死の気配を纏う、プリースト
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第4章ep.61 休暇C までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
「ふう、さすがに疲れたぁ」
日程を詰めることになった分、遅い時間まで装備集めしてたからなぁ……。
実は今、花図鑑ではこっそりゴールデンウパぺんとの交渉を進めてるんだけど、どのイベントエリアを使わせてもらうようにするかとか、そのイベントエリアで何ができるようにするのかとか、そのためにどんな条件を呑むかとかを早く決めないとだから、考えることもいっぱいだわ。
でも休みが待ってると思うと、不思議と頑張れちゃうわね!
それはアタシだけじゃないみたいで、適性者ギルドで行きかう他の人たちも、どこか浮かれた雰囲気だなーって思いながら日課の見回りをする。こんな日でも何人かは職業訓練所で訓練してるのに気づいて、びっくりした。
お、よく見たらクリフくんもいるわねっ!
そんな中、1人他とは明らかに異質な空気……死の気配を纏うプリーストがいるのに気づいた。
あれは確か、シクザリアさん? 全職ガチャのプリーストさんと、何か話してるみたいだけど……。
「今、逆鱗に触れたな……?」
え、何、喧嘩!?
「はい、逆鱗ってプリーストは具体的に、どう使うのか気になって」
「ふむ。残念ながらプリーストは槍を使っても、必ず逆鱗が付くわけではないから、戦略に組み込むには難しいな。だから付いたら運がいいと思う程度だ」
あ、あれ? 思ったより全然親切?
「必殺技ゲージを貯めたいのであれば、大鎌の方が確実だな。ただ、必殺技ゲージを貯めるために大鎌を使うこともあまりない……。結局プリーストは、最も必殺技ゲージが貯まりにくい定めだ」
「そうなんですね……ありがとうございます!」
そう言って、全職ガチャのプリーストさんは職業訓練所での訓練を始める。
へぇぇ、意外と指導とかするタイプなんだぁ。
そんなこと考えてたら、アタシとシクザリアさんの目が合った。
「我に何か用か?」
「ううん、用事ってわけじゃないけど、何て言うか……見た目の印象と全然違うなーって、思ったのよ」
「ほう? どう違ったのだ?」
「シクザリアさんってちょっと怖そうだなって思ってたけど、優しいところあるなって!」
アタシは素直に褒めたつもりだったんだけど、
「……ふふふ、それはどうだろうか?」
意外にもシクザリアさんは、怖い笑みを浮かべてそう答えた。
「確かに運命に抗う者や、命を賭して立ち向かう者に、我は好感を持っている……。
だが我は死を司る神なり。我は多くの命を奪ってきた」
そう言いつつ闇属性の大鎌を取り出し、アタシのほうに向けるシクザリアさん。
「え゛……?」
まま、待って、何気にそれ、髑髏のデザイン入ってるんだけど!
「我に奪えない命はない。その魂……いただくぞ?」
ちょ、怖っ! え、どっちがホントの彼女!?
アタシが判断に迷ってたら、それを察したようで、
「……と言ったら、信じるか?」
シクザリアさんは悪戯っぽい笑みを浮かべつつ、大鎌を片付けた。
「…………あ、冗談!? そそ、そうよね!!」
「勿論だ。命は粗末にするものではないぞ」
いやでも、マジで怖かったわ。なまじシクザリアさんって、普段から見た目が怖いアバターだもんな。
「だがたまに、こんな風に死神になりきってみたいとは思う。折角ゲーム世界にいるのだから、リアル世界でしていない遊びを楽しむのも悪くない」
「んー、確かに本当の意味で、自分が作ったキャラになりきるってのは、なかったかな?」
これが実際にゲームしてる時なら、そんな風になりきって楽しむ人も多かったし、そのためのボイスも沢山用意してあるもんね。
照輝さんやよー子さんは、なりきってるのか素なのか、全然分かんないけど。
ん? そうか、そういうことなら……。
そこまで考えて、アタシはちょっと面白そうな企画を思いついた。
「何か良いことを思いついたようだな?」
おっと、顔に出てたかな?
「うん、休暇が楽しみだなーって!」
「そうか、私も楽しみだ。……こう見えて結構、浮かれている」
「そうなの!?」
全然そんな風には見えないけど、うまくアタシの企画が通った暁には、ぜひ彼女にも参加してほしいなと思った。
後日企画が通って、シクザリアさんに送ったイベント参加のオファーは、即承諾の返事が来たので、考えて良かったなって思った。




