3-1 開祖
世間一般に広く知られている聖導教会の起源は美しいものだった。
聖導教会の開祖ヒュービックはこの大地を神より授かり、あらゆる厄災から人々を守るため、その生涯を霊峰の頂に捧げたと伝えられる、この大陸最大の賢人であった。
人類最古の記録は、ひとりの求道者について記されたものである。
その頃、世界にはただ海があり、海原には一体の山だけがそびえていた。
男はその頂で長きにわたり修行を重ね、ついに神の存在を見出した。
神は男の祈りに応え、山の周囲に雫を落とした。雫は大地となり、やがて広大な大陸となった。そして神はそこに人を生み、各地へと散らした。
男は生涯を終えるまで山頂に留まり、神より授けられた大地と人々を見守り、厄災を遠ざけるために祈り続けたという。
彼の名は、ヒュービック。
ヒュービックはある日、神託を受けた。
「この大陸が未曾有の混乱に陥った時、神は勇者を召喚し、この大陸を救うであろう。いずれ来る勇者を補佐し、この大陸を救うための組織を作るがよい」
こうして神と開祖ヒュービックを頂点とした組織が作られ、「聖導教会」と名付けられた。
そして後の人々は彼の名を取り、その山を霊峰マウント・ヒュービック、その大地をヒュービック大陸と呼んだ。
そして開祖ヒュービック没後より約二百年後、大陸には初めてひとつの巨大国家、ヒューディア王国が誕生した。ヒューディア王国はその首都を今でいうアルカディア王国中央を東西に流れるリアレンド川流域に定め、巨大で豊かな国を作った。そして初代国王には教会開祖ヒュービックの血を引くと言われた若者、ディアンが就いたが、その正確な出自や没年、没した理由なども不明だった。
そして初代国王から数えて五代目でディーンの血筋が途絶え、それをきっかけにヒューディア王国は五つの地域へ分裂し、その後に五カ国が成立した。ヒューディア国首都を含む中央地域にはアルカディア王国が、そして北には二十をも越える小国が分立して小さな王国を作っていたが、それを約百年かけて統一し、各地の小王国をまとめて独立したのが北のガルディニア帝国。そして東の平野が少なく国土の九割が山岳地帯となるヴァルディス共和国、共和国の南に広がる広大で標高が高い場所にある平な土地に誕生したナカーディア公国、そして王国と海峡を隔てた島に成立したのはアラディム首長国だった。
各国はそれぞれ独自の文化と産業を持つが、すべての国が聖導教会を国教とし、神と開祖ヒュービックを敬っている事は共通していた。




