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エイムの魔法植物学  作者: izumo_3D
ー亡霊の家編ー
31/60

時と記憶を喰う植物

エイムは額に汗をにじませながら、興奮気味に言葉を吐き出した。


「……この魔法植物の正体は、フィロメリアじゃない……

いや、正確には——フィロメリア()()()()()()んだ……!」


「えっ、どういうことだよ!?」


シラセは眉をひそめ、思わず一歩身を乗り出した。


「シラセ、エリシアの顔をよく見てみて……」


「え、あ、ああ……?」


戸惑いながらも、シラセは視線をエリシアへ向けた。

少女は頭を抱え、小さく震えている。薄暗い灯りに照らされるその姿は、どこか頼りなく、痛々しい。


「……ん? あれ……エリシア、なんか少し……幼くなってないか……?

それに、体も、前より小さく……」


シラセの声がかすかに震えた。


エイムは静かに頷く。


「——そう。この魔法植物は、エリシアの()()()()()()()()を吸ったの」


「じ、時間を吸う……!?

じゃあ、つまり……若返ったってことか!?」


シラセは思わず声を上げた。


「うん。

たぶん大人なら、顔や体の変化が小さすぎて気づかない。

でもエリシアぐらいの年齢なら、時間の巻き戻りははっきり現れる。

……そして、そんな現象を引き起こす植物は——これだ!」


エイムは震える指で本をめくり、ついに目的のページを見つけた。


時喰の宝珠アユルエクリド


この植物は、祈りを捧げた者に若返りの奇跡を授ける。

だがその代償として、記憶は花に喰われ、実の養分となる。

多用すれば、やがて自己認識さえも失い、夢と現実の境界が曖昧になり、亡霊のように彷徨う存在となる。

実は記憶を吸うたびに膨らみ、最後には花弁が枯れ落ちる。

内部には失われた記憶と時間が封じられ、それを食した者はそれらを取り戻すという。


外観は詳しく伝わっていないが、怪しく輝く花弁と、金色に膨れた実が特徴とされる——。


エイムはページを指で押さえながら、真剣な眼差しで続けた。


「間違いない……この魔法植物は、アユルエクリド……

そしてきっと、フィロメリアでもある。

二つの魔法植物は、実はひとつの存在だったんだ!」


「そ、そんなことがあり得るのか!?」


驚くシラセに、エイムは即座に頷く。


「うん。魔法植物の伝承って、実はけっこうあいまいなんだ。

同じ植物の違う部分が、別々に伝わることもあるから……!」


シラセはごくりと息を飲んだ。


「じゃ、じゃあ……これがアユルエクリドなら……

エリシアにこの実を食べさせれば……!」


「うん。きっと、失った記憶も時間も、取り戻せるはず!」


エイムは勢いよく立ち上がり、テーブルの上に置かれた魔法植物へと向き直った。


丸くふくらんだ金色の実は、かすかに光を放っている。

まるで宝石のように美しく、そしてどこか哀しげに——そこには、誰かの大切な記憶が詰まっているのだろう。


エイムはそっと手を伸ばし、実を摘み取った。

その瞬間、上部に付いていた花弁がふわりと宙に舞い、ハラハラとテーブルに落ちた。


音もなく。


淡く光る花弁が、まるで別れの涙のように広がる。


エイムは膝をつき、うずくまるエリシアの隣へと寄り添った。


「……エリシア。さあ、これを——」


彼女はそっと、柔らかく光る実を、エリシアの手元へ差し出した。


静かに、息を呑むような空気が、そこに満ちていた。

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