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サ終ゲームのリスタート side story ~新米花図鑑の人物分析結果録~  作者: 橋 みさと
第3章 キングドロセラに勝つまでの記録
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全体を取り仕切る、ナイト

本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第2章ep.29 アイサイドC、D までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。


未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。

「うーん、見つかんないなぁ。絶対どこかの討伐エリアにいると思ったんだけど……」


それは、キングドロセラ戦から一夜明けた早朝のこと。

敵との戦闘にならないよう、森林地帯(昼)と山岳地帯(昼)を慎重に見回ったけど、探していた人物が見つからず、丁度適性者ギルドに戻ってきた時のことだった。


今回の見回り当番も外れかしら? いっそ、もう危ないことしてないならいいんだけど……何せあの子だからなぁ……。


「おっ、今日の当番はペンタスさんかい? 早いのにありがとう」

「Rockさんおはよう! いいのよ、アタシたちが勝手にしてることだし」


ちょっと眠そうなRockさんに、アタシはそう挨拶を返した。


実はアタシたち花図鑑が普段どんなことをしてるかは、Rockさんには話してあるのよね。

さすがに「全体を取り仕切ってる人だから」っていうのもあるけど……。


「それよりお仕事、大丈夫です? 昨日も揉め事解決に呼ばれてましたよね?」


Rockさんは立場上、全体の運営調整もだけど、どうしても起こってしまうプレイヤー同士の揉め事も解決しなきゃなんないのよね。


つまりアタシたちが普段やってるのは、「表に出てないお悩みやお困りごとの解決」で、Rockさんがやってる「表に出てる揉め事解決」とは表裏一体だから、お互い協力してるってわけ。


「向日葵先輩が、手が回らないようなら探索エリアに向かう時のパーティ編成を考えるの、花図鑑でやってもいいって言ってましたよ?」

「本当かい? そりゃ助かるよー。早速今日の分からお願いしてもいいかな?」

「勿論ですよ。今すぐ連絡しますね!」


と、丁度それについて連絡し終わったその時。視界の隅で、見覚えのある大柄のプリーストさんが、血相を変えて救護室の中に駆け込む姿が見えた。


「……! くろん!!」


あちゃー……、また行き違ったのね。そうなる前に、止めてあげたかったんだけどなぁ……。


アタシとRockさんは顔を見合わせ、急いで救護室に向かうと……HP1状態でチャット画面を開いたまま、ベッドに倒れ込んでるくろんさんに、ジャスティアさんが単体回復を施してるところだった。


「うっ…………ティア……?」


良かった、発見がかなり早かったみたいね。

目を覚ましたくろんさんが、すぐにベッドから身を起こしたのを見て、アタシはホッとした。


「最近何か、1人でコソコソやってる気はしたけどよ……」


けれど次の瞬間、いつも咥えてる小枝を左手で外したと思ったら、くろんさんの進路を塞ぐように、ジャスティアさんの右手が激しく壁を叩く、ドンッという大きな音が響き渡る。


「どういうことだよ、これは?」


うひゃあ、声は押し殺してるけど、こいつの激おこ壁ドン、マジで怖っ!


