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第31話 魔導師として

 火事からゴルディアスはサリュース、グラハムにアナンタ3人を含めた警備隊数名を助け出すことができたが、何名かは帰らぬ人となってしまった。


 この事故は警備隊のタバコの不始末として詰め所は一旦封鎖される事となり、3人は今学園内の医務室にて治療を受けている。

 

 意識は取り戻したようだが3人とも火傷の跡がひどく残っていて完治までに数日かかると医師教諭が言っていた。


 リーグレットは眠る3人の前で拳を握りしめる。

 彼女はこの火事がただの事故ではなく人為的な物であると考えていた。

 

 何度か警備隊詰め所の世話になったリーグレットはそこに居る隊員達がタバコの類を嗜んでいなかった事を知っているし、隠れて吸っているにしてもそのような匂いを感じさせなかった。


 これは放火だ。それも魔法を使ったものによる。

 何故それが分かるかといえば、中に突入したゴルディアスがメインカメラで捉えていたのだ、詰め所内の炎が魔力を帯びていたのを。


 であればこれは人の命を狙ったもの……殺人だ。

 詰め所に居たのは隊員と隊長のグラハム、アナンタにサリュースだけだ。

 この中で殺害する必要がある人物……。


 リーグレットはそれがサリュースを狙ったものだと考えていた、というかそれしか考えられない。

 アナンタは魔法師団のエースではあるが、学内の人気から手に掛けられる可能性は低いしグラハムに警備隊を狙うにはリスクが高すぎる。

 

 残された可能性のサリュースは、昨日リーグレット達に事件の全貌を話したばかりだ。


 それが理由だろう。

 どこかでアクラディーテに気づかれた可能性がある。それがなんなのかは今知ることは出来ない。

 

 だけど、間違いなく彼女が手を下したのだろうとリーグレットは珍しく怒りを露わにしていた。


「お嬢様、ここに居られましたか……」

「バレンタイン……」


 握りしめた拳を隠すように左手を重ねた。

 そんなリーグレットの様子にバレンタインは気付いていたが、追求はせずに彼女の側へ歩み寄る。


「3名の容体は安定していると先生が仰られていましたよ」

「うん……私も聞いた」

「……お嬢様はこの火事をリリベルタ家の仕業とお考えになられているので?」


 バレンタインの言葉にリーグレットはゆっくりと頷くと、「やはりそうですか」と彼も答えた。


「私の目から見てもこの火事は用済みとなったサリュース様を消すための起こされた物にしか見えません。証拠はありませんが、タイミングが良すぎるので……」

「そうだよね……事件を知ってる人間から見ればこれは明らかな口封じ……いいや証拠の隠滅だね……」

「ええ。そうなるとここで始末出来なかったことで彼女はまた狙われる可能性があります……。警備隊ごと始末を計ったことから、恐らく敵はなりふり構わず彼女を消しに来るでしょう」


 目の前には眠ったままのサリュース。

 リーグレットにとって友達になれるかもしれない初めての知り合い。魔法が大好きで、母の教えを忠実に守って生きてきた素直な人。

 そんな彼女が憧れの母から殺されそうになった事実にリーグレットは――


「私……行くね」

「お嬢様どこへ!?」


 立ち上がり医務室から出ようとしたところをバレンタインに呼び止められる。

 彼も分かっているはずだ。彼女がこれからどこへ向かおうとしているのか、だが彼女はバレンタインに告げる。

 これから何をするのかを。


「私……こんなの間違ってるって怒りに行かなきゃいけないの……」

「お嬢様がなぜ! あなたはこの学園で普通に生活したいのでしょう? ならここは大人しく見守ることが大事なのでは?」


 バレンタインの言う通りだろう。

 ここでリーグレットが動く必要性は殆どない……。

 目が覚めたアナンタとグラハムがアクラディーテを糾弾しに向かえば済む話なのだから。

 だが、だけど、だとしても。

 リーグレットは我慢ならなかった。

 

 それだけじゃない、彼女は魔導師なのだ。

 魔導師は魔法使いを教え導く立場にあるのだから。

 不本意ながら魔導師になったリーグレットだが、この立場に立つものとしての責任は負わなければいけない。


 明らかにアクラディーテという魔法使いは間違った道を進んでいることは明白。

 それにこの怒り……彼女にぶつけなければ晴れることはないのだから。

 

「確かに普通に生きれるのなら生きてみたいよ? でもそれじゃダメなんだよ……。私には力があって、その力を正しく使うための責任があるの。間違ってることを放っておくことなんて出来ない……」

「お嬢様……」

「だからごめんなさい、私は行くね。だいじょうぶ、私こう見えてすっごく強いんだから」


 震える手でガッツポーズをとったリーグレットをバレンタインは諦めたといったように肩をすくめた。


「分かりました。なにもお嬢様が負けるだなんて思っておりません。私はただ、お嬢様が学園生活を思いのままお過ごしになる為にと助言したまでですので」

「ありがと。それじゃ――」


 リーグレットは医務室の扉に手を掛ける。

 そして扉を開くと同時にバレンタインへ告げた。


「悪い魔女さんを叱ってくるね」


 リーグレットはバレンタインにニッと笑った笑顔を向けて出ていくのだった。

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