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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
イルブロンの街にて

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トラブル発生 ⑧

ファビオさんに責められながら、今までのギルドマスター業務をサボっていた……本人に自覚はなかったが、とにかく、迷惑をかけたと私たちに頭を下げた熊男グレゴリオさん。


「まぁ、小次郎が許すなら、私たちも異論はありません。ああっと、ブランたち従魔が攻撃したのも、正当防衛として不問にしてください」


ちょっと過剰防衛だったかもしれないけど、主である私の深層心理を汲み取った結果なので、ブランたちに悪気はなかったのです。


「もちろん。むしろ、主の危機に立ち向かい、キッチリと仕返しができる、よい子たちです」


ファビオさんは、ちょこんと座るブランやシンシャ、兄の肩にとまっているフォレスに笑顔を向ける。う、美しい……。ヴェルディは小次郎の膝の上でぐでぇとしています。あんた……チャラ男たちに攻撃もしないで、ボーッとしてたんもんね。この子、いざとなったら、ちゃんと戦えるの?


そして、ファビオさんがパチンと指を鳴らすとギルド職員の制服を着た男の人たちが部屋に入ってきて、縛られたチャラ男たちをどこかへと連れて行く。ペナルティを課すと言っていたから、なにかしらの罰則を受けるのだろう。あいつらが、もう二度と私たちの前に現れなきゃいいや。

それよりも……。


「あのぅ……一人、お忘れで?」


奴らが後ろ手に縛られたときから不思議だったのですが……、なぜ、紫髪の治癒士の男は縛られず、いまもギルド職員に連行もされず、この部屋に残されているのか?


「ああ……この子は、さっきの連中の仲間じゃないんだ。たぶん、脅されて行動を共にしていた。そうだろう?」


ファビオさんが顔を後ろに向けて紫髪男に問いかけると、ビクンと大げさに体を跳ねさせてキョロキョロと辺りを見回す。う~ん、挙動不審。


「もう、あいつらはこの街からは追い出すから大丈夫だよ。しばらく鉱山にでも働きに出ればいいと思っているよ」


ニコーッと笑顔で語る内容が不穏! 鉱山に働きって、刑罰じゃないの? いわゆる労役ってやつですよね? まぁ、チャラ男たちならヒドイ目に遭っても別にいいけど。


ファビオさんは、手招きをして紫髪男を呼び寄せると、ムッとした顔で彼のもっさりとした前髪をグイッと掻き上げる。


「ええーっ!」


思わず叫んだわよ! なにそれ、なにそれ? 姉がポツリと「あら、お約束の展開」とか呟いているけど、それどころじゃないわっ。

前髪に隠れていた紫髪男の顔は……とっても、キレイだったのだ。突然のことに口を開けて驚いている私の袖をちょんちょんと引っ張った小次郎がもう一つ、彼が隠していたものを教えてくれた。


「菊華ちゃん……あの人の耳も尖っているよ」


もしかして、ファビオさんとはエルフ仲間ってことですか?






















紫髪男は、ファビオさんの知り合いではなく、純粋に同族って訳でもなかった。紫髪男の名前はティト。なんと、エルフの母と人族の父との間に生まれたハーフエルフらしい。ますます、ファンタジーの世界。


「ハーフエルフって呼び方は好きじゃないけどね。ティトの父親は人族ってことになっているけど、本当はいろいろな種族が混じっていてわからないらしいんだよ」


そして、エルフの母とそのわからない種族の血がティトさんに齎したのは、桁違いの魔力と能力だった。


「え? そんな羨ましい境遇なのに、なぜそんな気弱な?」


こちとら異世界からの召喚だってのに、しょぼいスキルしかもらえなかったんですよ? 「勇者」である小次郎にはレアスキルがあるけれど、それも使いこなすには体の成長とレベルアップが必須だし。


「……こればっかりは本人の性格だからね。本が好きで大人しい性質なのに、治癒魔法と火と水と氷の属性魔法が使える。それ以外にもスキルを持っている。冒険者としてはパーティーに一人は欲しい人材だよ」


そもそもティトさんは冒険者になるつもりはなかった。田舎でのんびりと暮らしてきたティトさんは、成人したときに父親から突然家を追い出された。別に家族仲が悪かったわけじゃないらしい。ただ……父親なりに「男の子だからいろいろと経験して強くなってほしい」と願ったからだ。


「それで、父親の古い知人を頼って王都にでてきたティトは、見事に心を折られてしまった」


「……でしょうね」


いまも必死に長い前髪を下ろして体を小さく縮こませているのだ。気のせいか、プルプルと細かく震えているようにも見える。


「しかも、王都での就職先はあっさりとクビになり、お金に困って冒険者になったら、あの素行のよくない冒険者にカモられて、イルブロンの冒険者ギルドまで流れてきたのさ」


「ファビオさん、詳しいんですね?」


サブマスって冒険者一人一人の事情に詳しいの? それはそれでプライバシーが心配になるよ。


「こんなところでエルフと出会うのは珍しいからね? それもハーフエルフで、純粋なエルフより魔力が多いのに、自己主張に乏しくてコミュ障な同族なんて会ったこともなかった」


どうやら、エルフ同士の好奇心らしい。では、ファビオさんは橘家には興味を持たずに放っておいてください。探られたらマズい情報がてんこ盛りなので。


「ティト! あんな奴らからは離れろって言っただろう? 下手したらお前もペナルティを課せられるところだったんだぞ」


偉そうにギルマスがティトさんに言い放つが、お前の職務怠慢の犠牲者だろうがっ。私たちは、じっとりとした視線をギルマスに浴びせるのだった。


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