チャンスを逃した、レンジャー
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第2章ep.29 アイサイドC、D までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
「んもう、何で誰もスクショ撮ってくれてないんだよぅ!」
キングドロセラとの戦いが終わったその日の夜、たまたま適性者ギルドを通りかかったアタシは、誰かがそう叫びながら地団駄を踏んでいるのに気づき、足を止めた。
あれは確か……Dylicaさん? あの戦闘後、疲れ果てて寝落ちしてたけど、もう起きたのね。
そのすぐ側では鷹影さんが、困ったような顔で頭を掻いてて、U-berryさんが必死でDylicaさんを慰めてた。
おっと、これは何かお困りごとかな?
「どうかしたの?」
早速話しかけたら、DylicaさんがU-berryさんを押しのけ、すごい勢いでアタシに駆け寄ってくる。
「ペンタスお姉ちゃん、ぼくとウパぺんのツーショット、撮ってない!?」
「へっ? ごめん、何のことか全然分かんないんだけど……」
するとアタシの返事に失望したらしく、Dylicaさんは目に涙を浮かべて黙ってしまった。
ええっと……。
「すみませんペンタスさん。実はDylica君、以前からウパぺんの大ファンなんですけど……」
そう言えば普段から、ウパぺんを模したアバターを身に着けてるわね。
「戦闘後、ウパぺんが活躍を称えに来てくれたことを話したのですが、『どうしてその時起こしてくれなかったのか』と泣き出してしまいまして……。面目ございません」
U-berryさんの説明を、鷹影さんが引き継いだ。
あ~、そんなことがあったとは、確かに報告会で聞いたわね。
「鷹影お兄ちゃんも、Rockパパも、Ruyお姉ちゃんも起きてたから、直接お辞儀してもらえたんでしょ!? ぼくはゴールデンウパぺんに頭撫でて貰ったって聞いても、その時寝てたから全然分かんないもん!!
それならせめて、スクショ残してくれれば良かったのに、ユウお兄ちゃんも、たろ吉ママも撮ってないって……。折角、ゴールデンウパぺんが褒めてくれたのに……うわぁぁぁん!!」
なるほど、ゴールデンウパぺんとの千載一遇のチャンスを逃したと知って、泣いちゃったのか。とはいえアタシ、その現場をそもそも見てないからなぁ……。
いや……待てよ?
「Dylica君、アタシもスクショ撮ってる人がいないか探してみるから、泣き止もっ?」
「……ほんとに?」
「ほんと、ほんと。まあ任せときなって!」
アタシはDylica君と目線を合わせてそう約束すると、すぐに花図鑑のグループ部屋に向かった。
◆◇◆◇◆
「……というわけで、先輩方のお力を借りようかなと」
「あらら、大変だったにゃヾ(⌒(_*Φ ﻌ Φ*)_」
「まあでも、アタイらにすぐ話を持ってきたのは正解だったね」
「ほんまやな」
「えっ? それってどういう……」
アタシが問いかけると、先輩たちはニヤリと笑って……
「任せてくだサーイ!」
何とそれぞれが、色んなスクショを見せてくれた。
「ええっ!? まさか先輩たち、全員スクショ残してたんですか!?」
「あれは残さない方が損失なくらい、尊いシーンだったポン!」
「みんな……可愛いものだぁいすき……」
みんなウンウンと頷きあってる。そんなに?
早速アタシは、そのスクショを1枚ずつチェックしていった。
これ……Dylicaさんが言ってた、寝てる時にゴールデンウパぺんに頭を撫でられてるシーンは勿論、抱っこしてるシーンや、おねだりシーンまで全部あるじゃん!
そして……確かにこれは、鼻血が出そうなくらい尊い……!
「たださー、当たり前だけどそれ、全部盗撮やん?」
「で、ですよね……」
間違いなくDylica君が欲してるスクショの数々ではあるけど、どうしたもんかしら?
「だからいっそ、取引ってのはどうだい?」
「取引? Dylica君とですか? 撮ったことを黙っててほしいってのなら分かりますけど……」
そもそもそんなに難しいことは、Dylica君にできそうもないけど。
「もっと簡単なことでース!」
「今後は堂々とスクショ撮らせてほしいのと、可能なら希望者にもこれ配る許可がほしいってのはどうにゃすか(=`ω ´ =)?」
「……なるほど」
確かに事後承諾ならDylica君にも簡単だし、損がないし、これ見るだけで癒される人、続出しそう。
「可愛いもの×可愛いもの」は正義ね……。
◆◇◆◇◆
その後早速、アタシは大量のスクショコピーを携え、2人きりでDylica君に会うと、先輩たちの提案を話したうえで、サンプル1枚を提示した。
「ペンタスお姉ちゃん、これ……ぼくが探してたやつだよ!!」
「こういうのが他にもいっぱいあるんだけど、どうする?」
「うん、今後も撮っていいし、配っていいよ! だからそのスクショ全部、ぼくにちょうだい!」
というわけで、あっさり許可が貰えたので、これからDylica君の宝物になるであろうスクショの数々を、アタシは全部提供する。
Dylica君は大喜びし、鷹影さんやU-berryさんにも見せるため、走っていった。
「……ところであの後、鷹影さんからもツーショットスクショないかって問い合わせが来てるんですけど……?」
「さすが策士、抜け目ないにゃ(=`ω ´ )ノ」
「勿論あるで! そっちとはどんな取引しようかな~?」




