表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サ終ゲームのリスタート side story ~新米花図鑑の人物分析結果録~  作者: 橋 みさと
第5章 ラーヴァゴーレムに勝つまでの記録
24/27

強がりでシャイで口下手な、プリースト

本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第3章ep.43 銀等級昇格 までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。


未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。

「あの……ごめんなさい。ティアを、見なかった……?」


兜で口元以外隠れてるから分かりにくいけど、焦りをにじませた声で、くろんさんはそう聞いてきた。

アタシたち5人は一瞬、顔を見合わせる。


「ここには来ていませんよ?」

「ラーヴァゴーレム倒した後、どっかにワープしたところまでは見たけど……。そこから先は、アタシも知らないわ」


春水さんとアタシの答えに、くろんさんは焦りの色を濃くした。


「さすがのアイツも、今は暑さでヘロヘロだろうから、個人部屋で涼んでるんじゃないの?」

「私もそう思ったけど……個人部屋にはいなかったの……。湖沼地帯(昼)も一通り、見たつもりだけど……会えなくて……」


よー子さんの考えたことは、アタシが思ったこととも同じだったけど、そこにいないとなると……。


「湖沼地帯(昼)は広いし、色んな所で水浴びできるから、見落としかもだうー」

「そうですね……。何にしても彼の性格からして多分、人に見つかりにくいところだと思います。弱ってる姿を見せるのが嫌でしょうから」


嶋耕作さんの意見に、真珠さんが補足しつつ同意する。確かにアイツなら、そうしそうね。


「見つかりにくいところ……」

「私も同行しましょうか?」

「いやでもあいつ、わざわざ私たちから離れたくらいだし、こっちが探してるって知ったら余計、見つかりにくいとこに行っちゃうんじゃない?」


それは一理あるわね……。あまり大々的に探さないほうがいいかしら?


「それなら花図鑑みんなで、こっそり手伝うわ。あまり大人数でもバレそうだし、選抜メンバーのみんなは休んでて!」

「分かったうー!」

「じゃあせめて、ジャスティアさんがくろんさんとうまくいくために実践してほしいことを、個人チャットで伝えておきますね。見てくれるかは分かりませんけど」


何のことかは分かんないけど、真珠さんはそう言って、半透明の画面を操作し始めた。アタシも早速、花図鑑部屋のグループチャットで連絡を取る。

すぐに向日葵先輩から返信があった。


「探す範囲が広すぎる湖沼地帯(昼)を4人で分担して、あと適性者ギルドの各施設とプリースト部屋も2人で分担して行ってくれるって」

「ありがとう……。私は……個人部屋にもう一度行って、居なかったら……もう少し、ティアが行きそうなところを、考えてみるわ……。

見つかったら、チャットで連絡するわね……?」

「オッケー!」


そう言ってくろんさんは早速、ワープしていった。


「あ、アタシはどうしよう……? どこか他に候補あるかしら?」

「そうですね……今挙げた場所以外となると……」

「ううぅ……だう……」

「どっかあったかしら?」

「えーっとぉ……」


みんなで頭をひねってると、


「閃きました! 森林地帯(昼)と山岳地帯(昼)の川も、入れるところがございます!」

「そう言えばあったわね! さすがに山岳地帯(昼)の敵には水属性攻撃効きにくいから、そっちに行くほど馬鹿じゃないと思うけど」


春水さんの発言に、よー子さんが「馬鹿」の部分を強調しつつ同意した。


「あ、じゃあアタシ、森林地帯(昼)に行ってみるわ。どの辺?」

「地図の……この辺りですね。かなり分かりにくい場所なのですが、この辺りに道がありますよ」

「サンキュー♪」


だいたいの位置を教えてもらったので、アタシも早速、森林地帯(昼)にワープした。

教わった場所に行く道は……この辺のはずなんだけど……。


思ったより雑魚敵が徘徊してる道を慎重に進むと、よく見ないと分からないような暗くて細い道が、確かにあった。

何度もこの辺り通ったことあるはずなのに、全然知らなかったわ……。


「……っ! ティア!!」


その細い道に入ってしばらく進んだところで、思ったより近い位置からくろんさんの声が届き、アタシは身を隠した。

あいつに見つかると、色々と面倒そうだもんね。


バレてなさそうなのを確認し、そっと声がした方を伺う。


そこは意外にも明るく小さな花畑で、色とりどりの花が咲き乱れる中、ぎりぎり身体を入れられる程度の浅い小川が流れてる。

そして、あと少しで小川に辿り着くというところで倒れそうになったジャスティアさんを、くろんさんが支えてるところだった。


うわ、思ったより顔色悪いじゃん! あいつ、かなり強がってたのね?


「何でここにいるんだよ……くろんに弱ってるところ、見せる気なかったのに」


その声も、普段の様子からは想像できないくらい弱々しい。


「この場所をティアに教えたの、私だから……もしかしてって……」

「俺にあんま近づくな。今暑さで意識が朦朧としてるから、何するか分かんねぇぞ」

「そんなこと言っても、1人じゃたどり着けないでしょ……?」


そうして手を借りて、何とか小川に辿り着いた彼は、その小川に仰向けに寝そべって浸かり、目を閉じて呼吸を整える。くろんさんは少し考えてから半透明の画面を操作し、アバター装備した氷の双剣をその小川の上流に沈めた。


なるほど、あの方法なら攻撃武器でも、冷やせるかも。


そしてさらにくろんさんがチャットページを開いたのを見て、アタシは慌てて自分のメッセージ通知設定を消音に切り替える。


設定変更が終わったのとほぼ同時に、くろんさんからの発見報告が届いたので、アタシは当たり障りないことを返信した。

次いで花図鑑のグループチャットに発見報告の転記と、自分もしばらく観察する旨を報告してから、画面を閉じる。


さすがにこれは、気になるから離れられないわよ!


