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サ終ゲームのリスタート side story ~新米花図鑑の人物分析結果録~  作者: 橋 みさと
第5章 ラーヴァゴーレムに勝つまでの記録
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中二病な、レンジャー

本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第3章ep.43 銀等級昇格 までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。


未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。

三段渦紋亀を倒した次の日の適性者ギルドは、朝早くから騒がしかった。


「うーん、こうしたほうがいいかしら? それともこっちの方が……?」

「何をそんなに、真剣に悩んでるの?」


適性者ギルドの壁に設置されている大きな鏡の前で、ぶつぶつ言いながら色々なポーズを取るレンジャー……よー子さんを見つけ、アタシは声をかける。


よくぞ聞いてくれたとばかりに、よー子さんはアタシの方にクルリと向き直ると、


「我は堕天使、世界の真理を暴く者なり!」


そう言って、「暴く者なり!」のところでポーズをビシッと決めた。え、これどう反応すればいいの?


「どう? 今の登場方法、キマッてたかしら?」


その一言で、彼女の悩みを瞬時に理解したアタシは、少しだけ悩んでから答えた。


「ええっと……そういうのアタシはあんまり分かんないんだけど、登場方法をどうするかで悩んでたの……?」

「勿論よ! もうじき仲間の選抜メンバーに、挨拶することになるかもしれないのよ? そうなったら私の雄姿を、みんなが観戦するかもしれないわ! そのために今から、しっかり準備しておかないと!」


ってことは、水属性の選抜メンバー候補ってことよね? 観戦されることで緊張する人は大勢いるけど、テレビ映りを気にして準備する人は、初めてだわ……。


「第一印象がすごく大事だから、失敗できないじゃない!?」

「まあ……そう、ね?」


方向性は他の人と随分違うけど、気持ちは分からないでもないか。

とはいえアタシ、ホントにそういうの、よく分かんないのよね。


「あ、もしかしたら……あの子ならいい意見言ってくれるかも? ちょっと待ってね……」


興味ありそうな人に心当たりがあったから、そう言いおいて、アタシは個人チャットのページを開く。まだ早い時間だけど起きてたみたいで、すぐに返事が来た。


「今から来てくれるって」

「ペンタスお姉ちゃん、おまたせ!」


よー子さんに結果を伝えるや否や、適性者ギルドにワープしてきたDylica君は、手をぶんぶん振りながら近づいてくる。それに気づいたよー子さんは、


「我は堕天使、世界の真理を暴く者なり!」


さっきと全く同じ台詞とポーズを、ビシッと決めた。


「わああ、凄い、カッコいい!」


予想通り目をキラキラさせて、拍手するDylica君。うん、助っ人として呼んで正解だったわ。

よー子さんも、まともな意見をくれる存在が来たことに、満足げだった。


「今のポーズの他にも、こういうのとか、こういうポーズとかを考えてたのよ。どれが一番いいかしら?」

「ええっ、そんなに色々あるの!? それは迷うね」


しばらく色々なポーズを見せる彼女に、1つ1つ反応するDylica君。やっぱ男の子って、こういうの好きなのかしら?


ポーズを一通り見せ終わったみたいで、若干お疲れ気味のよー子さんに、Dylica君は真剣な眼差しで意見を言った。


「どのポーズも捨てがたいんだけど、僕はね~、今のポーズをいくつか組み合わせた方が、カッコいいと思うな!」

「ポーズを組み合わせる? 具体的に聞いてもいいかしら?」

「えっとね~、今のは『暴く者なり!』のところしかポーズなかったでしょ? その前の部分でもポーズがほしいよ!!」

「なるほど、確かにそうだわっ!」


というわけで、今度は2人であーだこーだと悩み始める。これ私、もういらないかしら?


「何だなんだ? 2人してさっきから、カッコいいことしてるな!」


その場を離れようか迷ってたところで、今度は日課の早朝トレーニングを終えた照輝さんが加わる。

照輝さんもこういうの、好きなんだ……。


「いいところに来たわね! 私の渾身のポーズを見てくれるかしらっ!」

「よー子お姉ちゃん、頑張って!」


早速2人して考えた新しいポーズを決めるよー子さんに、照輝さんはうんうんと頷いた。


「なかなかいいな! だがこのポーズは、何を強調したいんだ?」

「強調……? もっと分かりやすく言ってくれるかしら?」

「例えばボディービルのポーズにある『サイドチェスト』は、腕の太さや背中、脚、肩など各部位の厚みを強調するポーズだ。『バック ダブルバイセップス』だと、広背筋と脚を強調するポーズだな」


言いながら、実際にそのポーズを見せる照輝さん。


「今のポーズは、台詞とセットなんだろう? だったらもっとこう、強調するものがあるんじゃないか?」

「そっか、台詞とポーズがリンクした方がいいのね!」

「あと全体的にもっと、指先・足先まで意識してビシッと決めた方がいいなっ!」


と、今度は3人であれこれ悩み始めた。


「ペンタスさんはどう思う!?」

「あ、うん、そうね? いいんじゃない?」


完全に逃げるタイミングを失ったアタシは、観念してその場に残る。


「じゃあ最初の『我は堕天使』のところは、堕天使をイメージしたこの、額の紋様を強調するポーズにして……」

「そこでわざと、手で目を隠しぎみにした方が、紋様の方に目が行くんじゃないか?」

「うんうん、それカッコいいよ!」


凄く楽しそうに意見を出し合う3人は、ついに納得のいくものができたようで、喜び合った。


「じゃあペンタスさん、改めて披露するから見てねっ!」

「わ、分かったわ……」


大きく1つ、深呼吸するよー子さん。それを見つめるDylica君と、照輝さん。


「我は堕天使、世界の真理を暴く者なり!」


最初と同じ台詞だけど、見せ方を意識した一連のそのポーズは、アタシの目から見ても確かに、カッコいいって分かるものだった。


「凄っ、ヒーローショーに出る役者さんみたい!」


アタシの素直な感想に、よー子さんはかなり満足したようだった。


「だがこれ、もっと短い台詞のバージョンもいるんじゃないか?」

「え゛っ!?」

「そうだね! 台詞どうするの?」

「そうね……『堕天使、降臨!』でどうかしら!?」


こうしてアタシは、もう1ポーズが決まるまで、生暖かく見守ることになった。

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