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強くてニューゲーム

 本当は今日、学校を休みたかった。でも昨日、兄が誰に泣かされたってしつこかったから、もう立ち直ってますよと遠回しに伝える為にも、登校した。


 小夏はまだ来ていなくて、白葉ちゃんは他の人と話している。仮に白葉ちゃんが一人でいたとしても、私は白葉ちゃんを頼れない。


 席で伏せているすみちゃんの前の私の席を引き、同じように机に顔を伏せる。こんなにも気が重い朝は初めてだ。


 腕で耳が塞がれていて、指でつつかれる感触がして初めて、小夏が来ていたことに気づいた。


「小夏、おはよう」

「おはよー! 依吹……ち……。ど、どうしたんだ依吹っち! 目が真っ赤だぞ! よ、夜更かし……いや、依吹っち昨日ルイン返してくれなかったから違うな。……な、泣いた……のか? だ、誰に泣かされたんだ⁉︎」


 私は何も言わずにそっと小夏を抱き寄せる。


「私が悪いの」


 ああ、また、泣いてしまいそうになる。小夏の服を汚してしまう。


 少し顔を離そうと力を緩めると、逆に小夏が私の頭を力強く抱きしめる。


「悪くないぞ! 何があったか分からないけど、依吹っちは悪くないぞ!」


 ありがとう、小夏。でも、その言葉が今、私には救いにはならない。救いを求めるのもどうかと思うけど。


「うっわ⁉︎ どうしたの純蓮! 目真っ赤じゃん⁉︎」

「あ、うん、ちょっとね……。大丈夫だから……」

「全然大丈夫そうに見えないのだけれど」

「何か悩みがあるならあゆちゃん達に相談しなさい〜」

「大丈夫だから。放っといて」

「純蓮っちも泣いたのか⁉︎」


 小夏はまるで私を守るかのように、さらに身体を密着させた。


「え、なに、藍川も? 二人喧嘩でもしたの? てか二人個人で交流あったの?」

「藍川さんは関係ないから。いいから放っといて。一人にして。お願いだから」

「……あゆ、友美奈、行きましょう。誰にでも、そっとしておいてほしいときはあるわ。小夏さん、あまり純蓮にちょっかいかけすぎないようにね。依吹さん、気が晴れるといいわね」


 橋野さん達は学食は一緒に行こうと言い残して、離れた場所で会話し始めた。


「依吹っち、今日放課後空いてるか?」

「え? あ、うん」

「じゃあ遊ぶぞ! 辛い時や寂しい時ほどな、笑顔を作るんだぞ。一人で作るのが難しいなら、あたしが手伝ってやる!」

「……ありがとう、小夏」


◇◆◇◆◇


 放課後、小夏に連れられてゲームセンターに来た。


「依吹っち、あれやろう!」


 小夏が指したのは二人プレイができるリズムゲーム。


「うん、やろう」


 二人でフルコンボを目指して、何度も何度も叩いた。


「あぁ〜やっぱり鬼はむずいな〜」

「でも、クリアはできたよ。やったね」


 私が手のひらを向けると、小夏は笑顔を向けてその手を叩いた。


「じゃあ次はあれやるぞ!」


 小夏が指したのはレースゲーム。


「ドリフトってどうやるんだ?」

「アクセル踏みながらブレーキ踏むんだよ」

「おお〜! できた!」

「ナイス──て、ああ! 雷ずるい!」

「運の勝利だ!」


 そんな会話を繰り広げながら勝負を繰り広げた。

 その後もホッケー、シューティングゲーム、UFOキャッチャー、本当にたくさん遊んだ。


「楽しかったか?」

「うん。すっごく楽しかった!」

「あたしもすっごく楽しかったぞ!」


 ほんの少し気が晴れて、少し、語る余裕が生まれた。


「ねえ、小夏」

「どした?」

「もし、自分はこの関係に特別な感情はお互い存在しないって思っていたのに、相手はずっと、長いことずっと、特別な感情を隠していて、それに気付かなかったせいでずっと相手を傷つけていたら、どうする?」


 小夏はんーと唸って、少しして拳を前に突き出した。


「よく分からないけど、ぶっ壊すぞ!」

「えっ?」

「ゲームで言うところのリスタートボタンだ! 現実は都合良く全てを無かったことにはできないけど、でも、やり直せる部分はあるはずだ。ゲームでもアニメでも、二周目ってのはアドバンテージだ! 今のままがダメなら、強くてニューゲームするまでだ!」


 その言葉を聞いて、笑みが溢れた。真剣なアドバイスをもらうよりも、こんな感じで背中を押してもらう方がずっと心強い。


「ありがとう、小夏。今日、小夏と遊べて良かった」

「あたしもだ! また明日会おうな!」

「うん、また明日」


 ちゃんと、すみちゃんに向き合わないと。

14話『小夏と海』投稿忘れで抜けていました。申し訳ありません。

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