↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/47

自称初心者な、ナイト

本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第3章ep.37 アイサイドE、F までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。


未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。

地属性選抜チームが三段渦紋亀と戦うために戦略を練っている間、アタシはそっと観戦エリアに入り、花図鑑の先輩たちに朝の出来事を報告する。


「そっか、クリフくん頑張ってるんやな」


あの時一緒にいた菖蒲先輩も、アタシの報告で安心したようで、ほっとした表情を見せた。


「そう言えばナイトが貴重なのは知ってるけど、実際今どのくらいいるのかしら?」

「ナイト部屋所属は10人ですヨー! そのうちナイトガチャのみ選択は、6人でース!」

「100人中10人いるから、これでも今回は多い方じゃんよ」

「ふえぇ……ナイトさんはホント、少ないね~……」


百合先輩と向日葵先輩の回答に、藤先輩も驚いてる。アタシもまさか、そんなに少ないとは思ってなかったわ。


「あ、じゃあもしかしてクリフくんって、その貴重なナイトガチャのみ選択のうちの1人なの?」

「イエース!」

「そっか……共感できる仲間いないと大変だろうな」

「一応、『永遠の初心者』を自称してる人ならいるけどにゃヾ(⌒(_*Φ ﻌ Φ*)_」

「中堅だと思うポンけど、まだ自信がないみたいだポン!」


経験が浅いナイトはクリフくんだけかと思ってたけど、梅先輩、菊先輩の話によると、中堅の人はいるんだ。にしても……。


「永遠の初心者を自称……? そんな方がいるんですか。どなたです?」

「まさに今、話し合いの最中やで」


菖蒲先輩のその一言で、そのナイトが紅央さんだってことをアタシは知った。

丁度今、LiEさんに質問されたことがナイト関連の知識に関わることだったみたいで、みんなに説明してるけど……。


「えっと……なんか凄く知識ありそうだけど、あれで中堅なの?」

「ナイトは知識だけあっても駄目じゃんよ」


ううっ、プリーストの知識すら怪しいアタシには、その時点で無理そうだわ……。


「プレイヤースキルが他職より高い水準で、求められるにゃ(=:ω:=)」

「本人がさっき、『イレギュラー対応苦手』って言ってたよぉ~……」


イレギュラー……変則的なことへの対応?


「あれかな? 敵がランダムで行動する場合の対応とか」

「ノンノン。ナイトにとってそれは、想定内でース」

「この場合は蘇生復帰みたいに、不測の事態への対応だポン!」


ええ……想定内の範囲が、すっごく広くない?


と、丁度その頃、地属性選抜チームの戦略が決まったみたいで、各自武器編成の詰めに入った。


「ええと、基本武器がこれとこれで……対策武器がこれと……うーん……」


そりゃ悩むわよね。戦闘中は装備変更できないし、このゲームは戦闘時に武器を8つまでしか持ち込めないから、ここで何の武器を持っていくかが、かなり重要なんだもん。


「みんな、ちょっと待っててくれるぅ?」

「構いませんけど、どうしたんですの?」

「ちょっと師匠に相談してくるわぁ」


LiEさんの問いにそう説明すると、他の地属性選抜メンバーも納得したようで、快く待つ旨を伝える。

紅央さんはお礼を言うとすぐ、個人チャットで連絡を取ってた。その師匠はもう観戦エリアに来ていたみたいで、辺りを見回して探し始める……。


あ、あの人かしら、師匠って。


予想外にかなり小柄な性別2ナイトさんが、紅央さんに向かって手を振ってたので、すぐ分かった。紅央さんもそれに気づいたようで、駆け寄ってく。どんな話し合いするのかしら……?


