↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/47

目押しが苦手な、マジシャン

本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第3章ep.37 アイサイドE、F までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。


未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。

さてと、そろそろアタシも釣る場所を変えないと……。


アタシは一旦釣りのミニゲーム画面を閉じて、次の釣り場へ移動した。

釣る場所とルアーの組み合わせで釣果が変わるから、1か所じゃ終わらないのよね、これ。


「ええと、今度はHP狙いだから……よしっ!」


そろそろ昔の感覚を思い出してきたから、一発で赤いライン上で針を止める。大物を釣り上げてガッツポーズしたところで、


「まじめんど……」


隣で長靴を釣り上げてしまった猫……もとい、ラガマフィンさんが、苛立たしげに針から外した長靴を、地面に叩きつけた。

当たり前だけど長靴の釣果は、最低ランクになってる。


その後も彼女は、魚を逃がしてしまったり、長靴と同ランクの海藻や空き瓶を釣り上げたりしてた。そのたびに、どんどん不機嫌な顔になり……


「もう飽きたぁ! 全然楽しくないぃ!!」


ついに釣り竿を放り投げ、泣き出してしまったので、アタシは慌てて駆け寄る。


「ドンマイドンマイ!」


でもこれに驚いたみたいで、パッと距離を取って、木の陰からこちらを覗き見るラガマフィンさん。

何だか、人慣れしていない猫みたいね。


アタシは警戒させないように、その距離のまま声をかけた。


「えっと、そんなに釣りゲーム苦手なの……?」

「だって全然、赤いラインで止まらないんだもん……。どうやったら、みんなみたいに釣れるの?」


少し落ち着いたみたいで、アタシにゆっくり近づきつつ、そう答える彼女。


「改めてそう聞かれると……何でかなぁ……?」


感覚でやってるもんだから、いざコツを聞かれると、アタシもどう答えていいやらさっぱり分かんなかった。


「とりあえず、アタシがやってみるから、自分と比べて何が違うか見たら?」

「なるほど……」


早速、数回アタシが釣るところを見てもらう。でもラガマフィンさんは難しい顔をしてた。


「全然分かんないぞ……」

「ええっと、じゃあ今度はアタシが、ラガマフィンさんの釣るところを見てるわ」


というわけで、役割を交代してみたものの、やっぱりよく分かんない。

かなり苦手なようで、ラガマフィンさんが釣りゲームをすると、ほとんどの場合は青色エリアで針が止まってた。


「うーん、他の上手な人が釣るところも見てみたいわね……」

「他の人に聞くのか……?」


不安顔のラガマフィンさん。どうも人見知りっぽいわね。


「だいじょーぶ、アタシも一緒だからっ!」


それならアタシが仲介すればいっかと思い、辺りを見回す。


「あ、ねえ! 釣るところ見ててもいい?」


少し離れたところで魚を釣ってるファイターさんを見かけたから、アタシは即、声をかけた。


「俺か? おう、いいぜっ!」


快く承諾してくれたから、早速2人で観察させてもらう。

何回か見てるうちにようやく、これかもってヒントが見えた。


「そっか! ラガマフィンさんはボタンを叩く前に一旦こう、手を振り上げる癖があるんだわ!

多分『押すぞ!』って気合がそうさせちゃうんだと思うけど……。手を振り上げる分ボタンを叩くまでに時間がかかって、針がずれやすいんじゃない?」

「……おお! 意識してみるぞ~」


彼女は深呼吸してから、再度釣りにチャレンジする。

アタシの助言に従い、手を振り上げないように意識したことで、今でよりズレにくくなったけど、それでもまだ黄色エリアに針がずれてしまっていた。


「うう……中々赤色で止まらないぞ……」

「何だ、釣りが苦手なのか。俺のやり方でいいなら、詳しく教えるぜっ!」

「いいの? それ助かるわ!」


渡りに船って、まさにこのことね!

早速そのファイターさんは、釣りのミニゲーム画面をアタシたちの方に向けて、説明し始めた。


「まず俺の場合は、左手で針を止めるんだが……こう、画面にあと少しで触れそうなところに手を置いてる。これならわざわざボタンを見ていなくても、指を少し下げるだけで画面に届くからな」

「そっか、そもそもボタンにちょっと触れれば止まるんだから、叩く必要ないんだっけ」


アタシもつい、早押しゲーム感覚でボタンを叩いてたけど、よく考えたら無駄なことしてたのね……。


「それで、このルアーだと赤色エリアが3時の方向だが、俺の反応速度だと、2時の方向に針がある時にボタン押すと、丁度いい感じなんだ。

だから2時の方向に針が来た時に、ボタン押すようにすると……」


そう言って彼は見事、赤色エリアで針を止め、


「ほらなっ!」


右手1本で、大きな蟹を釣り上げた。


「おおおおおっ!!」

「すごっ! やるじゃんアンタ」

「反応速度は人それぞれだから、後は自分がどれくらいズレるかを把握すれば、釣れると思うぜっ!」


この助言に従って、アタシも釣ってみたら、今までよりは遥かに、大物が釣れやすくなった。


「いいわね、これ!」

「私、どのくらいズラせばいいか、まだ分かんないんだけど……黄色で止まることは増えた。

……あっ!」


ここで初めて、赤色エリアにぎりぎり入らないくらいの黄色エリアで、針が止まる。ラガマフィンさんは、ヒラメっぽい形をした赤い魚を釣り上げた。


「惜しい! でもイイ感じ!」

「今までの見る限りだと……この辺りに針が来た時にボタン押すと、いいんじゃないか?」


そう言って彼は、ラガマフィンさんの釣り画面に指を添える。


「このままにしとくから、釣ってみろよっ!」

「分かったぞ~」


再度深呼吸してから、ラガマフィンさんは指示に従いボタンを押すと……ようやく赤色エリアで針が止まる。


「わ、わっ!」


今までにない強い引きに驚きつつ、釣り上げると……超巨大なサメが針にかかってた。


「お、ラッキー!」

「や、やった……激レアだぞ~!」


赤色エリアで針が止まっても、激レアが釣れるとは限らないから、アタシもこれにはびっくりする。

よほど嬉しかったのか、ラガマフィンさんはそのサメに頬ずりして、キスまでしてた。


「良かったなっ!」

「レフィアンのお陰だぞ~!

ねえねえ、フレンド登録していい? 今後もちょっとだけ、釣りゲーム手伝って」


どうやら今ので警戒心が消えたらしく、自らフレンド登録を申し出るラガマフィンさん。


「おう、いいぜっ!」

「あ、じゃあアタシもっ!」


というわけで、3人でフレンド登録しあった。


「ありがと。今度レフィアンが困った時があれば、私が助けるぞ~」

「アタシは今教わったこと、他の人にも共有していい? 多分釣りが苦手な人、他にもいっぱいいると思うのよ!」

「勿論いいぜっ! 選抜チームメンバーや候補は特に、釣れないと死活問題だしなっ!」


こうしてこの釣りゲームのコツは、ワールドチャットで伝達されることになって、みんなから大いに感謝された。


その後、ラガマフィンさんとレフィアンさんが、2人で釣りをする姿が複数回目撃されることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。