失ったもの、手にした決意
それまでの激闘が幻だったかのように、あたりは静寂に包まれていた。
エイムは目を見開き、呆然とその一部始終を見届けたあと、はっと我に返る。
胸を締めつけるような不安が込み上げ、慌てて胸元を見下ろした。
「シラセ! 大丈夫!?」
抱きかかえていたシラセは目を閉じており、意識はないようだった。
しかし、顔に耳を寄せると――かすかに、安らかな呼吸が聞こえる。
「……よかった……」
エイムは胸を撫でおろし、涙で潤んだ瞳のまま、シラセの顔を見つめた。
その表情には安堵と、仲間を想う深い愛情が滲んでいた。
「……シラセ、本当に……本当によく頑張ったね……」
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「……う……あれ……? 俺……ここは……?」
まぶたを重く開けると、そこは封鎖された町から少し離れた森の中。
焚き火の跡や簡素なテントが並ぶ――エイムたちが野営していた場所だった。
上半身を起こそうとした瞬間、鋭い痛みが全身を駆け抜ける。
「い、いててててて!!」
「――あっ、起きた!」
振り返ったエイムが、ぱっと表情を明るくして駆け寄ってくる。
心配そうに覗き込まれ、シラセは頬が一気に熱くなるのを感じた。
「大丈夫!? シラセ、もう数日間も眠りっぱなしだったんだよ!?」
「え……俺、そんなに寝てたのか…?
……は!バジリスクは!? どうなったんだ!?」
シラセは戦いの記憶が一気によみがえり、慌てて額に汗を浮かべる。
「安心して。シラセとピーちゃんのおかげで、ちゃんと倒せたから!」
エイムは微笑み、力強くうなずいた。
「シラセ、本当に大活躍だったよ!」
「……そうか……よかった……」
安堵の息をついた瞬間、シラセの胸にじわりと悔しさが広がる。
「でも結局……俺は今回も一人じゃ、何も――」
「何言ってんの!」
エイムが勢いよく遮った。
「今回なんて、もろシラセのおかげじゃん! まったく、シラセはいつも『俺一人で~』とか言うけどさ、仲間がいるんだから、みんなで助け合って勝てればそれでいいの!」
「……それは、そうだけど……」
シラセは視線を伏せ、言葉を選ぶように呟く。
「でも……俺が大剣を作れたのだって、エイムが引き付けてくれたおかげで…
…はっ!そうだエイム!ガルムとの戦いの記憶は!?どうなってるんだ!?」
その名を口にした瞬間、エイムの表情が曇る。
「……うん。あれから何度も思い出そうとしたんだけどね……やっぱりダメみたいなの」
エイムは視線を伏せ、握りしめた手を震わせる。
「私の記憶の中で、あの戦いの部分だけが……ぽっかり穴が開いたみたいに、なくなっちゃって……」
「……そんな……!」
シラセは愕然とし、震える声で唸った。
「くそっ……! くそぉ……!」
固く拳を握り締めると、悔しさと自責の念が込み上げ、目からは自然と涙が溢れる。
――俺のせいだ。
俺が至らなかったから、エイムは記憶を失う羽目になった。
俺が……もっと強ければ――!
「シラセ、大丈夫だよ」
エイムがそっとシラセの肩に手を置き、優しく微笑む。
「私は記憶をなくしてしまったけど……シラセがちゃんと覚えていてくれてるんでしょう?
だから、教えてね。私に……その戦いが、どんなものだったのか。」
その言葉は、シラセの心に深く響いた。
震える瞳でエイムを見つめたあと、彼は強く前を向き、決意を固める。
「……わかった。俺がしっかり、エイムにあの戦いのすべてを伝えるよ」
そして、力強く拳を握り締める。
「そして誓う。もう二度と、エイムをこんな目に遭わせない!」
シラセはよろめきながらも立ち上がり、遠くの空を見据えた。
その横顔は、これまで以上に凛々しく、少年の面影をわずかに残しつつも――
どこか大人びて見えた。
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