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不味いレーションを拒否した特級調理官ですが、追放先の辺境村で『道の駅』を開いたら三国の上層部が常連になりました  作者: 月神世一


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瀕死のイケメンを拾ったら、ポポロ村の物理チート村長に歓迎されました

瀕死のイケメンを拾ったら、ポポロ村の物理チート村長に歓迎されました

ヴィンセント・ルージュの歩幅は、背中に巨大なリュックを背負っているにもかかわらず、とても滑らかで静かだった。

隣を歩く私に合わせて歩調を調整してくれているのがわかる。

「そろそろ、村の入り口が見えてきますよ、セリアさん」

「本当だ。あれがポポロ村……」

荒野の先に現れたのは、木柵で囲まれたのどかな集落だった。

しかし、ただの田舎村ではない。遠目からでも『タローソン』や『ルナミスパーラー』といった見慣れた看板がチラホラと見え、緩衝地帯特有の奇妙な発展を遂げていることが窺える。

私たちが村のゲートに近づくと、ふいに頭上から鋭い風切り音が響いた。

「そこまで。見ない顔だね。この村に何の用かな?」

ダンッ! と凄まじい地響きを立てて、木柵の上から一人の少女が飛び降りてきた。

ふわふわの長い髪に、頭にはピンと立ったウサギの耳。現代風のラフなパーカーを着ているが、その足元はタローマン製のゴツい『特注安全靴』で固められている。

彼女こそが、ポポロ村の村長、月兎族のキャルル・ムーンハートだ。

キャルルの可愛い顔には、明らかな警戒の色が浮かんでいた。

緩衝地帯という土地柄、帝国のスパイや魔皇国の工作員など、得体の知れない輩がよく入り込むからだろう。

「怪しい動きをしたら、アゴ砕くよ?」

彼女の足元の安全靴が、威嚇するように地面をカリッと削る。

月兎族は尋常ではない脚力を持つ。あの安全靴で蹴られれば、並の兵士なら文字通りアゴが粉砕されるだろう。

私がどう説明しようかと言葉を探していると、スッと一歩前に出たのはヴィンセントだった。

「警戒されるのは当然です、村長殿。我々は怪しい者ではありません。私はただの護衛であり……こちらのセリアさんは、この村で『店』を開きたいという希望を持って訪れた、腕利きの料理人です」

ヴィンセントは胸に手を当て、完璧な貴族の礼をとった。

その流れるような所作と、大人の余裕を感じさせる落ち着いた声色に、キャルルはぴくりとウサギ耳を動かした。

(あ、キャルルさんの警戒が少し解けた……?)

月兎族の彼女は『相手の心音から嘘を見抜く』という特性を持っている。

ヴィンセントは嘘を一切吐いていない。彼は自分の身分(特務大佐)を自ら名乗ることはせず、「ただの護衛」と事実のみを告げたのだ。

相手を刺激せず、かつこちらの目的を最短で伝える。これが彼なりの『大人の交渉術(マリーシア)』なのだろう。

「店を開きたい……? ルナミスの商人じゃなくて?」

「はい。私は元々、帝国の兵站局で調理官をしていました。ですが、色々あって退職しまして……このポポロ村で、兵士や旅人の皆さんが一息つけるような『道の駅』を開きたいんです」

私が一歩前に出てそう告げると、キャルルは私の顔をじっと見つめた後、ふっと表情を和らげた。

「ふーん……嘘は言ってないみたいだね。心音がすごく落ち着いてる」

「信じていただけますか?」

「うん。でも、腕利きの料理人っていうのは本当かな? この村は美味しいものがたくさんあるから、ちょっとやそっとじゃ驚かないよ?」

キャルルが少し意地悪そうに微笑む。

試されている。ここで実力を示せなければ、村での好条件な場所の確保は難しいだろう。

「それなら、少しだけ味見をしていただけませんか? ちょうどお昼時ですし」

私はヴィンセントが背負ってくれていたリュックから、タローマン製の大型密閉タッパーを取り出した。

パチン、パチンと四方のロックを外して蓋を開けると、ふわりと香ばしい匂いが漂う。

「これは……」

キャルルのウサギ耳が、ピーンと垂直に立ち上がった。

タッパーの中に入っているのは、道中の休憩時間に作っておいた『特製お弁当』だ。

メインは、三徳鳥(トライバード)のモモ肉を醤油草とハニーかぼちゃの蜜でこってりと焼き上げた照り焼き。

副菜には、太陽芋をマヨ・ハーブで和えた濃厚なポテトサラダ。

そして主食として、ふっくらと炊き上げた米麦草を握った俵型のおにぎりを隙間なく詰めている。

「冷めても美味しいように、お肉には少し濃いめに味付けをしてあります。どうぞ、召し上がってみてください」

タローマン製の先割れスプーンを渡すと、キャルルはゴクリと喉を鳴らしてから、照り焼き肉を口に運んだ。

「――っ!!」

キャルルの目が、カッ!と見開かれた。

「なにこれ……! お肉がすっごく柔らかい! それにこの甘辛いタレ、噛むほどに旨味が溢れてきて……っ! 太陽芋のサラダも、マヨ・ハーブの酸味が絶妙で、おにぎりが無限に食べられちゃう……!」

タッパーを抱え込むようにして、キャルルは猛烈な勢いで弁当を食べ始めた。

月兎族の細い体のどこにそんなに入るのかというスピードで、特大サイズのお弁当がみるみるうちに空になっていく。

「ふふ、美味しいなら良かったです。お腹が空いていたんですね」

「んぐっ、ごちそうさま! ……あぁ、幸せ」

最後の一粒まで綺麗に平らげたキャルルは、満足そうにお腹をさすりながら、私に向かって満面の笑みを向けた。

「合格! セリア、あんたすごいよ! こんなに美味しいご飯、食べたことない!」

「ありがとうございます、村長さん」

「キャルルでいいよ。ねえセリア、あんたの店、絶対この村の名物になる! 村の中央にある一番大きな広場、空いてるから使っていいよ! もちろん場所代はタダで!」

(えっ!? いきなり広場を無償貸与!?)

