旅の始まり
オルフとエウリがこの世を去って、数週間が経っていた。
エイムはその間、深い喪失感に沈んでいたが、祖父ダイロの懸命な励ましに少しずつ支えられ、日常を取り戻しつつあった。
そして今、エイムは夕暮れの柔らかな光の中、二人の墓の前に立っていた。
「お母さん、お父さん…わたし、たくさん泣いたよ。
本当に寂しくて…今も寂しい…
でもね…このまま泣いてばかりじゃ、いけないって思うの。」
深く息を吸い込み、吐き出す。瞳は迷いなく、墓石の向こうの空を見据えた。
「だから、決めたの。
お父さんとお母さんが完成させたかった魔法植物図鑑を…私が、完成させる。
それを、私の生きる意味にするの。」
小さく、でも力強く声を震わせながら続けた。
「だから、見ててね!
絶対に、立派に生きていくところを見せるから!」
エイムの唇に浮かぶ微笑みは、悲しみを完全に消すものではなかったが、その瞳には確かな決意が宿っていた。
「ピー!」
肩の上に止まっていた小さな友達、ピーちゃんも力強く鳴き、エイムを後押しする。
「応援してくれるの?ふふ、ありがとう、ピーちゃん!」
エイムは背筋を伸ばし、夕日に照らされながら、しっかりとした足取りで帰路についた。
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さらに数日後。
「ほれ、エイム!できたぞ!」
ダイロが差し出したのは、赤茶色の一足のブーツだった。
ひざ下部分は生地が折り返してあり、そこに一対の宝石が埋め込まれていた。
「この宝石はな、人間の体から自然に流れるマナを吸収して蓄えることができる。
そして、ここぞという時にためたマナを放出できるのじゃ。旅にはとても役立つじゃろう。」
「わあ、じいちゃん、ありがとう!」
ダイロは優しく笑いながらも、表情には心配の色が見えた。
「…エイム、どうしても行くのか?わしは夜も眠れんほど心配じゃ…」
「…うん、ごめんね、じいちゃん。危険なこともあるかもしれないけど…でも私、二人の夢を叶えたいの。それに、もっと魔法植物のことを知りたいんだ!」
「その好奇心と探究心は、間違いなく親譲りじゃな。
ならば、止めても無駄というもの。
じゃがな、ひとつだけ約束してくれ。
絶対に、わしより先に死ぬんじゃないぞ。」
「…うん。わかった。私は絶対に、じいちゃんより長生きするから!約束する!」
「ああ、約束じゃ。」
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明け方。
エイムはまだ眠りの余韻に包まれ、ぼんやりと夢の名残を思い出していた。
両親のこと、祖父のことを想いながら、自然と微笑んでいた。
「そういえば、じいちゃん元気かな…?しばらく会ってないや。
村の近くまで行くことがあったら、顔を見せに行かなくちゃ。」
横を見ると、シラセが静かに寝息を立てていた。
エイムはそっと微笑むと、背伸びをしてテントの口を勢いよく開ける。
朝日が瞬間、テントの中を柔らかく照らす。
「ん…うう…」
眩しそうに身を丸めるシラセに、エイムは元気いっぱいに声をかけた。
「さあ、朝だよ!今日も次の町まで、張り切っていこう!」
「ん…もう朝か…。ったく、エイムはいつも朝から元気だよな。」
「だって、また新しい魔法植物に出会えるかもしれないし♪」
「探究心お化けか…ま、どのみち悠長にしてる暇もないしな。さて、今日も行くか!」
「おー!」「ピー!」
二人と一匹の冒険の一日は、今日も元気に始まった。
ーピーちゃんの秘密編、完ー
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