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厄介事

 純蓮はベッドに横になって布団を被る。

 舌打ち混じりに、陰口を吐くかのような声色で文句を言ってくる。


「私ずっと寝れてないし頭痛いの。さっさと帰って。迷惑」


 藍川に見せてやりたいと思う。日頃から藍川の前で猫被ってるなとは思っていたけど、今は不機嫌なせいで剥がれるどころかもう削れまくっている。まあ、うちの前だから被る必要すらないからだろうけど。


「ちゃんと学校来るの?」

「話聞いてる? 寝不足だし頭痛あるって言ってるでしょ」

「一生引きこもってるつもり?」

「うるさい」

「シャワーすら浴びてないでしょ。臭うよまじ」

「じゃあさっさと出ていって」


 会話にすらならないからまじで藍川呼びたくなる。藍川が避けるとか純蓮は何をやらかしたのやら。


「はぁ」


 こんな状況だと、溜息も大きく出てしまう。

 純蓮と少しでも会話できないか、とりあえずなんでもいいからきっかけ作りで勝手に部屋を漁る。

 音を立てても完全に無視だから、ちょっとやそっとじゃ口開けてくれないなって感じ。


「卒アルじゃん」


 卒アルって普通クローゼットの奥とかにしまうのに、デスクの上棚に置いているなんて珍しい。付箋まで付いてるし。

 特に何の反応もないから勝手に付箋が付いているページを開くと、思わず声が出る。


「うっわ、きっ──」


 全部藍川が写っているページだった。正直引く。うっわ〜……。

 でも気になるは気になるから、中学と小学校の卒アルを勝手に見ていく。


「藍川あんま変わんないね。純蓮もだけど」


 藍川って言うと純蓮は若干反応しているのか、布団が動く。

 でも完全には起きてこないから、特に声をかけることはせず、一人で卒アルを捲っていく。


 中学の藍川は結構大人しそうな子達と一緒にいるけど、純蓮は明るそうな子達と一緒にいる。グループが違かったからか、あまり一緒に写っている写真はなかった。

 皆からのメッセージもギチギチに書かれているけど、見た感じ藍川からのメッセージはなかった。中学では接点を持っていなかったんだろう。


 ──そういえば藍川に言われたな。


「大澤さん。聞けたらでいいんだけど、すみちゃんにどうして私達の関係隠したがるのか聞いてくれないかな?」

「聞けたらね」

「ありがとう。聞けなくても別にいいから、あまり気にしないで」

「うん」


 中学の卒アルを見る限り、純蓮は中学から藍川と仲良いこと隠してたんだろうな。

 そう思いながら、今度は小学校の卒アルを見る。


 小学生の藍川は、中学とは違い、色んなタイプの男女と仲良さそうに写っていた。

 よく中心に添えられていたり、女子からは結構密着されていることから、色んな意味で好かれていたんだろうなっていうのがよく分かる。

 小学生の藍川は、服装とショートカットで男子っぽく見えるし、それで今と性格変わらないなら割とうちもこの頃の藍川に沼っていたかもしれない。出会ったのが今で本当に良かった。


 逆に純蓮の写真はほとんどなかった。集合写真と個別写真くらいで、あとは誰かの写真の背景に写っているくらい。メッセージページも先生と藍川だけだし、友達いなかったんだろうな。


「純蓮って小学生の時藍川と仲良くなかったの?」

「は? なんで?」


 藍川をダシにすれば喋ってくれるんだ。


「だって一緒に写ってる写真全然ないから。てか純蓮が写ってる写真すら全然ないし」

「仕方ないでしょ。その頃私いじめられてたもん。いぶに近づけなかったの。私はその頃から一番仲良かったから。特別なの。だから皆、嫉妬して……」


 いじめ……。純蓮ぱっと見外国人だし、小学生ならいじりからいじめになってもおかしくはないか。

 中学は逆にその珍しさと可愛げで人気になったんだろうな。高校で初めて純蓮に声かけた時に私可愛いでしょを隠してなかったのうざかったのよく覚えてるわ。

 それと──


「特別ね……」


 藍川は人気者っぽいし、いじめてる奴が人気者と仲良いって気に食わないだろうから、孤立させられたってところかな。

 常に藍川囲っているところとか、純蓮に意識いかないようにしているみたい。まさしく、典型的な集団いじめと独占の両立。


「やっぱ寂しかった?」

「なんで友美奈にそんなこと言わなきゃいけないわけ?」

「言いたくないならいいよ」

「言わなかったら肯定になるじゃん」

「そう捉えるね」

「別に、寂しくなんてない。放課後になればいぶと二人きりになれるもん。別に学校で一緒にいられなくても、いぶの隣は私なんだから」


 藍川のことじゃなくて、孤立させられて寂しくなかったかを聞いたんだけど、純蓮の中には藍川しかいなかったのかな。


 なんで純蓮が藍川と仲良いこと言いたくないのか、なんとなく理解できた気がする。でも、それを藍川には伝えられない。藍川は絶対罪悪感を抱く。どうにもできない、必要ない悩みをあげるのは嫌がらせと変わらない。それに、藍川がどうしようと、純蓮自身がどうにかしようとしない限り意味はない。でも、純蓮一人でどうこうできることでもない。


 また溜息が出てきそう。これ、藍川と純蓮の関係知ってるうちが動いてあげないといけない系じゃない? たしか入雲も知ってるんだっけ? なら絶対強制的に協力させる。入雲も藍川の為なら全力で動くでしょうし。


 なんでこんな事にと思いながら、うちは卒アルに書かれている名前の中から、イムスタで繋がっている人をメモする。

 こういう系はあゆにやってもらうのが一番楽なのに、使えないのが本当に悔やまれる。


「もう遅くなるからうち帰るね。来週にはちゃんとお風呂入って学校来るんだよ。じゃないと純蓮が臭かったこと藍川に言うから」

「さいってー」

「わざわざ様子見に来てあげただけ感謝しなさい」


 部活終わりに食べようと思ってたチョコバーを布団に向けて弧を描くように軽く投げて、卒アルを元に戻して家から出る。藍川には、ふざけるなと連絡だけ入れておいた。

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