「はいストップ。気持ちは分かるけど、そんなことしたら泣いて、聞きたいことも聞けなくなっちゃうよ?」


Rockさんが優しく声をかけながら、ジャスティアさんの右手首を背後から掴むと、彼はハッとして、


「わりぃ……怖がらせた」


小声ながらも案外素直に謝って、腕を下ろした。うーん、さすがみんなのパパ。

一旦冷静になるためか、ジャスティアさんは2mくらい離れた隣のベッドに座って、小枝を咥え直した。Rockさんは2人の間となる位置に立つ。


「それで、どうしてこうなったのか、2人とも教えてくれるかな?」

「俺はくろんに呼び出されただけだから、何も知らねぇぞ。ほら」


と言って半透明の画面を開き、たった一言「たすけて」とだけ書かれた個人チャット履歴をアタシたちに見せる。


「これだけでよく、見つけられたねぇ」

「無茶ばっかりする奴だから、何となくな」


それよりアタシが気になったのは……。


「あんた相互フレンドになってるの、くろんさんだけなの? いくら何でも少なすぎるんじゃない?」

「えっ……!? そうなの、ティア……?」

「い、いいだろ別に」


そういえばこいつ、「よく知りもしない女の個人部屋に自由に出入りできるようになったら、色々まずい」とか言って、色んな人からの相互フレンド登録を断ってるんだったわ。


それってつまり……くろんさんだけは、OKしたってことよねぇ~。


「じゃあ、くろんさんから教えてくれるかな?」

「う……はい。ええと……実は……」


くろんさんの話をまとめると、毎日、早朝1人で探索エリアに向かい、討伐ボーナス目当てでレア敵探してたって言うんだから、まさにアタシたちの予想通りのことしてたみたいね。


「森林地帯(昼)は余裕だったし……、山岳地帯(昼)も案外いけたから……、湖沼地帯(昼)も頑張れば行けるかしらって思って……試しに……」

「えっ、湖沼地帯(昼)って……昨日のボスクエストで解放されたばっかりのエリアじゃん!」


さすがにそこは、探さなかったわ。ほんと、危ないことしてたのね……。


「くろんさんは火属性特化だろう? 湖沼地帯(昼)だと、属性相関の関係で不利なの知ってるよね?」

「はい……なので1回だけ雑魚敵で試そうと思って……。そしたらその1回目で、レア敵に遭遇して……リタイアが間に合わなくて……」


そのまま戦闘不能になって、1人だから即全滅扱い、救護室に飛ばされたってわけね。

うわぁ、ジャスティアさん無言で聞いてるけど、こめかみに青筋立ってる。まあ当然か。


「アタシと何日か前に、救護室ですれ違ったわよね? もしかしてあの時も、全滅後だったの?」

「あ……あれは違うわ……。ここならHP自動回復のスピードが2倍になるから、休憩に使っていたの……。さすがに全滅は、今回が初めてよ……」


まあだとしても、危ないのに変わりはないんだけど。


「彼の怒り具合だと、もしかして事前にソロ討伐、反対されてたんじゃないかい?」

「……はい。でも、どうしてそんなに反対するのか……分からなくて……」


正直あの怖さは、実際に誰の助けもない状態で戦闘不能になった人にしか分かんないとは思うけど……。


「反対した理由は聞いたかい?」

「とにかく駄目、としか……。だから、そんなに深刻にとらえてなかったわ……」


こいつさては、自分が戦闘不能になったことあるって、隠してるわね?

アタシが探るようにジャスティアさんの方を見たら、案の定目をそらした。向こうもアタシのこと、覚えてるみたいね。


「じゃあ、それでも自分が行きたい理由を、彼に話したかい?」

「……いいえ」


……なるほど、要するに……。


「君たちはもう少し、お互い何でも話せるようになろうか。そうすれば今回のことは、起こらなかったんじゃないかい?」

「うう……はい」

「…………俺も悪かった」


まさに父親といった感じの表情で、Rockさんはくろんさんとジャスティアさんの肩を、優しく叩いた。

うーん、さすが。


「何でも隠し事しないのが、夫婦が長続きする秘訣だよ」

「べっ、別に俺たち、そんな仲じゃ……」

「ふう、ふ…………ええっ!?」

「……んん?」


くろんさんがRockさんの言葉に過剰反応した違和感を、ジャスティアさんは見逃さなかった。

ちょっと前の彼女なら、「夫婦じゃないわ」とか言いそうなところよね。


顔は兜で隠れて分かりにくいけど、耳が赤くなってるのに気づき、


「へええ?」


少し機嫌が直ったのか、ニヤリと笑う。


「この数日で何があったか知らねぇが、やっとそういう感情を持ったか。祝杯をあげたい気分だぜ」


いや、あんたまだ飲酒年齢届いてないでしょ?


