スカオー語を解する、マジシャン
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第3章ep.37 アイサイドE、F までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
その日の夜、アタシたち花図鑑は適性者ギルドにある机と椅子の一部を占領し、スカオー語のスクショとにらめっこしていた。
というのも、昼間の湖沼地帯(昼)での装備集め中に、スカオー語で書かれたエリアチャット履歴が見つかったからなんだけど……。
「ちょっとこれ、無謀すぎませんか……?」
事前にLiEさんから「文字の対応表」を貰っているとはいえ、これそのものが「アルファベットのAは、スカオー語でこんな形です」みたいに、文字の形を説明したものだから、具体的な文字の形を想像しにくくて、なかなか進まないのよね。
「やっぱりあの時、英語の翻訳文も貰っとくべきだったねぇ……」
向日葵先輩は誰にも聞かれないように、そう呟いた。
「え、でも英語……誰が読むんです?」
「百合が読めるし、話せるから余裕だよ。米国籍だからね」
「えっ、そうなんですか!?」
「イエース! 任せてくだサーイ!」
てっきり普段の話し方は、選んだ「カタコト2」ボイスのせいだと思ってたけど……まさか本当に外国人だったとは。
「ただ百合は日本語訳が苦手だから、そこはみんなで補助する感じになるね」
「じゃあ、一旦英語にさえしてしまえば、すぐ読めるんですね?」
「英語にすればね」
確かにそこが、一番の難問かぁ……。とはいえ、諦めるわけにはいかないから、
「おっしゃ、気張ってこう!」
アタシは自分で自分の両頬を軽く叩き、気合を入れ直した。
「遅くなり申し訳ございません。解読のお手伝いに参りましたわ」
と、その時LiEさんが約束通り、解読作業に加わるため来てくれたので、アタシたちはほっとしたけど、先輩たちはすぐに表情を引き締めた。
そっか、ここからは花図鑑として対応しないとだもんね。
「感謝。早速求、英文翻訳」
菖蒲先輩の言葉に、LiEさんは意外そうに首を傾げた。
そういう仕草を見ると、見た目通り子供っぽく感じるけど、LiEさんって言葉使いがすっごく大人びてるのよね。
「英文……ですの? 日本語文ではなく?」
「あっと、それなんだけど、実は……」
さすがに花図鑑としての話し方だと、表現が固すぎるから、アタシが代表して細かい説明をする。
「確かに今後のことを考えますと、英文翻訳の方がよいですわね。では、そのようにいたしますわ」
LiEさんはすぐに納得し、アタシたちが見せたスカオー語のスクショをしばらく眺めてから、口を開いた。
「では最初から、英文翻訳でまいりますわね。まず1文目を……。
Hey, did I keep you waiting?」
「……えっと、ごめん。どこまでが1文目なの?」
「これがクエスチョンマークを示すスカオー語ですので、ここまでですわ」
「それもスカオー語なんだ……」
いやもうほんと、これをスラスラ読めるなんて、どんだけ貴重な存在なのよ?
「次は2文目。ここからここまでですわ。
My schedule wasn't finished, so it's already this late.」
アタシたちはこの英語翻訳文を、ひたすらスクショしていく。そのうちに大文字と小文字でも、微妙に文字の形が違う時があるのに気づいた。
「ってことは、これは数字の3を表すスカオー語なのね?」
「ええ、その通りですわ」
「問。之、大文字Wで正?」
「流石ですね。合ってますわ」
こんな調子でどんどん英文翻訳してくれたので、スムーズに作業は進んでいった。
「では最後の1文です。
Don't talk too much there, use group chat.」
「ん? グループチャット?」
さすがに簡単な英語なら、アタシでも少しは分かったので、思わず呟いてた。
「ええ、確かにそう書かれていますわ」
そこで何かに気づいたのか、梅先輩が慌てて半透明の画面を開いて操作する。
「翻訳感謝。其グルーブ、多分之」
そうして梅先輩がアタシたちに見せたのは、グループ検索の画面だった。
元々知ってる、各職ごとのグループなんかとは明らかに違う、スカオー語でグループ名が書かれたものが表示されてた。
「いつの間に……!」
普段グループ検索なんかしないから、全然気づかなかったわ。
「Upapen Gathering……!」
LiEさんも驚きを隠せないまま、翻訳する。
「え、グループ名にウパぺんって付いてるの!?」
「ええ。日本語ですと、『ウパぺんの集い』といったところでしょうか……」
LiEさん自身もグループ検索画面を開きつつ、そこだけ日本語に翻訳してくれた。
つか、ウパぺんもグループ作れるんだ。これ見る限りだと、もう7人……いや7匹かしら? とにかく、それだけ所属してるんだけど!
「……残念ですわ」
「どうしたの?」
「たった今『ウパぺんの集い』に、グループ加入申請をしてみましたけれど、すぐに拒否されてしまいましたわ」
「ちょ、ちょっと行動が早すぎない!?」
さすがにそれは、予想してなかったわ。
「ここに加入できれば、ウパぺんにスカオー語の発音を教えていただけるかもしれないんですのよ!? それはもう、加入申請するしかないでしょう!?」
「いやまあ、そうかもしれないけど!?」
そのウパぺんに扮してるのがアイなんだろうと分かってて、それでも入ろうとするところが凄いわ。
「協力感謝。本日作業終了」
「あら、日本語訳はよろしいのです?」
「是。明日、地属性選抜にて戦闘。選抜候補、休息要」
そっか、LiEさんは地属性選抜候補なんだ。じゃあ夜更かしは駄目よね。
「ここまで手伝ってくれたから、後はアタシたちだけで大丈夫よ。気にせず休んでね!」
そう言うと、さすがにLiEさんも納得したようで、
「……かしこまりました。皆さんも無理をなされませんように」
深々とお辞儀して、個人部屋へとワープしていった。アタシたちも花図鑑部屋にワープする。
「百合、ここからはアンタの出番だよ! 夜露死苦!」
「オーケーですヨー!」
「ふえぇ……あたしも、にほんごやくをてつだうねぇ~……」
「じゃあ、にゃたしはこの翻訳文を元に、スカオー語1文字ずつの対応表を作るにゃ(=^・^=)」
「ポンも手伝うポン!」
「よっしゃ! みんな頑張るで!」
何とか7人で力を合わせて、作業が完了した頃には、夜中になってた。




