【鉄分】キングな核の調理法【豊富】
よしよし、いい具合に温まってるじゃあないの。
ワイバーンゆで卵を作ったときに使った鍋の蓋を開けて中身を確認する。入れたときと姿は変わらないが、立ち上る湯気が完成を物語っている。それを両手で掴み上げて深みがある大皿にそっと置き――そのままその皿を持ち上げ配信部屋へと向かった。
「お待たせ、言うほど待ってないよな?」
「オカエリー!」
「ぴぁー」
『待たせてるつもりなのか待たせてないつもりなのかどっちなんだよ』
『もうちょっとゆっくりでもよかったんやで』
『なんだその白い丸』
『流れからしてスライム系か』
『は?それもしかしてキングメタルスライムの核……!?』
「せやで」
お、流石に分かる人いるか。他のスライム料理と違ってこのキングメタルスライムの核は今のところ切ったりせずそのままの姿だもんな。
いつまでも持っているわけにも行かないので、机の上に置いたが、テーブルに着く前に手を離してしまい、ゴトンと皿が音を立てた。それが原因で机の上に座っていたオーロラがちょっと浮いた。
「ピャッ」
「ぴぁ?」
『オーロラちゃんの珍しい声』
『ジョージ、ありがとう』
「なんか知らんがどういたしまして?」
突然の音と浮遊感にオーロラは変な声が出てしまったようで、両手で口を抑えて顔をほんのりと赤くする。ロゼはロゼでケロッとしており、何してんの?的な鳴き声をオーロラに掛けた。ごめんてオーロラ、頬をポカポカされてもくすぐったいだけだけどごめんて。
「んじゃ改めて――こちらキングメタルスライムの核になりまーす。本当はキングスライム狙うつもりがなんか出た」
『なんか出たとは』
『そりゃおめぇなんか出たんだろうよ』
『あぁ、イレギュラーのボスだったのね……不幸だったな、キングメタルスライムが』
いや、不幸なのは俺の方では……?といったところであしらわれるのが関の山なのでスルーしておく。実際、俺からしたらまぁ珍しい食材という点では不幸ではなく幸運ではあったことは間違いないしね。
さて、このキングメタルスライムの核、高温で茹でた後に先程まで鍋の中で温めていたのだが――まだ完成というわけではない。これから最後の仕上げをしていくのだ。
まずは核にナイフを入刀していきます。
『え?切れるの?』
『メタルスライムの核は何もしないと並の包丁じゃ太刀打ちできないほど硬いままだけど、塩と一緒に茹でることで切れるようになるのだ』
『解説助かる』
「本当に助かる。おっとキタキタキタ!」
切れ込みを広げていくと、中からドロっとした白い液体が溢れ、皿にどんどんと溜まっていく。あれだな、フォンダンショコラをイメージすれば分かりやすいか?そんな感じ。ただ、違う点は溢れ出したコレはチョコレートのように甘いものではないということだ。
『キングメタルスライムの核って茹でたらこんなになるんやな……』
『え?その液体食うの?』
『あの、核も素材として使えるんじゃないんですか?』
「使える使える。ただ、食材にも使えるってだけ」
ちなみに素材として使う場合は普通に熱しながら叩けば変形していき、それを用いるらしい。
ではこのキングメタルスライムの核から溢れ出た液体をどのように活用していくか。まずは一口……え?オーロラもロゼも舐めてみたい?いや、この状態だとあんまり美味しくはないぞ?