「個人チャット……何度も送ったのに、返事してくれないから……心配したわ……」

「……わりぃ、今見る。

……あ? 何であの幼児なんだか母親なんだか分かんねぇ奴からも来てるんだ?」


ほんとあいつ、くろんさん以外どうでもいいと思ってる節あるわねぇ。


「それ……もしかして、真珠さんのこと……?

私が心配して、色々探し回ったからよ……。もう見つかったって、伝えたけど……」


ジャスティアさんは真珠さんからの個人チャットページを見てたけど、読み終わったのか、


「どんだけ人の心が読めんだよ……」


そう呟いて、返信せずに画面を閉じた。


「……聞いたわよ。水属性選抜チームの人たちに、最初、酷いこと言ったんでしょう……? 本当はそんなこと、思ってないくせに……」

「舐められたくねぇのと、何つーか……ずっとモヤモヤしてっから、八つ当たりつーか、憂さ晴らしっつーか……」

「八つ当たり? 憂さ晴らし? モヤモヤって、何に……?」


十分に身体が冷えたのか、ゆっくり水から上がりつつ、彼は続ける。


「くろん1人でレア敵討伐してたって聞いてから、ずっと……。

俺、前作から結構仲いいと思ってたのに、何で誘われなかったんだよって、なるだろ……?」

「それは……っ。だから、説明したじゃない……」


そのまま花畑に、大の字で寝そべるジャスティアさん。ととのう状態に入り始めたのか、口の小枝が落ちそうなくらいボーっとしてる感じだった。


「それを言うなら、私だってずっと……モヤモヤしてるわよ……。

リアル世界の子、なんでしょう? ティアが心に決めた子……。いくら気にしなくていいって言われても、やっぱり気になるわよ……!」


予想外の展開に、アタシはドキドキしてきた。

これは……もしかして、もしかして、もしかする!?


「くろんの親友の黒柳には、速攻バレたけどな」

「えっ、嘘……そんなに身近なの……!?

確かに私はハナちゃんから、男の子たちの下心と恋心の区別がつかない、ニブチンって言われてるけど……。それにしてもティアは、分かりにくいわよ……。

もっと、素直に……伝えてくれればいいのに……」

「…………言ったな?」


この瞬間、ジャスティアさんの目の色が変わるのを、アタシは確かに見た。

口の小枝を外しつつ身を起こし、キョトンとしてたくろんさんと目を合わせる。


「自分の言葉に、責任持てよ? 今から素直に伝えるから…………嫌なら逃げろ」

「……えっ?」


「逃げろ」ってどういう意味かと思ったら、ジャスティアさんはそのまま無言で右手を伸ばし、くろんさんの左手を取る。


「あ、え……?」


右手のひらに乗せたくろんさんの左手甲を見つめつつ、親指でそっと撫でると、くろんさんが嫌がらないのをチラリと確認してから……ゆっくり撫でたところにキスした。


アタシは声を上げないよう、必死で耐える。

アンタも真珠さんの旦那さん同様、言葉で伝えられない系か!


「ちょ……えええええ!?」


これはさすがに愛情だと伝わったようで、真っ赤になるくろんさん。

そして伝えたいことが正しく伝わったと分かったジャスティアさんは、ホッとしたような、嬉しそうな表情を見せた。


「逃げねぇなら次行くぞ」

「つつつつ、次!?!?」


今度はゆっくり左手を伸ばし、くろんさんを優しく抱き寄せる。くろんさんは、されるがまま。

キャー、キャー、キャー!! これは目が離せないわ!!!


「ももももも、もしかして、ティアが心に決めた子って……わ、わ、わた、し……!?」

「……ん」

「そ、その『ん』は、イエスって意味……? 私で、いい……の……?」

「……くろん、が、いい……」


そのままジャスティアさんはくろんさんの顎をつまみ、今まで見たことのない優しい目で見つめる先は……唇。

今度はそっと、親指で唇を撫でた。さすがにくろんさんも察したようね。


「……逃げねぇんだな?」

「ままま、待って! 私もティアのことは好きだし、逃げないけどさすがに、く、く、唇はまだ恥ずかしいっていうか……!」


この言葉で少しだけ考え、ジャスティアさんは限りなく唇に近い頬にキスした。

お互い真っ赤になり、しばらく見つめあってたけど、


「……ほれみろ。やっぱり暑さで自制できてねーよ」


ふいに目を逸らすも、再度抱き合って幸せそうな顔してる2人を見たところで、アタシは恥ずかしくてこれ以上見ていられなくなり、そっと花図鑑部屋にワープした。


ちなみにこれ以降、たびたびジャスティアさんとくろんさんの2人で、レア敵討伐に向かう姿が目撃されることとなったんだけど……。


「もしかしてあれが、あの2人のデートなんですかね……?」

「いいじゃんよ、あの2人らしくて! 愛羅武勇ってね!」


向日葵先輩は苦笑しつつ、そう感想を述べた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