第9話 リーグレット再び警備隊詰め所に送られる。
「で? どうしてお前がここに戻ってきたのか分かっているか?」
暗い尋問室でリーグレットはまたまた警備隊長のグラハムから問い詰められていた。
机の上をトントンと叩くのは彼の癖だろうか、これには一向に慣れる気がしないのは彼に恐怖を抱いているからかもしれない。
そんなリーグレットはこれ以上この人を怒らせまいと取り繕った笑顔で返した。
「な、なんででしょう?」
「お前が教師をぶっ飛ばしたからだろうがッ!」
「ひゅっ」
リーグレットは自身の心臓がヒュンと縮こまったのを感じた。
何故ここまで怒られなければいけないのか、リーグレットには理解できない。
理解できないが……同時にアナンタをぶっ飛ばしてしまったから怒られているという事も理解している。
頭の中では自分は悪くないという意見と、悪いという意見でせめぎ合っているのだから、考えが矛盾するのも無理はないのだ。
「だ、だって……先生が相手してくれるって、遠慮はいらないて言ったから……」
「だからってまじで吹っ飛ばすやつがあるかこのアホタ令嬢……」
呆れた……とグラハムは席に座り直し用紙をヒラヒラさせている。
きっとそこにはリーグレットが講義中にアナンタを吹っ飛ばした事についての目撃情報が記載されているのだろう。
そんな用紙を机の上に雑に放り投げてグラハムは頬杖をつく。
「あのね? お前は学校になんてものを持ち込んだんだって話よ」
ドン!
そう言ってグラハムが机の上に叩き付けたのはゴレムリンだ。
リーグレットが連行される時に押収されたのだが、大事に扱ってほしいと思う。
ゴレムリンは彼女が作り上げた友達の1人なのだから。
「や、やめてくだ、さい。その子はまだ生まれたてで、か弱いゴーレムなんです……虐めないで」
「魔法師団のエースを吹っ飛ばせる兵器が可愛いわけあるか! 末恐ろしいわッ! 没収没収! 没収だッ!」
取り返そうとリーグレットは手を伸ばしたがグラハムの振り払いを前に敢えなくゴレムリンを懐に仕舞い込まれてしまう。
「はぁ。今のお前はテロリストの容疑がかけられてるわけ。状況の悪さ理解してる?」
「テ、テロリスト!? 私がですか? あはは……冗談ですよね?」
きっとこれは王国の流行のジョークというやつなのだろう。リーグレットは世の中に情報には疎いが、いきなり人をテロリスト扱いするなんてあり得ない。
だからそうだと思ったのだが――
「……冗談だと思うか?」
「思いません……」
この真面目なグラハムの顔を見てとてもそんな茶目っ気のある返しが来るとは思えなかった。
「まあ、さっき目覚めたアナンタ先生の聞き取りでお前に非がないのは認められたがな、やりすぎなんだよ。少しは加減しろ」
「加減って……私はただほんの少ししか――」
「ほんの少しの力で人を殺すの? え? こわぁ……。お前の持ち込んだこれってそんなヤバいの? えぇ……」
仕舞い込んだゴレムリンを取り出してそれはそれは恐ろしいものを見るようにグラハムは見つめて返してきた。
「そんな恐ろしいもんをぶっ放すな。その機能は停止させておけ。それが今回解放する条件だ」
「わ、わかりました……」
グラハムから返されたゴレムリンをリーグレットは受け取り、傷がないか確認したがどこ異常はなかった事に安堵する。
「まったく。こんな短期間で2回も警備員に連行される学生は創立以来お前が初めてじゃないか?」
「そ、そうですかねぇ。他にもいるんじゃないですかねぇ」
「居てたまるか! 嫌味だよ嫌・味! ここに勤めて10年経つがお前みたいな不良は初めてだよ。もう二度とここに来るなよ」
そうして無実が証明されたリーグレットは尋問室から追い出されたのだが……。
(私って……不良なの? 普通にしてるはずなのに……)
***
リーグレットは解放されてから校舎を歩き続けていると、周りの生徒たちがジロジロと見てくる様子に怯えてしまう。
これはさっきの講義でのやらかしがもう噂で広まってしまったというのだろう。
さすが、貴族社会の噂話は亜音速並みと言われるだけある。
出来るだけ人の少ない道を歩いたり、人の背後をそろりと歩いていると――
「お嬢様ー! お嬢様ー!」
廊下の前からリーグレットの元へ走ってくるバレンタインの姿が見えた。
リーグレットは周りの目を気にしつつ、バレンタインに廊下の端を指差して移動した。
「ど、どうしたの? そんなに慌てて……」
「どうしたもこうしたもないですよ。講義が終わる時間になったのでお迎えに行けば、警備に連行されたと聞かされるじゃないですか。一体今度は何をしでかしたんです?」
「講義を真面目に受けて先生を吹っ飛ばしました……」
「あー……なるほど? その先生はどこに? 今からお金を渡して許して貰わないと……お嬢様の将来が暗黒色に染まってしまいますよ」
「今頃医務室じゃないかな……私も後で一緒に謝りに行くよ……」
「そうしてください」
あまり怒られなかった事にホッとしながら廊下に立て掛けられた時計を見るともう14時だった。
その時ちょうど腹の虫がさっきからぐーっと鳴ってしまう。
(そう言えば聴取でお昼ご飯食べ損ねたんだ……)
「で? 次の講義ですが――」
「今日はもう疲れたから帰る……」
「お、お嬢様!? 講義に出ないのですか!?」
「うん……この後の講義は後で取り返せるものばっかりだからね、それよりもお腹が空いて立ってられないよ」
「えー……」
リーグレットが寮へと歩き始めたのをバレンタインは呆れた顔で眺めていた。
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