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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
イルブロンの街にて

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臨時メンバー加入 ⑥

ひぃーっ、お腹が痛いーっ。


何年振りかの全力疾走中です! 兄や小次郎とも逸れ、頼りのレオンさんもその姿は見えず……最悪なことに姉も行方不明。ただいま、橘菊華は異世界のダンジョンで一人ぼっちです。


いやああぁぁぁぁっ!






















風光明媚なところっていいよねぇ。前の世界でも風景がキレイな場所は有名な観光地だったし、写真や動画、映像で見るのも心が癒されたもの。一面に広がる草原に橘家が暫し見とれているが、足元にはブランたちが倒した猪の魔物が累々と横たわっている。

あ、ダンジョンに吸収されてドロップ品が出現したわ。


「……ダメだよ、ブラン。桜さん用に残してあげないと。一撃で倒しちゃ、ダメなんだよ」


「ワフン」


……その姉はブンブンと頭を勢いよく左右に振って、魔物討伐を拒否ってますけどね。兄がせっせっとドロップ品を集めている。一部はティトさんの分け前だけど……どうします?


「ティトさん。ドロップ品の分け前ってどうします? いま、分けておきます?」


なにせ、ティトさんは臨時メンバーだからね。何かのときに、トラブルになっても大変だ。ダンジョン内でパーティーがバラバラになる場合もある。ちょうどドロップ品が猪のお肉だったし、非常食でもらっておきなさい。


「いいぇぇぇぇぇっ」


姉と同じように頭をブンブンと振るティトさんに、兄はずっしりとしたお肉を手渡した。遠慮しない、遠慮しない。今日は四階でお肉狩りだーっ!


……と、最初はよかった。

問題は、猪を倒し狼を切り払い、お昼ご飯を食べて少し休憩をしていたときに起こった。


「あら? 菊華ちゃん、そこにいたの?」


「ん? 私、ずっとここにいたけど?」


「じゃあ……あの人影は誰かしら?」


そう姉が指差す方向には、ガサガサと揺れる草。ぴょこと頭が覗いて……ん? 緑の頭って、おかしくない?


「サクラ、キッカ! 下がれ、それはゴブリンだっ!」


「お姉ちゃん!」


私は咄嗟に姉の腕を掴み、レオンさんの声がする方向へ走りだす。反対に小次郎とブランが草原の中へ飛び込んでいった。


「大丈夫か?」


心配そうに顔を歪める兄に姉を託し、私はティトさんへと向かう。


「ティトさん!」


「は、はいっ!」


私の呼びかけに全身ビクンと反応して返事をするティトさんに、私は気合を入れるため彼の背中をバシンと叩いてみた。


「おわっ!」


「さあ、ティトさんもゴブリン退治に行ってください」


私は行かない。二足歩行の魔物相手にナイフを振り回すのは……ちょっと。でも、ゴブリンってダンジョンの中でも複数で襲ってくるらしいから、小次郎たちだけでは不安。ティトさんは魔法を使えば、ゴブリンなんて瞬殺できちゃうでしょ?

だから、レッツゴー!


しかし……ゴブリン退治の邪魔をしたのが、この草。

草、草、草が視界を阻むほどの高さで密集しているから、ゴブリンがどこにいるかわからないし、味方のいる方向も不明。ティトさんの悲鳴が草原の向こうから微かに聞こえてくる。


……いや、すぐそばでも悲鳴が……あ、姉が恐怖の余り走り出した。


「ちょっと待て、桜! いいか、菊華は動くなよっ」


兄が姉を連れ戻しに走っていってしまった。レオンさんと小次郎たちはゴブリン退治。ティトさんはどこかで悲鳴を上げていて、姉は恐怖で敵前逃亡。兄は姉の捜索へと……あれれ?


「やだ! 私一人じゃない!」


いやいや、ここで待てって、ゴブリンがきたらどうすんのよっ! プチパニック状態の私の耳に響く、ガサガサと草が動く音……。

そして目が合う、緑色の肌のあいつ。


「い……いやあぁぁぁぁっ」


誰に助けを求めればいいのかわからないまま、私は叫んでダッシュした。草がバシバシと顔や腕に当たって地味に痛い。でも、足を止めたらゴブリンと対峙しなければいけない。そんなの、絶対にイヤ!


こういうとき、従魔は颯爽と主人を助けにくるものではないの? なにをやってんのよ、ブラン! ご主人さまの危機に駆けつけなさいよ! あと、残念イケメン冒険者のレオンさん! あなたはこういうときにパパッと魔物を倒すために、私たちとダンジョンに入ったんですよね? 兄のご飯を食べるためだけに同行しているわけじゃないよね? じゃあ、早く助けてえええぇぇっ。


「も、もう……無理……」


運動不足が祟ったのか……お昼ご飯を食べ過ぎたのか……横っ腹が痛くなりもう走れません。背後からはガサガサと草が揺れる音が迫ってくるけど、膝も手もついて四つん這いになって息を吸う。


ど……どうしよう。


二足歩行の魔物なんてイヤとかわい子ぶっている場合ではない。ナイフで攻撃しなきゃ。ひ弱な私でも一撃で倒せるように、急所を狙って……急所……やっぱり首かな? 心臓……あるの? ああ、どうしよう、手が震えてきた。緊張でますます息が上手に吸えない。


ガサッガサガサッ。

一際大きな草の音にナイフを構えるよりも、私は両腕で頭を抱え蹲った。やっぱり、ダメーっ!


「菊華ちゃん、危ないっ!」


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