「ナメタイナメタイ!」
「ぴぁ!」
『まぁまぁお母さん、こう言ってるわけだし』
「誰がお母さんだ。全く……後悔するなよ?」
仕方ないので、本当に一舐めだけ許可する。ロゼはスプーンを持って自分の口に運ぶことは出来ないので、俺が代わりに掬って与える。で、俺も一舐め。……うん、これは……
「オイシクナーイ」
「ぴぁー……」
「だから言ったのに」
『不味いの?』
「不味くはないけど鉄っぽさがかなり強いな。レバーどころか、血の味に近いレベルだ」
『なるほど、メタルスライム故か』
「で、ここから美味しくしていくって訳――あ、やべ色々足りないわ。取ってくる」
オーロラたちにはお口直しに包み蒸しを食べているように伝え、俺はキッチンから色々調味料と取ってきた後、配信部屋で核から出た液体の調理に入る。――おっと、一旦液体ではない方――核の外層に当たる部分を取り出し、避けていく。これも後で使うからね。
まぁ調理と言っても色々ぶち込んでいくだけなんだけどね?。まずはダイストマト缶を汁ごと中身を投入。ゆっくりぐるぐると回しながら馴染ませる。
「ジョージ、ツツミムシ?オイシイよ!お酒にも合う!」
「ぴぁー!」
「お?そうか?それじゃ俺も一口もらうか……」
オーロラ達が元気に勧めてきたので、それに乗って核の調理を止め包み蒸しを箸で切り分け、口にする。
なるほど、こりゃ美味い。ファイヤースライムのゼリー体で蒸されたことでキャベツの甘味がイャナ肉に伝わる。それだけでなくしっとりと加熱されたことでイャナ肉も固くなることはなくまた、旨味がしっかりと詰まってなんとも優しい味わいをしている。――日本酒じゃな?
そしてもちろんファイヤースライムのゼリー体も食べることが出来る。こちらもキャベツとイャナ肉、両方の風味が含まれ、これだけでも楽しめるものになっている。このゼリー体だけをご飯にかけてもいいかもな。
包み蒸しを堪能しきったら調理に戻ろう。
えーっと、次は……にんにくチューブに白ワイン――ちょっと余ってたやつ――とレモン汁とビネガーを加えて……
「オーロラ、ちょっとこれ温めててもらえるか?」
「ハーイ!」
ネイムル牧場ダンジョンで見せた温めるための魔法をオーロラに使ってもらい、その間に俺は取り分けた核の外殻を一口サイズにカットしていく。少し量はあるが……まぁこの程度問題ない。
『テキパキしてんなぁ』
『今まで酒飲み配信で料理を作ってきたんだろうし多少はね?』
『そういやほとんど手作りだったか』
「慣れよ慣れ」
カットし終わった外殻を液体にぶち込んで再びかき混ぜ――馴染んだところで今度はお湯で戻したファイヤースライム乾麺を入れてまた馴染ませれば――!
「はい、完成。えーっと、キングメタルスライムの核のスープパスタ的なやつ!」
「ワー!」
「ぴぁー!」
『キングメタルスライムの核のスープパスタ的なやつて』
『名前が長い』
『キンメタ核パスタでいいだろもう』
「採用」
はい、そうして出来上がりましたキンメタ核パスタ。見た目は当初の白さからトマト缶を入れたためにピンクっぽくなったな。
それじゃ早速いただくとしましょうか。ささっと深皿からそれぞれの皿に盛り付けてっと。あれ?オーロラにロゼ、一本しか食べようとしてないな?あぁ――最初の味のインパクトが強すぎたか。それでも拒否はせずまずは1本だけ食べようとしてくれる辺り、俺の調理を信用してくれているのだろう。
『見た目は……まぁ美味そうではある』
『問題は味じゃ』
「あれだったら俺が最初に食べるのもありだけど?」
「イヤ!一緒に食べる!」
「ぴぁ!」
別に毒を食らうわけでもあるまいし……まぁそういうのであれば止めはしない。フォークでスープがしっかりと絡んだ麺を巻き付けて一口。オーロラたちは一本をちゅるり。
「おぉ、イケるイケる」
「オイシー!」
「ぴぁー!!」
あれだけ主張が強かった鉄っぽさが鳴りを潜め、むしろ旨味よりのコクへと変貌しているな。トマトやレモン汁のお陰でさっぱりともしており、食べやすさすら感じる。その証拠にオーロラ達が口元を真っ白にさせながらもどんどんと食べ進めていく。そしてこれは……白ワインだな。
『はぇー美味いんか』
『俺も今度……いや、キングメタルスライムの核が手に入ったとてなぁ……』
『食材より素材のほうがいいだろ』
「そこは人それぞれということでね」
そう俺はつぶやき、白ワインを呷る。……あぁ、美味いなぁ。




