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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
イルブロンの街にて

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臨時メンバー加入 ⑦

心の中で、こんな危険な世界に召喚しやがったトーリア王国の奴らを呪い、この世界のアホ神に罵詈雑言を呟いた私だったが、小次郎の声にパッと顔を上げた。必死な顔の小さな救世主、小次郎と、その小次郎がこちらにブン投げてきた緑とグレーの不思議な物体?


「あ! ヴェルデ?」


みょーんと体を伸ばしたヴェルデは、見事に私を襲おうとしたゴブリンの頭に着地し後ろ足でキック! キック!

呆然と見守る私の前で、ガブッと首を噛みきり、スタッと華麗に着地した。ヴェルデの後ろで血を噴き出しながら倒れるゴブリン。


「うええぇっ? ヴェルデ、あんた……そんなに強かったの?」


ただの怠け者じゃなかった。魔物図鑑で調べた通り、種族「パウーララーテル」は最強種だったの? ただのイタチもどきだっと侮っていました。


「菊華ちゃん、大丈夫?」


ペロペロとゴブリンの血で汚れた口周りを舐めるヴェルデを追い駆けて、小次郎がやってきた。少し震える私の手を両手でギュッと握ってくれる。


「うん……。ヴェルデが助けてくれた。小次郎もありがとう」


本当にありがとう。まさしく、小次郎は「勇者」だわ。強くても残念イケメン冒険者のレオンさんや、超スペシャル魔法使いのティトさんよりも、小次郎のほうが頼りになる。……というか、こんな危険なダンジョンの中で頼りになるのが、まだ小学生の小次郎ってどういうことなのよ!


「あ、菊華ちゃん。血色がよくなってきたね」


ホッとした笑顔の小次郎の言葉で、私は怒りが恐怖を凌駕して平静を取り戻したことに気づく。いかん、いかん。小次郎に甘えては!


「本当にありがとう。ところで、他のみんなは?」


小次郎の話では、小次郎とブラン、フォレスでゴブリンの集団はほぼ倒せた。なんだか、一体だけ体が大きく斧を持ったゴブリンはレオンさんがズバッと斬り捨てたらしい。ティトさんの魔法はゴブリンを退けるのにも役に立ったが、視界の悪い草原を焼き払うメリットもあった。ただ、火魔法をぶっ放した本人がパニック状態だったけど。


「そう……。四階に挑戦初日にゴブリンの襲撃に遭うなんて、運がなかったわ」


ゴブリンからのドロップ品ってしょぼいって話だし。まさに骨折り損のくたびれ儲けということだ。私なんて何年振りかの全力疾走で、あとからくる筋肉痛が怖い!


「それで、あっちで桜さんが転んで泣いてる。葵さんが自分で治せって言っているけど……」


確かに、姉の泣き声が聞こえた気もしたが、それより悲鳴を上げているティトさんにレオンさんの怒声が被さり、うるさくてしょうがない。


「ワフワフッ」


バサッと草叢から飛び出してきたのは、ご機嫌なブランだ。ご主人様(ひと)の気も知らないで、まるでスキップのように跳ねてはスリスリと私の足に体を擦りつける。なんだ? ゴブリンを倒して褒めてほしいのか? でも、ダメーッ! 主人を放っておいて討伐(あそん)でいたんだから、ダメです。


「あー、じゃあ、みんなのところに戻ろうか?」


ヴェルデを背負って、乾いた笑いを洩らした小次郎は、しっかりと私の手を握って歩きだす。私から褒められなかったブランはしょんぼりしながら後ろをついて来る。


あー、疲れた。もう帰りたいです。
























疲れた兄、泣いている姉、怯えているティトさん、イライラしているレオンさんと背中にひっついているレーゲン。走り回っているブランとシンシャ、兄の肩に止まってお眠のフォレス、熟睡中のヴェルデは小次郎の背中。

ぐったりと精神的疲労が拭えない私と、大活躍の小次郎の爽やかさが嫌な対比となっている。


「どうして、こんな低層階でこんな大混乱になっているんだ」


レオンさんの呟きに私は心の中で、「たぶん勇者への試練です」と解答しておく。どうやら、レオンさんが倒した一際大きいゴブリンは、ゴブリンソルジャーという種類で、ただのゴブリンよりも強いらしい。


「ゴブリンっていろいろな種類があるのねぇ~」


私が感心していると、レオンさんとティトさんがギョッとした顔でこちらを見てくる。はて、なんでしょう?


「ちょっと待て、キッカ」


「え? 嘘ですよね? ゴブリンのこと知らないなんて。それで冒険者稼業をしているなんて……」


信じられないモノを見る目で見るでない。


「えーっ、お兄ちゃんは知ってるの?」


「ん~、ゴブリンって子どもぐらいの大きさで群れを作る習性があるぐらいしか……」


そして、ドロップ品がしょぼく、とっても臭い。ブランたちが、姉のために瀕死の状態に留めておけなかったのは、できるだけ素早く倒すか、遠い場所から攻撃するかしたから、手加減がいまいちできなかったらしい。


「まさか……お前たち、そんな知識しかないのか?」


レオンさんが愕然としているけど、こういうファンタジー要素の知識は姉のオタク知識に頼るしかないので。


「お姉ちゃんは知っているんでしょ?」


いつまでもグスグスと泣いて、自分で治した擦り傷を摩ってないでよ。


「うん……わかるけど……。どれがどれだかはわからないわ」


つまり、ゴブリンメイジとかゴブリンナイトとかゴブリンキングとか種類があるのは知っているけど、見ただけじゃどれがどれだかわからないってことらしい。


「てへっ」


あざとい笑いで誤魔化したが、レオンさんとティトさんには効果がなかった。


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