ちょっと気になったから、アタシはギリギリ会話が聞こえる程度の距離に、そっと移動した。


「師匠~! 今回のボスに挑む編成を、見てほしいんですぅ~!」

「あらまぁ、もう自分で編成できるでしょうに」


そう言いつつも、紅央さんが開いた武器編成画面を、真剣な表情で見つめるお師匠さん。


「変なところとか、ないですぅ?」


なるほど自信がないみたいで、紅央さんはオドオドしつつ回答を待ってた。


「……所持武器一覧も見せてもらえますか?」

「は、はいぃ」


わぁ……そういうところも見られるんだぁ。


「…………ふむ、ちゃんと敵のギミックを理解して組めてますけど、惜しいですね」

「ひえっ! ど、ど、どこが駄目でしたぁ!?」

「駄目ではないですけどこれ、ナイトも敵のHPを積極的に削る作戦ですよね?」

「そうですぅ~!」

「ではここの、後列移動武器を『ダムダムの実』にした理由は何ですか?」


怒るわけでも、けなすわけでもなく、ただその武器を選んだ理由を問う様子は、確かに指導に慣れた師匠なんだなって思った。


「えっ? えっとぉ……自己防御バフ延長武器で後列移動する方が、安定すると思って……。ダムダムの実なら地属性魔導具だから、攻撃時の属性威力UPに繋がるし……」


そう言えばこのゲーム、編成する武器の属性が1つに偏ってる方が、攻撃にしろ回復にしろ威力が増すんだっけ?

だったら普通は、敵の弱点属性の武器を優先的に入れて、ヘイト取りやすくするわよねぇ?


「そうですね、おおむねその考えで合ってます。でもパーティ防御バフ延長武器に斧を選んだなら、自己防御バフ延長武器は『ベルファクトコア』を選ぶ方が得じゃないかしら?」

「ええっ、闇属性のですぅ?」


にも拘わらず、あえて闇属性の魔導具に変えた方がいいって答える理由が、アタシには分かんなかったけど、


「えっと、えーっと……ああん、やだぁ、そっかぁ!」

「気づいたようですね。他は大丈夫でしたよ」

「師匠、ありがとうございますぅ!」


紅央さんにはお師匠さんの言った意味が分かったみたいで、すぐに編成を変えてた。


「じゃあついでに聞いてみましょうか。

この斧でパーティ防御バフを延長した直後に、蘇生復帰された場合、どう対処しますか?」

「それは勿論、すぐにパーティ防御バフをかけ直して……」

「その後は? この斧の再使用可能時間(リキャストタイム)は36秒なのに対して、パーティ防御バフの効果は25秒ですよ? 詠唱時間1秒+差の11秒をどう埋めますか?」

「ひゃっ!?」


これを聞いて、アタシも思わず顔が引きつった。


蘇生復帰ってことはまさに、紅央さんが苦手って言ってたイレギュラー対応の1つに当たるわけだけど、つまりこのお師匠さんは、「イレギュラー対応が必要な場合のことも、事前に想定しなさい」って言ってるわけよね?


一流のナイトの人って、そんなことも想定しておかないと駄目なの!? どんだけ先読みが必要なのよ……。


「ええっと……延長しない代わりに、パーティ防御バフを2回かける、とか……?」

「そうですね、それは1つの手です。

でもその剣盾の再使用可能時間(リキャストタイム)も27秒ですから、詠唱時間1秒+差の2秒、再使用できませんね? それに攻撃できない武器を2回使うわけですから、ヘイト獲得面での不安もあります」

「あう……そうなると、分かりません……」


紅央さんはしゅんとなって、お師匠さんの顔色をうかがう。お師匠さんはにっこり笑って、説明を続けた。


「今回の敵のギミック的に、味方が戦闘不能になるとしたら、どの場面の確率が高いと思いますか?」

「えっ? それは勿論、火力職が列避けに失敗した時か、補助職が列攻撃受けに失敗した時だと思いますけど……」

「ではプリースト目線でその後、どの場面で味方を蘇生するのが安全だと思いますか?」


アタシは蘇生武器持ってないんだけど、もし持ってたとしたら……「蘇生直後に敵の攻撃が来ないタイミング」が安全よね……? ってことは……


「その後は……全体攻撃が来ない時……?」

「そうです。そしてナイトが近列攻撃または単体攻撃に対処している間であれば、味方を守る必要がない……つまり、すぐにパーティ防御バフをかけ直す必要もないんです」


そこまで説明を聞いて、ようやくアタシにも意図が分かった。


「そっか……状況によっては、わざとパーティ防御バフをかけ直すタイミングを、遅らせてもいいんですね!」

「ふふっ、頑張ってらっしゃい。色々な場面を事前に想定できさえすれば、あなたならもう対処できます」

「ああん、師匠大好きです♡ 行ってきます!」


紅央さんはお師匠さんを抱きしめてから、待っててくれてた地属性選抜チームに合流して、観戦エリアを出る。

序盤こそ緊張してる様子だったけど、見事な立ち回りで味方を守り切った彼女を見たアタシは、きっと彼女もまた、一流のナイトの1人になれるだろうなって確信した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。