封鎖された町
一帯は重苦しい沈黙に包まれていた。
灰色の雲が低く垂れ込め、風も息を潜めている。
そんな中、エイムとシラセは、静かに町の入り口へと足を運んだ。
門の前には二人の兵士が無言で立っており、あたりを警戒している様子だ。
エイムが一歩前に出て、声をかけた。
「すみません。この町で……何か、あったんですか?」
兵士の一人が、眉をひそめて二人を見た。
「旅人か?」
「はい。私たちは、魔法都市フィオルナを目指して旅をしている者です。
できればこの町でひと休みしたいのですが……」
兵士たちは顔を見合わせ、互いに小さく首を振ると、静かに答えた。
「そうか、気の毒だが、今は町に入ることはできない。封鎖中だ。
すまないが、別の場所を探してくれ。」
「封鎖……? 一体、何があったんですか?」
「ん…詳しいことは言えんが……伝染病が流行っていると聞いている。
我々は、その拡大を防ぐためにこうして見張っているのだ。」
それを聞いたシラセが、少し語気を荒げた。
「伝染病にしては、ずいぶん物々しい警戒じゃないか。
ここまでやる必要があるのかよ?」
兵士は険しい顔つきで答えた。
「それだけ重大な事態ということだ。伝染病が広がれば、多くの命が危険にさらされることになる。
それに、町の封鎖は国王陛下直々のご命令だ。無理に入れば、こちらもそれなりの対処をせねばならん。」
「……そうですか。わかりました。」
追い返された二人は、町外れの林に身を潜めることにした。
風に揺れる木々の隙間から、遠くに町の塀と、巡回する兵士たちの姿が見える。
「伝染病……」
エイムが呟いた。
「これ、もしかして……例の件と関係あるのかもしれない。」
「だとしたら、放ってはおけないな。
でも、あの様子じゃあ下手に動くと危ないかもしれないぞ。」
「うん。でも、もし町の中に困ってる人がいるなら……助けたい。」
シラセは苦笑した。
「まったく、エイムは本当にお人よしだな。
まあ、もちろん付き合うけどよ。さて、これからどうする?」
エイムは意思の宿る瞳で答えた。
「一つ、考えがあるの。……でも、それには夜を待たないと。」
「了解。じゃあ今夜も、野宿決定ってわけか。」
シラセはやれやれと言った様子で、落ち葉の上に腰を下ろした。
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夜──
月は雲の切れ間から顔を出し、淡い光が林を照らしていた。エイムは慎重に準備を整える。
彼女の手には、木で作られた三体の人形があった。
「さあ、行くよ……」
エイムが両手を合わせ、静かにマナを注ぎ込む。周囲にふわりと光の粒が舞い、人形たちの目が仄かに輝き始める。
「ᛃᛟ᛬ᚺᛁᛊᚨᛊᚺᛁᛒᚢᚱᛁ᛬ᛞᚨ᛬ᚾᚨ!」
人形たちは小さく跳ね、笑ったように身振りを交わす。
「あはは、みんな久しぶり!」
人形たちは楽しげに踊るようにエイムの周りを回るが、やがてエイムは真剣な表情に戻った。
「みんなに、お願いがあるの。この町の中を、調べてきてほしいの。」
人形たちはぴたりと動きを止め、エイムを見上げる。
「町は塀で囲まれていて、兵士も警備してる。でも、小さなあなたたちなら、どこかから潜り込めるはず。お願い、力を貸して。」
「ᛗᚨᚲᚨᛊᛖᚱᛟ!」
「ありがとう。町では伝染病が流行ってるらしいの。症状や原因を、可能な範囲でいいから、探ってきて。」
「ᚱᛃᛟᚢᚲᚨᛁ᛬ᛊᚨᚷᚢᛏᛏᛖᚲᚢᚱᚢᛉᛖ!」
「うん、気を付けて!」
人形たちは小さく頷き、散り散りとなって、森の闇の中へと走り去っていった。
その背中を見送りながら、シラセがぽつりと呟く。
「あいつら……調査には、本当に頼りになるな。」
月光の下、静まり返った林の中で、エイムはそっと胸に手を当てた。
「この町で、何が起きてるのか……必ず、突き止めてみせる。」
夜の帳がすべてを覆い隠す中、静かに始まった調査の先に、何が待ち受けているのか──
その不気味な息遣いには、まだ誰も気づいていなかった。
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