あまりのトントン拍子に私が驚いていると、ヴィンセントが私の耳元で小さく囁いた。

「見事な腕前です。これで拠点の土地は確保できましたね」

「ヴィンセントさんの交渉のおかげでもあります。ありがとうございます」

「私は何も。すべては、あなたの実力が引き寄せた結果ですよ」

ヴィンセントは優しく微笑むと、私の背中をそっと押してくれた。

広場は、村の入り口から入ってすぐの、最も人通りが多い一等地だった。

「さて、それじゃあ早速、お店の準備を始めましょうか」

私は広場の中央に立つと、前世の記憶から覚醒した私のユニークスキルを発動させた。

「スキル起動――【道の駅(ローカル・イノベーション)】!」

私の手から放たれた光が、広場の地面を覆い尽くす。

ズゴゴゴゴッ!という地響きと共に、空間が歪み、木材や石材が魔法の力で自動的に組み上げられていく。

「えっ!? な、なにこれ!?」

キャルルが目を丸くして驚く中、ものの数分で、広場には立派なログハウス風の建物が出現した。

広々としたウッドデッキのテラス席に、清潔感のある大きなガラス窓。

中には最新鋭の魔導コンロが並ぶ広い厨房と、特産品を並べるための商品棚が備え付けられている。

これこそが、私のスキル【道の駅】の初期形態だ。

「すごい……一瞬でお店が建っちゃった……!」

「驚きました。建築魔法の類は見たことがありますが、ここまで機能的で完成された建物を無から生み出すとは」

キャルルとヴィンセントが感嘆の声を上げる。

「外側はできましたけど、肝心の中身はまだ空っぽです。これからポポロ村の特産品を仕入れて、どんどん商品を並べていかないと」

「特産品なら任せて! ちょうどいいものがあるんだ!」

キャルルは嬉しそうに安全靴を鳴らすと、「ちょっと待ってて!」と言い残し、風のようなスピードで村の奥へと走っていった。

「ふふっ、良いスポンサー兼・大家さんになってくれそうですね」

「ええ。ですが、少し元気すぎるのが玉に瑕でしょうか」

ヴィンセントと笑い合っていると、数分後、キャルルが両腕に「何か」を抱えて戻ってきた。

「お待たせ! これがポポロ村の特産品だよ!」

キャルルがドサッとテーブルの上に置いたのは、見た目は立派なキャベツだった。

しかし、そのキャベツの表面には目と口のような模様が浮かび上がっており、ウネウネと蠢いている。

『……ひぃぃぃ! 奥さん、聞いてくださいよ! 隣の小隊の副官、実はポポロ村のキャバクラでぼったくられて借金まみれらしいですよぉぉ! だから私を食べないでぇぇ!』

「…………はい?」

思わず私の動きが止まる。

キャベツが、三面記事のゲスいゴシップを叫びながら命乞いをしているのだ。

「これが噂の『ネタキャベツ』だよ! 美味しいネタを喋るほど、味が美味しくなるんだ!」

キャルルが親指を立ててドヤ顔をしている。

ヴィンセントは無言で顔をしかめ、スッと自分の首元のネクタイに手をかけた。

「……セリアさん。私がこの気味の悪い植物を、瞬時に微塵切りにして処分しましょうか?」

「あ、いえ。大丈夫です。ヴィンセントさんは少し離れていてください」

私はタローマン製の包丁を手に取り、大きく息を吸い込んだ。

(前世でも、クセの強い地元野菜の調理はいっぱいやってきたわ。これくらい、どうってことない!)

「さあ、道の駅『ポポロ』の記念すべき最初の商品を作りますよ!」

私はゲスいゴシップを叫び続けるネタキャベツを、無慈悲にまな板の上へと乗せた。

第2話をお読みいただきありがとうございます!

スマートなイケメン人狼・ヴィンセントの大人の交渉術と、セリアの手作り弁当の力で、無事にポポロ村の村長キャルルを味方につけることができました!

そしてついにスキル【道の駅】が発動!

しかし、持ち込まれた最初の特産品は、まさかの命乞いをする「ネタキャベツ」……!

セリアはこのトンチキ食材をどう料理するのでしょうか!?

次回、ついに道の駅『ポポロ』がプレオープンします!

そして、あの強欲な居候地下アイドルも乱入の予感……!?

「ネタキャベツの声がウザい(笑)」「ヴィンセントのサポートが頼もしい!」と思っていただけましたら、

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合わせて【ブックマーク登録】もぜひよろしくお願いいたします!

皆様の応援が、セリアとヴィンセントの力になります!

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