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エイムの魔法植物学  作者: izumo_3D
ー亡霊の家編ー
30/67

追憶花(フィロメリア)

植物の発する柔らかな光は徐々に強さを増し、やがて部屋全体を淡い金色に包みこんだ。


シラセは緊張に眉をひそめたまま、その光景を見つめていた。

一方で、エイムの表情は驚くほど静かだった。

まるで、これから起こることをすでに知っているかのように。


やがて、光の中にぼんやりと人影が二つ、浮かび上がり始めた。


「……うわ……出やがった……!」


シラセが目を見開き、小さく息を呑むように叫ぶ。


「大丈夫。まだ、見守ってて……」


エイムは優しく、けれど確信をもって答えた。


人影はゆっくりと形を持ち始め、やがてはっきりとした男女の姿となって現れた。


女は台所に立ち、穏やかな手つきで料理をしていた。

男は椅子に腰かけ、膝に古風な弦楽器をのせ、指を滑らせながら静かに歌っている。


気がつけば、外は昼の陽射しが差し込む風景に変わっていた。そして、音が聞こえてきた。


「ららら〜♪

……さあ、こんな感じだよ。どうだった?」


男の声は柔らかく、誰かに語りかけている。


「あはは! この楽器、おもしろい音するね〜!」


姿は見えないが、楽しげな子どもの声が部屋に響いた。


「ふふ、そうだね。不思議な音色だけど、とても素敵だ。

売らずに取っておいてよかったよ。君がこんなに喜んでくれるなら。」


男は優しく微笑む。


「よかったわね。いつかあなたも、その楽器を演奏して、私たちに歌を聴かせてちょうだい」


料理中の女が振り返り、あたたかな声を投げかける。


「いいよ〜!ねえ、私、踊りも踊れるよ〜!見てて〜!」


「あははは、なんだいその踊り!面白いなぁ」


「ふふ、振付がめちゃくちゃよ。今度私がちゃんとしたのを教えてあげる」


「ほんと!? やったーー!」


笑い声が交差し、陽だまりの中にいるような温もりが、部屋の空気を優しく包み込んでいく。


エイムとシラセは、その穏やかな情景にしばし心を奪われていた。


「……エイム、これって……この子の……?」


「……うん……」


シラセが隣を見ると、エイムの瞳はわずかに潤んでいた。シラセは、その瞬間、すべてを理解した。


エイムにも、かつてこんな温かな家族の記憶があったのだろう。

けれど、今はもう、その思い出を語り合える相手はいない。

だからこそ、静かに胸の奥で思い返し、噛みしめるしかない――

そんな切なさを、エイムはこの少女にも感じたのだろう。


少女に目をやると、先ほどまでの虚ろな顔つきが嘘のように、やわらかな微笑みをたたえていた。

彼女の視線は、幸せに満ちた幻の家族をじっと見つめていた。


やがて、植物の発する光が徐々に弱まり、それとともに映し出されていた幻影も、ゆっくりと色を失っていく。そして、再び静かな暗がりが部屋に戻った。


少女は、そっと口を開いた。


「……素敵でしょう?

このお花に祈りを捧げると、こんな光景が見られるの。

この時間だけは……私の心があったかくなるの……」


「……うん、そうだね……」


エイムの頬を、一筋の涙が伝う。その声は、しぼり出すように震えていた。


「あの人たちが誰なのかは、わからないけれど……

とても安心するの……」


「えっ……誰かわからないって……!?

どう見ても、あれは君のお父さんとお母さんだろ……!」


シラセが驚きの声をあげる。


「……そうなのかな……でも、わからない……

なにも……思い出せないの……!」


少女は頭を抱え、膝をついてうずくまってしまった。


「……エイム、これも魔法植物の力なのか……?」


「……この植物の仕業であることは確かだと思う。

でも……私の知っている魔法植物の特徴だけじゃ、説明がつかない……

記憶の幻影を見せる植物は存在するけど、記憶を失うなんて……」


エイムはリュックから分厚い魔法植物図鑑を取り出し、床に広げる。

シラセも隣でそのページを覗き込んだ。


「……あった。このページ……!」


その植物は「追憶花フィロメリア」と呼ばれていた。


それは、過去の記憶を思い返しながら強く祈ることで、その記憶の幻影を現実に投影する花だという。

過去の記憶が深く刻まれた土地に、ひっそりと咲くと言われている。

透き通った花びらは、映し出す記憶によって色づき、最後には感情で彩られた美しい姿となるという。


「やっぱり、フィロメリア……この花の特徴と一致する。

でも……どこにも記憶を失うなんて書かれてない……」


エイムはふと、少女の顔を見た。

すると、どこか年齢が逆戻りしたような、幼い印象を受けた。


その瞬間、エイムの中で雷鳴のように、思考が脳裏を駆け抜ける。


「……そうか……そういうことか……!!」


エイムは目を見開いた。その瞳には、確信とひらめきの光が宿っていた――。

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