初心者から脱却したい、マジシャン
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第3章ep.43 銀等級昇格 までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
「……というわけで、あの2人はこれからしばらく、注意観察しなくても大丈夫だと思うわっ!」
花図鑑部屋に戻ったアタシはその夜、ラーヴァゴーレム戦後にカップルが誕生した報告を終え、一息ついた。
「にゃたしも見たかったにゃヾ(⌒(_*Φ ﻌ Φ*)_」
「あー……さすがにスクショも動画もないわね……」
そんなところまで頭が回らなかったし。
というか、そんなもの撮ってることがバレた日には、アイツに何されるか、分かったもんじゃないわ!
「その他の報告は、何かあるかい?」
「じゃあポンから報告とお願いをするポン! 例の新米マジシャンについてポン!」
そう言って梅先輩は、報告を始めた。
◆◇◆◇◆
実のところかなり前から、そのポン……天尚さんのことは気になってたポン。
というのも天尚さんは、早い段階から持ってる武器の関係上、光属性選抜マジシャン候補だったけど、マジシャンの経験が浅いという理由で、みんなが決めあぐねてたからポン……。
とはいえ、この時期になっても他の目ぼしい候補がいないことから、マジシャン部屋の空気は緊張感が増すばかりポン!
あ、今日も天尚さんはマジシャン部屋で、戦略関連の質問を蛍さんにしてるポンね!
「すみません、この武器を使う時って……って感じかなって考えたんですけど、それで大丈夫ですか?」
「うん、考え方はいいと思うぞ。ただ、それを使うなら……」
天尚さんは勉強熱心だから、いつもこんな感じで、気になることがあると都度、色んな人に質問してるポン!
でも最近は、蛍さんに質問することが多いポン?
「なるほどなるほど……助かりました!」
「天尚さんは、いつもよく頑張ってるな。無理はするなよ」
「そうはいきません! 勉強は学生の本分! 未来は私次第ですから!」
いつもそう言ってるけど、周りが心配するくらい頑張ってることも、みんな知ってたポン。
「あの、それで実はお願いがあるんですけど……」
だから天尚さんがそう切り出した時、ポンは少し嫌な予感がしたポン。
「私が昼エリアのボスと戦うところ、直接見てもらえませんか!? アークタルラか、キングドロセラでいいので!」
予想外の話に、マジシャン部屋はざわついた。それはそうポン。
確かに1度倒したボスでも、ゲームの特性上、何度でもクエスト受諾して再チャレンジできるポン。
というか本来はそうやって、レベル上げしたり、特別な装備を作ったりするものポン。
とはいえ、今の状況でそんなことできるとしたら、その敵の弱点属性に特化した人たちだけだポン!
「……それはダメだ。俺は……お前のことを、妹のように大事に思っている。さすがに危険すぎて、賛成できない。俺はお前の兄だからな……」
だから蛍さんの意見はもっともだったけど、天尚さんは諦めなかったポン。
「倒しきれなくていいんです! 何と言うか……マジシャンとしての勝負勘みたいなものを、昼エリアのボスと戦うことで掴めたら、それで!」
迷いのない、まっすぐな瞳と熱意で、天尚さんは続ける。それを望む理由は、きっと……。
「私、ファイターとしてのボス討伐経験はありますけど、マジシャンとしての経験はまだないから……。今のうちに、ファイターとマジシャンの立ち回りの違いとかを、しっかり確認しておきたいんです……!」
やっぱり、マジシャンとしての経験不足が気になってたポンね。探索エリアのレア敵討伐でも、ある程度は掴めるけど、そういう敵に4秒詠唱のフルバフ攻撃をすることはないから……。
これを聞いて、きっと蛍さんは根負けしたポンね。
「…………困った妹だな」
最終的に蛍さんは、そう言いながら天尚さんの肩を優しく叩いたポン。
「いきなりランダム行動のアークタルラと戦うのは危険すぎるから、戦う敵は行動順がほぼ固定の、キングドロセラだ」
「……! よろしくお願いします!」
「ただし君だけではダメだ、俺もついていくぞ。それと、他の協力者も必要だ」
「他の協力者……ですか?」
それには直接答えず、蛍さんはポンの方にまっすぐ近づいてきたポン。
これはもしや……!
「こんばんわ」
予想通り話しかけられたポンは、心の中で花図鑑としての対応スイッチをオンにしつつ、お辞儀で返したポン。
「君たち花図鑑のメンバーは、魔物だけでなく人も観察対象だと俺は知っている。だから、先ほどまでの俺たちの会話を、すでに観察済だという前提で話を進めたいんだが……いいか?」
「……了」
さすがにそこまではっきり言われると、誤魔化せないポン!
「これから俺たちと一緒に、キングドロセラと戦ってくれる花図鑑のメンバーを、紹介してくれないか? できればレンジャー・プリースト・ナイトの3人を」
なるほどポン。確かにボスとそれなりの時間戦うなら、補助職3人は必須ポンね。
とはいえ、ポンにその決定権はないから……。
「花図鑑部屋にて要相談。その後回答」
「了解した。ここで待っていればいいか?」
「是」
◆◇◆◇◆
「……というわけで、今に至るポン! 蛍さんの希望はレンジャー・プリースト・ナイトだから、マジシャンのポンは力になれないけど……」
ひええ、まさかそんなこと考える人がいるとはねぇ……。
「なるほどねぇ。そう言うことなら……」
その時、向日葵先輩はちらっとアタシを見たけど、
「ムリムリムリ、勘弁してよ。アタシはボス討伐経験0だから、足引っ張っちゃうわ!」
アタシは速攻、お断りさせてもらった。
「まあペンタスちゃんは、いつも通り戦闘後の回復係ってことで、ええんちゃう?」
「そうだね。じゃあ菊・藤・百合の3人で手伝えるかい? 残りのメンバーは、何かの時のために観戦しつつ、待機ってことで」
「♡(´ Pゝω・)ニャンニャン」
「いい……よぉ~……」
「任せてくだサーイ!」
というわけで、話し合った結果を早速、梅先輩が蛍さんと天尚さんに伝えて、これからすぐにでもキングドロセラと戦うことになった。
何気に先輩たちが戦うところって見たことないから……ちょっと楽しみね!




