンジャーの仕事も同じで、いなくても確かに雑魚敵やレア敵は倒せるんですけど、レンジャーがバフとデバフを駆使すれば、みんなが強敵とも戦える……私はそういう、さり気ないサポートが好きなんですっ♪」
あ、分かった。これ……花図鑑の理念に通じるものがあるんだわっ!
「そっかぁ……じゃあアタシたちと同じねっ!」
「ですねっ、今回は花図鑑さんたちのお陰で実現する、最高の休暇イベントですもんねっ♪
……そうそう、実はティラミスって、『私を元気づけて』って意味の名前なんですよっ♪」
「そうなの!? お菓子の意味かぁ……」
そんなのあるなんて、思いもしなかったわ……。まあでも花言葉があるくらいだから、『お菓子言葉』なんてものがあっても変じゃないか。
「他にも、チョコレートは『あなたと同じ気持ち』、マドレーヌは『あなたとさらに仲よくなりたい』、キャラメルは『あなたと一緒だと安心する』、マロングラッセは『永遠の愛』……色々ありますよっ♪
バウムクーヘンには長寿や繁栄を祈る意味があるから、結婚式の引き出物によく使われますねっ♪」
ってことは、ここに並べられてるお菓子には、エレさんの色んな想いが、沢山込められてるんだろうなって思った。
「早くみんなにも、食べてもらいたいわねっ!」
「はいっ、楽しみですっ♪ みんなが幸せになるといいな♪」
こうして完成されたお菓子の数々を、エレさんとウパぺんたちが量産してくれたので、当日の晩餐会は大成功を収めた。




