第10話 リーグレットの退屈
リーグレットが学園に通い始めて3日が経った。
そんなリーグレットは悟ってしまう。
(学園ってやっぱり面白くないよ……)
なにせ教師の話を聞いてノートに板書したり、使えもしない魔法を学ばされ続けるのだから……。
こんな事なら屋敷でゴーレムを作っている間が1番有意義だったかもしれない。
そう考えながらリーグレットは放課後、真っ直ぐ寮に帰り自室に立て掛けられたゴーレムの関節周りを持参した工具で調整していた。
そんなリーグレットを見て、バレンタインが大きく息を吐いた。
「機械弄りの方が楽しいですか?」
「そ、そんな事ない……よ?」
「はぁ……全く隠せてませんよ。かれこれ4時間も休まずに、そうしているじゃないですか」
「4時間!? まだ帰って10分の間違いじゃ……」
リーグレットが窓の外に目を向けると真っ暗だった。
帰ったのが午後15時で作業を始めて4時間……つまり今は19時という事だ。
「1日24時間じゃ足りないよ……」
これではあっという間に明日が来てしまう。
本音を言えば学園なんか行かずにこのままゴーレムを弄っていたいと思う。
ため息を吐いてゴーレムの冷たい装甲にリーグレットは手を触れる。
「現実逃避しないでください。ゴーレム作りよりもまずはご友人を作るべきでは?」
「うっ……」
「どうするんですか? このまま1人で卒業まで過ごすつもりですか?」
「そ、それは……」
(出来る事なら友達は欲しいよ? でも……)
モジモジと言い淀んでいるとバレンタインはお構いなしに続ける。
「それに社交界までもう直ぐではないですか?」
「うへぇ……そうだった……社交界があったんだ」
バレンタインの言う通り5日後に同学年での社交界が校内で開かれる事になっているらしい。
どうやらイーリス学園の伝統行事の一つらしいのだが、おそらく将来貴族社会に出た時のために生徒間での交流を目的にしているのだろう。
リーグレットがその社交界の存在を知ったのは昨日のこ……。このままでは1人で参加する羽目になってしまう。
正直休みたいのだが、この行事強制参加の為必ず出席しなくてはならないという条件付き……リーグレットに言わせれば拷問である。
「今日はもう夜ですので実質4日後です……大丈夫なんですか? 友人も知り合いも0なんですよ? そんなお嬢様が社交界だなんて……丸裸で戦争に参加するような物ですよ?」
「そんな大袈裟な……」
「事実ですよ。良いですか? この社交界は学生間での交流を目的としたものと表上はなっていますが、私が調べたところ、派閥が形成される場でもある様なのです」
「派閥?」
「ええ。この学園は貴族が多く通ってらっしゃいますからね。そん中で1人浮いてみてください……お終いですよ」
お終いとはどうお終いなのだろうか? とリーグレットはポカンとしたがバレンタインは答えてくれなかった。
「派閥をまとめ上げろとは言いませんがどこかに属することは考えていてもよろしいかと、アイアンガルドという架空の家名を背負っている今のあなたの存在は平民扱い……どこにも属さないとなると今後の学生生活に苦労するでしょうからね」
「た、たとえば?」
「半年後にある学生間交流試合とか、学生祭とか……とにかくいろいろです!」
(あー。バレンタインもよくは分かってないんだね)
と思うだけで口にしないリーグレットはウンウン頷いた。
「とにかく、そんな行事に向けて皆さんが友人をまとめ上げるリーダー性、講義で名を挙げたことによる存在感をこの社交界でアピールするのです。それなのにお嬢様ときたら……」
「そ、それなら私だって皆に知られている事はある……よ?」
「ほぉ……それは?」
「魔法師団若手エースの教師を吹っ飛ばした事……とか?」
「悪名ですッ! 悪名ですよそれ!? 褒められた物では決してございませんッ!」
「うひぃ!?」
叫ばれ耳がキーンとする程怒鳴られてしまう。
「8年も学園を休み、教師を吹っ飛ばした今のお嬢様は……はっきり言って不良です!」
「ふ、不良!?」
(やっぱり不良なの!?)
「ええ! それもイーリス学園始まって以来のとんでもない不良です!」
「そ、そこまで言うわなくても……」
「ここまで言わないとお嬢様はやる気にならないでしょう?」
心当たりがありすぎるリーグレットはバレンタインから目を逸らしてしまう。
「はぁ、話を戻しましょう……。そんな何もない、悪名だけがあるあなたが社交界でどうなると思います?」
「ま、まあ……面白い存在だとチヤホヤされたり?」
「馬鹿ですね……本当頭お花畑……いやゴーレム脳ですね」
「ひどい!」
(でもゴーレム脳は嬉しいな)
「で、でもまだ4日もあるんだし。なんとかなる……かも?」
「なんとかって?」
バレンタインの冷ややかな眼差し。
一切リーグレットの言葉を信じないと言った態度だ。
「社交会までに友人を作れば良いんでしょ?」
「出来るので?」
バレンタインの言葉にリーグレットは強く頷いてみせた。バレンタインはそんなリーグレットを見てそれならと言葉を続ける。
「では私はお嬢様を信じることと致しましょう。どの道、従者である私にはどうする事も出来ませんので……」
「ま、任せて! 社交界までに友達100人作ってみせるから!」
「大丈夫かなぁ……ほんとうに……」
ガッツポーズをするリーグレットにバレンタインは心配そうに見つめながら部屋を出ていくのだった。
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