表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/26

第14話 サラマンダーVSゴルディアス

 リーグレットは生まれた時から魔法が使えない。

 それは変えられない事実であり、呪いだった。

 だが、彼女には人の何倍もの魔力をその体に秘めている。

 彼女はこの魔力をどうにかして活用できないか考えた。

 考え、考え……考え抜いた。

 そして行き着いたのだ。

 そうだ……この魔力を、私の体を動力源にすればいいと。


 ***


 鋼色に輝く鉄の鎧。

 分厚く、まるで騎士甲冑のような装甲がリーグレットの――【鋼鉄の魔導師】マキアが作り上げた傑作ゴーレム――ゴルディアスだ。

 

 ゴルディアスはリーグレットの魔力で稼働する。

 手に握るゴレムリンを通じて内部に組み込んだエーテルゲイザーと呼ばれる装置に魔力が転送され、心臓部にあるエーテルリアクターに魔力が流れると鎧に命を吹きかけるのだ。

 

 ゴルディアスと視界を同期させた今、リーグレットは思考するだけでゴルディアスを自在に稼働させる事が可能になる。


 目の前のサラマンダーがゴルディアスを敵と認識したらしく、けたたましい咆哮を上げ始め、その場から消えた。

 

 いや本当に消えたわけではない事をゴルディアスのメインカメラが捉えていた。

 緑色の矢印の先、ホールの燃える壁に張り付くサラマンダーを示している。

 

 壁に張り付いたサラマンダーは舌をニョロリと出してはこちらに目を向けていて、これではまるで本当にトカゲのようだ。

 トカゲと違う点があるとすれば、炎を吐き出さないことだろうか。


 サラマンダーが口を開き炎を吐き出した。

 目の前に広がる炎がゴルディアスの眼前を真っ赤に染め上げる。

 リーグレットはサリュースを守ろうとゴルディアスに炎を受け止めてもらうよう脳内で指示を出した。


 サラマンダーは今の攻撃がゴルディアスへの有効だと見たのか、舌を出し入れしては首を動かし余裕さをアピールしている。


「これぐらいなら私の友達は負けないんだから! ゴルディアス!」 


 炎に耐え切ったゴルディアスは右手をサラマンダーに向けると掌底が開いた。

 中には空洞が開いているが、これはゴルディアスが持つメインウェポンの1つ――


「エーテルバスター」


 低い男性の声――ゴルディアスに登録された音声が鎧から発せられると掌底から光の玉が放たれた。

 それはリーグレットの魔力から生み出された属性を持たないエネルギーの塊である。

 

 その光の玉がサラマンダーの体に直撃し、トカゲのような身を焼いて削った。


「グギャァァーー!?!?」

 

 痛みにサラマンダーが絶叫し怯んだ。

 同時、周囲の火の勢いも弱まった、どうやらこの炎はサラマンダーと魔力が繋がっているらしく、ダメージを与えると火が弱まるようだ。

 

(だったらこのまま押しきる!)

 ゴルディアスはこの隙に脚部ブースターを点火しつつ一気に間合いを詰めた。

 だがサラマンダーはそんなゴルディアスの接近を許すまいと舌を伸ばし腕を絡めとるが――それは悪手だ。

 

 グイッとゴルディアスが腕を引いてやるとサラマンダーの体が壁から引き剥がされ床に激突した。

 サラマンダーはまるで虫がひっくり返った時のように手足をばたつかせている。


 そんなサラマンダーの腹にゴルディアスは拳を繰り出した。白い腹に鋼鉄の拳がめり込んだ。

 トカゲらしい見た目だけあって腹部の防御はかなり薄く柔らかいようだった。

 

 ゴルディアスは絶え間なく腹を殴り続けた。

 同期された視界に表示されたサラマンダーの魔力残量がみるみる内に減少していくのをリーグレットは確認する。

 どうやらゴルディアスの攻撃は確実にダメージを通しているらしかった。

 

 だが、サラマンダーはこのままでは終われないと身を返し舌を伸ばしてゴルディアスの首に巻きつき、大きく体を捻って投げ飛ばした。

(あんなに小さいのにゴルディアスを投げ飛ばした!? どこにそんな力が……)


 鋼鉄の鎧が壁に激突し大きく砕いた。

 ゴルディアスの周りに焼けた瓦礫が落ちて鎧をジワリと焼き始め鋼色が赤と白に染まっていく。

 

 このままでは熱で装甲が溶けてしまうと見たリーグレットは、ゴルディアスをすぐに立ち上がらせ、サラマンダーに距離を詰める。

 

