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手紙

 もうすぐバレンタイン。今年は何人に配ればいいのか不明だから、量を取るためにも手作りにしようと思った。中学の時は市販で済ませていたから、上手く作れる自信がなくて、すみちゃんを頼ることにした。


「ごめんねすみちゃん」

「ううん。そんなことないよ」


 流石に同じ物を渡すわけにはいかないので、私とすみちゃんはそれぞれ別の物を作る。

 すみちゃんの目があるから、安心して作れる。


「こんな感じ?」

「うん、上手。冷蔵庫で冷やさないとだから、その間部屋で休んでてもらっていいよ」

「すみちゃんは何作ってるの?」

「マカロン。せっかくだし挑戦してみようかなって」

「すごいね。マカロンって難しいんでしょ」

「うん。でも、もらったら嬉しいかなって」

「絶対嬉しいよ!」

「なら良かった」


 難しい作業だろうし、すみちゃんの気を散らせないよう、お言葉に甘えてすみちゃんの部屋に先に行かせてもらうことにした。


 正直一人で過ごすのは予定外で、ラノベを持ってくるのを忘れていた。

 取りに行ってもいいけど、それはそれで失礼だから、静かに座って過ごすことにした。


 ただ座っているだけも退屈で、偶に寝そべったりした。何度かゴロゴロして、ベッドの下に視線が移ると、ずらっと蓋が閉められたカゴが並べられていた。

 本棚を見る限りアニメとかそういう二次元趣味はないっぽいし、なんだろうと興味が出たけど、流石に本人の断りなしにベッドの下の物を触るわけにもいかないので、再び部屋で大して動かずゴロゴロと過ごしていた。


 限りなく床に近い視線を活かし、まるで動物になった気分で部屋の至るところに視線を配っていると、本棚の後ろから紙のようなものが見えていて、学校のプリントでも落として裏にいっちゃったのかなと思って、手に取った。


「手紙?」


 おそらく小学生くらいの時に書いたと思われる、バランスの崩れた文字で藍川依吹様と書いてあった。


 誕生日に手紙でも書いていてくれたのかなと思って、特に糊とかで止められていない封を開けて、中の手紙を読んだ。


◇◆◇◆◇


 …………形容し難い感情が湧き上がって渦巻いていく。

 驚嘆、後悔、懺悔、怒り、そして、納得。


 すみちゃんの今までの行動に、この手紙を読んだことで、パズルのピースが当てはまったかのように、どこか納得がいった。


 手紙の内容は、恋情、好意、愛情、嫉妬、独占欲、そして、感謝と謝罪だった。もし、この手紙に書いてある気持ちが今もすみちゃんの中にあるとしたら、私は今までどれだけ傷つけてきたのだろう。到底、私は私を許せない。


「ごめんねいぶ、喉乾いてな……い」


 すみちゃんはココアが入ったコップを二つとも落とし、真っ白なカーペットがココア色に染まっていくのを気にするそぶりもなく、目を見開いて固まっていた。


「すみちゃ──」


 すみちゃんはスリッパをココアで汚しながら、私の手から乱雑に、手紙が破れるのも気にすることなく奪った。


「すみちゃ──」

「どこから見つけたの!」


 初めて、すみちゃんの高く大きな声を聞いた。


「本棚の裏に……」


 すみちゃんは手紙を握りしめ、手首を額に当てながら、あの時の……よりによって……と呟いてゆっくりとへたり込む。


「読んだの?」

「……うん、ごめん。あのねすみちゃん、すみちゃんの気持ち──」

「帰って」

「えっ?」


 すみちゃんは小さく呟いた後、今度はしっかりと息を吸って、今日一番の声を、下を向きながら叫んだ。


「帰って!」

「でも──」

「いいから帰って! 早く帰って! ほんと、最悪……どうして……いぶなんて、大っ嫌い……」


 その言葉に何も言えず、すみちゃんに向けて伸ばした手を下ろし、ごめんと一言呟いて、泣いているすみちゃんを部屋に残して外へ出た。


 私にはこんなこと許されないのに、声こそでないものの、自然と涙が零れていた。

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