ピーちゃんの秘密
数日後。
エイムは小鳥の人形と共に、家の外を駆け回っていた。
その小鳥は、エイムの魔法により小さな意思を宿し、ため込んだ風の力で、ふわりと空を舞うことができた。
エイムはその人形に「ピーちゃん」と名づけた。
二人はいつも一緒に遊び、塞ぎ込んでいたエイムの心に、ひとかけらの光が戻りつつあった。
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両親が眠る部屋の中で、エイムは両手でピーちゃんを掲げ、弾む声で叫んだ。
「みて、お母さんお父さん! 私の魔法で、ピーちゃんが動き出したの!」
「ピー!」と、小鳥が愛らしく鳴く。
「魔法が発現するなんて…ほんとうに…すごいな…」
「きっと、いい子にしていたから…神様が、与えてくださったのね…」
枯れた声を振り絞りながらも、二人は笑顔を作って見せた。
その瞳には涙がにじんでいたが、娘が生き生きと輝いていることに、かすかな安堵を感じていた。
「…ありがとう…父さん…」
ベッド脇に立つ祖父ダイロへ、父オルフが弱々しく言葉をかける。
ダイロは潤んだ目を伏せ、小さくうなづくことしかできなかった。
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日が経つごとに、両親の命の灯は細く、儚くなっていった。
もう、いつ逝ってもおかしくない――エイムもそれを悟っていた。
幼いけれど、もう何もわからない子どもではなかった。
「お母さん、お父さん…! いやだ、遠くに行かないで!」
エイムは泣きながらすがりつく。
「大丈夫だ…エイム…父さんたちは、死んでも…いつも心はそばにいる…」
「いつも…あなたを見守っているからね…いっしょよ…ずっと…」
オルフとエウリは、かすれる声でそう伝えた。
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深夜。
泣き疲れたエイムは、ピーちゃんを抱きしめ、両親のベッドの脇で眠り込んでいた。
オルフは、エウリに向かって囁く。
「なあ…エウリ。君と巡り会えて…そしてこんなに可愛い子まで授かれて…僕は心底…幸せだったよ…」
「ええ…私も、あなたに出会えて…本当に…幸せだったわ…」
二人とも、これが最期の会話になると知っていた。
「ただ、どうしても…心残りがある…この可愛い子を…一人にしてしまうことだ…」
「そうね…本当に…心配ね…ずっと…ずっと一緒に…いたかった…」
エウリは顔を歪ませ、涙をこぼした。
「ああ…神様…もしおられるなら…どうか私たちを…この子のそばに…」
二人はベッド越しに、弱々しくも強く、手を繋ぎ合う。
そして、ゆっくりと目を閉じーーーーーーー
その生涯を、終えた。
星が瞬く、ひどく静かな夜だった。
そのときだった。
二人の体から、淡く小さな光のオーブがいくつも浮かび上がった。
それらはふわりと宙に舞い、天井をすり抜けて消えてしまったが、オルフとエウリそれぞれから、最後の小さな一つのオーブが浮かび上がると、エイムの周囲をめぐり、まるで別れを惜しむかのように漂った。
そして、しばらくの後、その二つの小さな光は、ピーちゃんの胸へと吸い込まれていった。
瞬間、ピーちゃんの身体が柔らかな光に包まれた。
エイムが眠っているにもかかわらず、その小鳥はそっと目を開いた。
その瞳は、青と黄色のオッドアイへと変わっていた。
それは、オルフの青く透き通る瞳と、エウリの温かい黄色い瞳が、まるでそのまま宿ったようだった。
ピーちゃんは優しいまなざしで、眠るエイムを見つめ、そっとその小さな体を寄せていた。
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