 サラマンダーはゴルディアスとの接近戦は不利と見たようで床と壁を交互に飛び交い私から距離を取りつつ火球を口から放ち続けた。


 スピードでは完全にサラマンダーの方が上だ。

 ゴルディアスとサラマンダーの間に開いた距離が中々縮まらない。

 しかもいやらしい事にサラマンダーは学生の体を盾にするようにルートを取って逃げ続ける。

 これではエーテルバスターが撃てない。

 もし撃てば、学生まで巻き添えになるだろう。

 

 攻撃してこないゴルディアスに対してサラマンダーは容赦なく火球を浴びせてくる。

 両腕を交差させて受け止めるが、弾けた炎がホール内をさらに燃やしていく。

 

(そういえば……)

 ふと気付けば……サリュースのタイダルウェイブが止まっていた。

 振り返ると膝をつき苦しそうにしている彼女の姿があった。

 

 魔力切れ――

 そしてこの場の煙を吸った事による疲弊だろう。

 そうなると炎を抑え込む魔法が尽きてしまった今、このままでは全員焼け死んでしまうのは確実だ。

 

 追い打ちをかけるようにサラマンダーは絶え間なく距離を取り、火球を放ち続けている。

 サラマンダーはこれが最善の戦法と見たようだ。

 逡巡するリーグレット……迷った末に唯一の答えを導き出す。


(サラマンダーの炎に耐え切れるか分からないけど……零距離でフルバスターを撃ち込むしかない)


 これが彼女の行き着いた答えだった。

 エーテルバスターは私の魔力をそのまま塊として打ち出す魔法であり、当たれば確実にダメージを与えることができる。

 

 が、普通に放てば奴の纏う魔力によってダメージは減退してしまう。

 例えるなら魔力量が100相手に150の威力をぶつけても通るダメージは50といった感じだ。

 ならどうすれば150の威力をそのまま通せるか……答えは簡単、直接奴の体に触れて魔法を撃ち込めば良い。


 だがゴルディアスはサラマンダーのような炎を身に纏う相手を想定して組み上げてはいない。

 サラマンダーの放つ熱に耐えられるかどうかはかなり危険な賭けになるだろう。

 

 だとしても残された選択は速攻で決着をつける、この手段しかない。いや、やるしかないのだ。


「行って! ゴルディアス!」


 リーグレットが叫んだ。

 ゴルディアスはその声に呼応するように脚部からエネルギーを噴射して飛び掛かるように一気に間合いを詰めはじめる。

 

 これにはサラマンダーも予想外の挙動だったらしく、奴は火球を放つ為に大きく口を開けたまま動けないようだ。

 放たれた火球をゴルディアスは撃ち出したバスターの反動で横に躱して前へ突き進む。


 サラマンダーに距離を詰めるゴルディアスの装甲が白く変色していく。

 やはりサラマンダーの炎に耐えられるだけの耐久はないようだった。

 

 これまでサラマンダーと相手をする機会がなかったのだから想定外なのは仕方ないだろう。

 だが結果、ゴルディアスがサラマンダーの頭部を掴んだ。


(1発で終わらせる)

 だとすれば右手だけの出力では足りないだろう。

 だからゴルディアスは右腕の装甲を開き、左手をそこにある接続口に押し当てた。

 

 左手に循環された魔力が右手に流れ込み、掌底と掴んだサラマンダーの隙間から白い光が漏れ出す。


「ギャッギャッ」


 サラマンダーもこいつを喰らうのはまずい! と言った慌てぶりを見せ始めた。

 だが、ゴルディアスの掴んだ五指は完全にロックされていて回避する事を許さない。


「ごめんね。でもこれもみんなの為なの!」


 罪悪感はある。生まれたばかりの命をリーグレットが幕を下ろそうとしたのだから。

 

 そんな彼女はサラマンダーを屠るための魔力を十分にチャージするようゴルディアスに指示を出す。

 やがてメインカメラにロックされた円が緑から赤へと変わりピーと音が鳴り響く。チャージが完了した合図だ。


「エーテルフルバスター」


 低い男の声……瞬間――

 ゴルディアスの右手から放たれた極大の光の本流。

 それはホールの床を砕き、大地を抉り取っていく。

 

 そんな輝きに飲まれたサラマンダーなど、塵すら残るはずがなく、ガッチリ掴んでいたはずのサラマンダーの感触は一瞬で消え失せていた。

 

 エーテルバスターが止むと、そこには何も残されていなかった。ただ一つあったのは巨大な大穴だけが広がっている事だけだろう。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

もし面白いと思って頂けたら

評価とブックマークをして頂けると励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