玉響(たまゆら)の道
エイムたちは、魔法都市フィオルナを目指して道を進んでいた。
心地よい風がそよぐ中、ふとシラセが足を止める。
「……なあ、さっきから妙な音がしてないか? 鈴みたいな、リンリンってのが…」
「ああ、それはきっと魔法植物のフェイロンド(和名:妖精の戯曲)だよ!」
エイムの瞳が嬉しそうに輝く。
「風に揺れるとね、とてもきれいな音を奏でるの。……ほら、多分あの辺り!」
彼女は草むらの向こうを指さし、駆け出した。
慌ててシラセもその後を追う。
そこには、細く凛と伸びた葉に、小さな桃色の花を咲かせた可憐な植物が群生していた。
風が通り抜けるたびに、葉は一斉に揺れ、澄んだ鈴の音のような音色を響かせる。
「おお……こりゃあ、すげえ……」
シラセは思わず息を呑んだ。
「でしょ? 私もこの音が大好きなの!」
エイムは微笑むと、少し悪戯っぽい表情を浮かべた。
「でもね、この植物には――ちょっと意外な一面もあるんだよ。」
そう言って、彼女は一枚の葉を茎から摘み取る。
「心の準備、しておいた方がいいかも。」
軽く茶化すように言いながら、葉の両端を指でつまむ。
そして、一気に引き裂いた。
次の瞬間――
「キィィィィィイイイイン!!!」
鋭く、耳を突き刺すような甲高い音があたりに響き渡った。
シラセは思わず耳を塞ぎ、顔をしかめる。
「……な、なんだよ今の……爆音にもほどがあるだろ……」
「ふふっ。この植物はね、葉が裂けるととんでもなく大きな音を出すの。
“妖精の断末魔”って呼ばれてるんだよ。」
エイムも苦笑しながら耳をさすった。
「はぁ~……ほんと、いろんな植物があるもんだなぁ。」
痛む耳を押さえつつ、シラセは感心したように呟く。
二人は、再びりんりんと響く穏やかな音色に包まれながら、次の街を目指して歩き出した。
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しばらく進んでいくと、道の先から一人の老翁が歩いてくるのが見えた。
深い灰色のフードを被り、小柄な体を杖に預けている。
その歩みはゆるやかでありながら、どこか威厳を帯びていた。
すれ違いざま、エイムとシラセは軽く会釈を交わす。
しかし、背後から静かな声が響いた。
「……ほう、珍しいの。
今どき、魔法を使う若者が二人一緒に歩いておるとは。
それに――ふむ、魔法とは異なる気配も混じっておるようじゃな。」
二人は思わず足を止め、振り返る。
老翁は深い眼差しで二人を見据えていた。
その視線の奥には、何かを見透かすような、確かな力が宿っていた。
この出会いが、エイムとシラセの運命を――
大きく揺り動かすことになる。
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