病み属性の、プリースト
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第3章ep.37 アイサイドE、F までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
朝の騒動がおさまったその後、アタシはその日の装備集めパーティと合流したら、珍しく他のプリーストと一緒なのに気づいてびっくりした。
このゲームって戦闘バランス考えるとどうしても、同一職業の人とパーティ組むことがほぼないのよね。
「よろしく!」
「よろしくネ」
アタシが挨拶すると、その普通の事務員さんっぽい服装のプリースト……有紗さんは、ヤンデレボイスで控えめな挨拶を返した。
さて、今日のメンツだとこれ、誰が主に敵を倒す感じなのかしら?
「アタシが地でいくね」
「……え、有紗さん!?」
最初は耳を疑ったけど、今回のメンツ、他の3人は全員、全職ガチャの方だったので、妥当といえばそうなのかしら?
しかも有紗さんは地属性特化のプリーストってことだったので、確かに湖沼地帯(昼)では有利だった。
「装備集めなら、安心して殴れるわ」
心なしかウキウキしてるみたいだけど……プリーストがメイン火力って、聞いたことないわね……?
半信半疑のまま、アタシたちは湖沼地帯(昼)に足を踏み入れ、目的の敵シンボルと接触する。
アタシたちが援護武器を有紗さんに向けて使うと、
「雑魚をツブすよ!!」
「はっ!?」
「ひえっ!?」
「うええ!?」
途端に有紗さんの雰囲気がガラリと変わり、魔法防御力依存で効果を発揮する、地属性の全体攻撃魔導具を敵に向けた。
無数の赤い石つぶてが敵に降り注ぎ、予想以上に強力な効果を発揮して、敵が一掃される。
「殴りプリのアタシには、物足りなかったね」
「あっははは! それいいねぇ!」
ちょっと怖かったから、顔が引きつってる自覚はあるけど、間違いなくこれは効率いいので、アタシは誤魔化すように笑って応えた。
これが殴りプリースト……初めて見たわ。プリーストって、こんな攻撃力出せたのね……。
「ほら、次行くよ!」
同じく引き気味の他のメンバーを引っ張って、アタシは次の敵に接触する。ほんと面白いくらいバタバタ雑魚敵が倒れるのね……。
とここで、ついにレア敵と遭遇した。さすがにこれは気合入れないと駄目かしら?
「物理と魔法でいくワよ!!」
そんなことを考えつつ、これまでと同じ援護武器を有紗さんに向けて使ったら、有紗さんは地属性の槍をレア敵に向かって投げつける。
「うわ、それ何気にスコアアタック用のデバフ武器!」
アタシには分からなかったけど、他のメンバーのその呟きで、かなり良いものだってことは分かった。有紗さんがクリティカル率UPの魔導具を使っている間に敵が攻撃してきたので、アタシは慌てて回復を挟む。
「破壊してあげるわ!!」
同じ魔導具を使ったとは思えないほどの大ダメージを与え、雑魚2匹はこれで撤退した。レア敵も瀕死になってるじゃん……!
残ったレア敵が有紗さんを攻撃しようとしたけど、彼女はこれを守護技槍でやり過ごし、大鎌攻撃でやり返して撤退させた。
「すごっ!」
「フフフ……これぞ殴りプリの醍醐味だよ」
そう言って有紗さんは、本当に生き生きとした表情を見せた。
プリって回復するのが主な仕事だとずっと思ってたから、こういうの見ると色んな戦い方があるんだなって思うわね……。
「でもね、プリーストの醍醐味はそれだけじゃナイんだよ?」
「それはやっぱり、回復でみんなを支えるってこと?」
「そうそう……みんなの生殺与奪権を、この手に握ってるって感覚がイイの……」
聞かない方が良かったかもしれない……。さすがヤンデレ、なかなかに危ないわ……!
「今回は、ペンタスさんが生殺与奪権握っててイイよ」
「あ、あはははは……ありがとう……?」
というわけでアタシがメインで回復係をすることとなり、ガンガンクエストをクリアしていった。
◆◇◆◇◆
「ってことがあったんですけど……」
「それは……ほんっま、お疲れやで」
アタシがそう報告すると、菖蒲先輩はなだめるように、ポンポンと肩を叩いた。
「まあでも実際、それと同じ意見のプリーストは結構いるけどね」
「え、そうなんですか!?」
向日葵先輩が苦笑しつつ言った言葉に、アタシは驚く。
そっか……有紗さんが特殊ってわけじゃなかったんだ……。
「もしかして、藤先輩もそんな……?」
アタシの問いに、藤先輩がにっこり笑って、
「いい……よぉ~……」
と答えたのが、何気に怖かった。
え、あれ、これ私がプリーストとしておかしい方?
「殴りプリは時と場合をちゃんと考えてる人がほとんどだから、大丈夫だポン!」
次の日の午後、その言葉通り、三段渦紋亀と真面目に戦った彼女を見てアタシは、有紗さんってあの性格ですごく損してるんじゃないかと思った。