「それより、くろんさん……戦闘不能になってからジャスティア君を呼ぶくらいなら、初めから『2人でレア討伐行きたい』って言えば良かったんじゃないかい?」

「あっ……そそ、それは……山岳地帯(昼)が解放された時に考えたんだけど、その……さ、誘いづらくて……」


あ、地味にダメージ受けてる。


「元々仲が良いのにかい?」

「え……と……確かにティアは、学校の同期だけど……リアルではあまり話せなくて……仲が良いのはゲーム内だけって言うか……うう……」


ちょっと言いづらそうにしてたけど、この追及は逃れられないと思ったのか、くろんさんは意を決して口を開いた。


「この前の女子会で、その……ティアには心に決めた子がいるみたいって聞いたから……そ、その子に悪い気がして……!」


次の瞬間、ジャスティアさんはガクッとし、状況を正確に把握したらしく、頭を抱える。


「何でそんな、くそめんどくせぇことに……。お前も女子会参加者だろ、くろんに何吹き込んだんだよ!」

「あ、アタシのせいじゃないわよ! ……ていうか今の、ある意味くろんさんからの告白じゃん! 本人にその自覚なさそうだけど」


くろんさんに聞こえないよう、小声でそんなことを話してたら、


「でも、ティアには相互フレンドが私しかいないなら……もしかしてその子……」


くろんさんはまっすぐジャスティアさんを見て、ついに切り出した。

今、お互い唾を飲み込む音が聞こえたわね。


「リアル世界の子……?」

「………………ま、まあ…………。そこはニブいままかよ……」


ちなみに後半部分は、近くにいたアタシだから聞こえた程度の呟きだった。


「と、とにかく、くろんが変な気づかいする必要はねぇんだよ!」

「そうなの……? 分かったわ……」


つか、こいつがさっさと言っちゃえば、秒で解決するのに……案外シャイだったのかしら?


「いいなぁ、お父さんだって若い頃は……ツンデレのママに苦労させられたっけ……」


何か1人で頷いてるけど、昔のRockさんかぁ……ちょっと興味あるわね。


「そうだ、お父さんいいこと思いついたぞ。ペンタスさん、ちょっとお願いが」

「あ、はい? ……ああ! 分かりました!」


2人に聞こえないように耳打ちされた内容を、アタシはすぐさま花図鑑のグループチャットに伝達した。


「で、今回の件に対する対応だけど……くろんさん、指定時間外に討伐エリアに行くの禁止で!」

「えっ!?」

「ただし、ジャスティア君の許しが出たら、いいよ」


なるほどぉ……Rockさん、うまいこと2人で話し合うように誘導するわねぇ。


「ティア……」


おおっとここで早速、無自覚の上目遣い攻撃よっ!


「だ、駄目に決まってるだろ!」


むむっ、動揺はしてるけど効かないか。


「だいたい普段から無理しすぎなんだよ! この前ガッツ受けして気絶してたし、リアルは月1くらいで学校休んでるじゃねーか」

「り、リアルの方は不可抗力って言うか……うう……心配させてごめんなさい……」


まあでも、後は2人次第ってところかしらね。


「じゃ、お父さんからは以上。今日も装備集め頑張ろうか!

特にジャスティア君、普段からあまりやる気ないらしいけど、水属性選抜候補なら、湖沼地帯(昼)でしっかり装備整えてくれないと困るよ。くろんさん、しっかり見張ってね!」

「……はっ?」

「えっ?」


と、その時丁度、今日の装備集め用のパーティ編成がワールドチャットで発表された。


「……」


それを見たジャスティアさんは、くろんさんの手を握り、返事も聞かず歩き出す。


「えっ? えっ?」

「今日明日のパーティ、俺とくろんで全職ガチャ3人を支える編成になってやがる。急がないと終わんねーぞ」

「そうなの? 偶然ね」


勿論、こっちでうまく組ませてもらったわ! うち1人は地属性武器持ってる梅先輩だから、監視もばっちりってわけ!

まあ、ジャスティアさんには、バレてるだろうけど。


「あ、あの、お騒がせしました!」


くろんさんはそのまま手を引かれ、救護室を後にした。


「やれやれ、これで一件落着かな? 手のかかる子は可愛いねぇ」

「お父さん、いつもお疲れ様」

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