海の漢な、ファイター
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第4章ep.61 休暇C までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
砂漠地帯(昼)と地下迷宮(浅部)での2日間にわたる装備集めが終わり、いよいよ今日の午前中は光ボス、午後は闇ボス討伐となった。
かなり疲れてたから、ぐっすり眠れたわ……。
それでもいつもの時間に目覚めたアタシは、早朝見回りのため湖沼地帯(昼)へと向かう。ここ、ミニゲームの釣りをするために、普段から結構人が集まるのよね。
ただ、さすがに今日は人がいないかもしれないなと思いつつ、主要な釣りスポットを見て回ると……意外なことに、2人だけ釣り人がいた。
「いい加減釣れてくれないと……寝る」
「いや、誘っておいてそれはないだろっ!」
今にも寝てしまいそうなくらい、ウトウトしながら釣り糸を飛ばすラガマフィンさんに、ツッコミを入れるレフィアンさん。実はこの2人、今となっては朝釣りの定番なのよね。
「おっはよぉー! 今日も早いのね」
「おはよう! そっちも早いなっ!」
「ふわぁ……おはよ……むにゅ……」
いつも通り挨拶を交わしたところで、ラガマフィンさんは赤い印のところで針を止め、大物のレアを釣り上げる。
以前と比べたら、格段に釣りが上手くなってるじゃん!
「うわ、また一段と大きいの釣ったわね」
「お、今日のノルマは達成だなっ!」
テンション高めのアタシとレフィアンさんとは対称に、釣った本人は、
「ん、ありがとレフィアン。二度寝の時間だ、撤退する」
何とも低いテンションでそう言うと、早々に近くの木にもたれかかって目を閉じた。
「すー……すー……」
「寝るの早っ!」
「まったくだぜ!」
元々ラガマフィンさんって朝弱そうだけど、こんなにすぐ寝息を立てられるって、ある意味凄いわ。
「そう言えばレフィアンさんって、闇属性選抜候補じゃなかったっけ?」
「そうだぜ!」
「なのに朝早くから釣りしてて良かったの? 少しでも休んだ方が良かったんじゃ……」
ぶっちゃけこの2日間の装備集めは、今まで以上に忙しかったんだから、ゆっくり休んで備えた方がいいと思ったんだけど、
「あぁ、構わないさ。どうせ習慣で、早くに目が覚めるしな」
そう言いながら、今度は自分の釣り画面を操作し始めた。ついでだから、アタシもほんの少しだけ釣ろっと。
「早起きの習慣があるの?」
「俺はリアルで魚屋やってるからな! だから夜更かしの方が慣れてなくて、ラガマフィンさんには『釣りを手伝うなら朝にしてくれ』って言ってるんだ」
「あ、そういうこと!」
それは確かに、朝早そうね。アバターも海賊っぽいから、海の漢って感じだし。
「でもそうなると、魚釣ってたら職業病が出ない?」
「出るな! なまじ実在する海の生き物をモチーフにしてるものが多いから、『これはどういう構造なんだ?』とか、『この魚はどう裁こう』とか考えちまうぜ!」
「気になるのは味じゃなくて、構造や捌くほうってところが、いかにもねぇ……。
ああでも、その大剣だとちょっと捌きにくそう」
レフィアンさんがいつも持ってる大剣は、スチームパンク系って言うのかしら? 歯車とかパイプとかがついてるタイプのデザインだから、実用的かは……ねぇ?
「そうだな、こっちはこっちで、俺の趣味が出てるしなっ!」
「へぇ、そこだけ別の趣味だったんだ」
実は前から、服装は海賊っぽいのに大剣だけそれっぽくないから、何でかな~って思ってたのよね。
「実はいずれスチームパンク系の小説を書いてみたいと思って、子供の頃から構想は色々と練ってたんだ!! リアルが落ち着いて来たし、いよいよ書き始めるかって準備してたところで、こっちの世界に来ちまったけどな!」
「えっ、そうなの!?」
アタシは普段、漫画はよく読んでるけど、小説はちゃんとは読んだことないな。でも、知り合いが書いたものなら……ものすごく気になるわね!
「現実世界に戻ったら、書くの?」
「ああ、そのつもりだぜ! 折角いい経験もできたことだしな!!」
「じゃあその時は教えてね、アタシ読んでみたいから!」
と、その時。レフィアンさんの釣り竿に、激レアの巨大グソクムシがかかり、
「おっしゃぁ!!」
彼は拳を突き上げて叫びつつ、2つの意味で喜んだ。
「レフィアン……うるさい。目が覚めた」
「ごめん……!」
「まあまあ。どのみち、そろそろ起きないと駄目でしょ?」
時間的に、そろそろ選抜メンバー選びのための話し合いが始まる頃なので、アタシたちはその場で解散となる。
その数時間後、デゼルトアラクランとの死闘を制した彼は本当に、漢を見せてくれた。




