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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
イルブロンの街にて

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臨時メンバー加入 ⑨

橘家と居候たちがお世話になっているイルブロンの街の宿前にて、誰かを待っている人影が見えた。もちろん、()()人たちである。


「うっ!」


最初にレオンさんが呻いて足を止めた。ブランたちに偉そうにお説教していたレーゲンも器用に空中で制止した。一人と一匹は宿前に立つ人影にギロリと睨まれているようだ。

遅れて気が付いた私たちは、懐かしさに顔を綻ばせる。そして、全身を包む安心感! あと……今夜、厳しい指導を受けるのが私たちではなくレオンさんに代わったのがわかる。ぐふふふ。


「あ、あのパーティーは……」


ティトさんは器用にもっさりとして前髪の隙間から、宿前に勢ぞろいした高ランク冒険者パーティー「ライゼ」のメンバーを確認する。やっぱり、シルビオさんたちって有名なんだね。


小次郎と姉が久々の再会に小さく手を振ると、カルラさんとオリビアさんが大きく手を振り返してくれる。私も手を振っておこう。隣で兄が増えた夕食の人数に頭を悩ませていた。猪のお肉、足りるかな?


「久しぶりだな、アオイ! サクラもキッカも無事だな? ちびっ子は強くなったか?」


シルビオさんはニカッと気持ちのいい笑顔で私たち一人一人に声をかけたあと、その笑顔を黒く染めてパーティーメンバーであるレオンさんの肩を掴んだ。


「よぉ、レオン。ちょっと出かけてくるってどこまでのつもりだった? ん? あれから何日経ったと思っている?」


「…………ここにいると、伝えたはずだが?」


レオンさんは強い力で掴まれている肩の痛みに顔を歪めつつ、シルビオさんから顔を背けた。ボソボソと言い訳を呟きながら。私の経験則から、ここは素直に謝ってしまえ。それが正解だ。


「お前~、しばらくダンジョンに潜るって言っただろうがっ! 一人でこんなところまで来やがって~」


グイグイとレオンさんに顔を近づけるシルビオさんのドスの効いた声に、周りに人が集まってくる。う~ん、目立つなぁ。野次馬の中には、「ライゼ」のリーダーであるシルビオさんに気が付く人がチラホラ。


「菊華。俺たちは宿の中へ入ろう」


「そうね。ああ、カルラさんたちはどうします?」


単にレオンさんを連れ戻しにきたなら、お別れの挨拶だけでもしたい。でも……なんとなく、シルビオさんたちは兄のご飯を逃さない気がする。


「私たちもしばらくはこの街にいるわ」


「ここの宿に空きはあるかしら?」


カルラさんの猫耳がピクピクッと動いて、オリビアさんの笑顔に圧が加わる。う、うむ、ここは宿の部屋を確認してきましょうかね。私が動く前にタターッと小次郎が宿のフロントへと走っていった。本当に気働きのできるいい子だよ。































レオンさんとシルビオさんの仁義なき戦いが勃発するか? と焦りましたが、兄の「今日のご飯はシルビオさんもご一緒に」の言葉にあっさりと緊張感は霧散しました。「食」って大事。シルビオさんも裏表のない笑顔だし。レオンさんはホッとして兄にお礼を言っていた。


「ライゼ」の名前を出して、宿の部屋はスムーズに確保。しかも、私たちの部屋よりもグレードの高いお部屋です。いいなぁ~。


「レオンさんはあちらに移るので?」


昨日からティトさんというメンバーが増えたから、私たちの部屋も手狭になったし……、あっちの部屋はメイドさんもいるし……ベッドがデカイし……。


「いや、俺はキッカたちの部屋で」


無表情で言い切るレオンさん。どんな気持ちなのかはわからないけど……もしかして兄の食事目当てかな? レーゲンも背中越しに顔を出してウンウンと頷いているし。いや、レーゲンはあっちにお母さんがいるでしょ? いいの? はー、いいんだ。


でも、全員でご飯を食べるには「ライゼ」の部屋が適しているので、みんなで移動です。


「はい、今日は猪の肉です。野菜もちゃんと食べてください。食後のデザートもちゃんと用意してありますよ」


「うわーっ! いただきます」


私たちは目の前のお肉料理に目を輝かせ手を伸ばす。定番のステーキから角煮っぽいもの、ハンバーグではなくハンバーガーにしてチーズも目玉焼きも挟んであり最高。ソースも塩レモンみたいなサッパリ系からタルタルソースのようなもったり系まで、いろいろと用意されている。これ全部、兄の手作りなの?


「ソースとかは宿の厨房から分けてもらった。肉をミンチにしたり、ハンバーガーのバンズやチーズ、野菜もわけてもらったよ。飲み物もあるよ」


シルビオさんたちの前には当然のようにアルコールが置かれ、橘家にはお茶。ティトさんはどっちだろう?


「ティトさんはお酒飲みます?」


あ~んとハンバーガーにかぶりつく瞬間に聞いたものだから、ティトさんの眼がシロクロしている。すまん、タイミングが悪かった。ゴホンゴホッとむせながら嚥下して、ティトさんはブルブルと頭を振る。


「お酒飲めませんか?」


成人はしているよね? 冒険者なんて仕事終わりにジョッキのエールを一気飲みのイメージ……って、前の世界のおっさんのイメージと同じだわ。


「ねぇ、キッカ、その子って、エルフよね? 半端ものの?」


ドシッと私の頭にお酒のコップを持った腕を乗せて、カルラさんが挑発的に話しかけてきた。


えっと……彼はハーフエルフですけど……カルラさんも、エルフと猫獣人のハーフですよね?


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