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知らない聞けない聞きたい

 週が明けた。教室に入るとすみちゃんの机周りが囲まれていたから、来てくれたんだと安心した。

 大澤さんにはふざけるなって言われたから何かあったんだろうけど、とにかく良かった。


「おはよういぶっちゃん」

「白葉ちゃんおはよう。大澤さんもう来てるか分かる?」

「別クラの友達と喋りに行ったよ。そんなことよりちょっと話したいことがあるんだけど」

「うん、いいよ」


 荷物を置いて、白葉ちゃんについて歩く。


「この中からさ、いぶっちゃんの小学校同じだった子いる? できればいぶっちゃんと接点持ってた子がいい」

「え?」


 白葉ちゃんからイムスタが開かれたスマホを渡される。


「な、なんで?」

「いいから。女子だけでいいよ。いたらその子のプロフ開いてスクショして」

「わ、分かった」


 白葉ちゃんが見守る中、私はスクロールとタップとスクショを繰り返す。

 時折顔が見える投稿をしている子もいて、懐かしいと変わったなを同時に抱く。皆結構派手に明るく成長しているから、あまり変わらないまま成長した地味な私見たらびっくりするだろうな。


「終わったよ。ちょっと顔とか分からない子は自信ないけど、顔分かる子は確実だよ」

「ありがとう。それにしても、仲良かったの?」

「うん。よく構ってくれて。皆一緒に遊んでたよ」

「へー。今は交流ないの?」

「そうだね。機種変して連絡先消えちゃったし。そもそも私、中学はあまり小学校同じ子がいない遠目の方に行ったから」

「そうなの? なんで?」

「なんて言えばいいのかな、なんか私がいるだけで皆遠慮しちゃうというか、取り繕っている空気を感じて、罪悪感からかな?」

「なるほどね〜」


 白葉ちゃんは若干ため息を吐きながら、壁にもたれかかる。


「そういえば、なんで小学校の同級生聞きたがったの?」

「まあね。それよりもすっちゃんとは今どんな状態なわけ?」

「とりあえず連絡すら取ってないよ。お互いが持っている問題をどうにかできるまでは距離を置いておくつもり。結局そこが解決しないとどうにもできないからね」

「その問題って?」


 言うかどうか少し悩む。私やすみちゃんが責められるかもとかそういうのは気にしていない。そもそもすみちゃんの問題については以前白葉ちゃんに相談しているから把握しているはず。となると、白葉ちゃんが聞きたいのは私の抱える問題になる。でも、言っていいのかな。白葉ちゃんからしたら、遠回しに小夏が原因って言っているように聞こえたりしないかな?


「警戒してる?」

「うーん。即答はできないかな」

「そっか。一人で解決できそう?」

「…………」


 多分白葉ちゃんは、今の答え次第で協力も放置もするよって意味なんだろうな。私は一人で答えを出せるのかな。


「……すみちゃんの問題は、私達の関係を、昔から親しいことすら隠すこと。私の問題は……私にとっての小夏の存在がなんなのか理解できていないこと」


 白葉ちゃんはしばらく黙った。目を見開くも閉じるも、息を大きく吐くも吸うもせずに、ただ口を噤んで立ったまま私を見ている。


「いぶっちゃんはすっちゃんにさ、距離を置く時なんて言ったの?」

「すみちゃんが私達の関係を公表するか、私が小夏をどう思っているのか理解できるまでは、お互い辛いままだから距離を置こうって感じかな」

「そ。いぶっちゃんはさ、こなっちゃんの事どう見てるの?」

「分からない。もちろん好きだよ。でも、友達かって言われると違くて、親友とも違くて、たぶん、もっとそういう言葉とは違う特別なんだと思う。だから分からなくて」

「そっか。じゃあ、もっとこなっちゃんの事理解してみてごらん。そしたら少しは分かるかもよ」


 小夏に関して気になる事はたくさんある。でも、小夏に聞くのは憚られて、小夏自身も話してこないから、どうにも気が進まない。


「白葉ちゃん、小夏と同じ中学なんだよね。小夏のこと教えてくれないかな?」


 白葉ちゃんは俯くと、首を横に振った。


「あたしが勝手に言っていいことじゃない。もしこなっちゃんが話したら、改めてあたしからも話してあげるよ。とりあえず協力ありがとう。すっちゃんの方はどうにかしてみるよ。力になれるとは思っていないけど。余計なことだけはしないように気をつけるから」


 白葉ちゃんはそう言ってさっさと進むと、途中で見つけた別クラスの友達に話しかけにいっていた。


 小夏のことで知っていることなんて、中学でいじめられて、それを庇って白葉ちゃんがいじめられるようになったこと。どんな風にいじめられたのか、何がきっかけなのか、どうして二人同じ高校に来たのか、何も知らないし、軽く聞いていいことじゃない。だから白葉ちゃんに断られるのは分かっていた。

 でも、白葉ちゃんがああ言ったって事は、聞いてほしいってことなの? 本当に聞いてもいいの、白葉ちゃん。

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