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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
イルブロンの街にて

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トラブル発生 ④

翌日の朝。


まあ、当然と言えば当然だけど……、体調不良が数名。今日もダンジョンに行ってレベル上げしようと思っていたのに!


「もう! お兄ちゃんまで二日酔いなの?」


「うわっ、怒鳴るな菊華。俺はちょっと頭が痛いのと、胃がムカムカするだけ……」


立派な二日酔いじゃない。普段はビール派で飲み慣れていないワインをガバガバ飲んだからだ。そして、やっぱりお前もか……と姉を視線で刺す。


「ううっ……頭が痛くて気持ち悪い。あと……なんか、瞼が腫れて目が開かない~っ」


泣きすぎです。お酒の飲みすぎで顔も浮腫んでますよ。


「…………っ」


あんたもかっ。あんなにグイグイ飲んでたじゃない。なんでレオンさんも撃沈しているのよ! レーゲンが面白がって頭の上でジャンプしてますけど?


「どうする、菊華ちゃん?」


「どうするって、ここじゃ薬もないし……」


胃薬やら栄養ドリンクもないし、シジミの味噌汁も作れないしね。ひたすら寝て治すしかないのでは?


「あっ、お姉ちゃん。「治癒魔法」使ってみたら?」


昨日のダンジョンアタックで「解毒(小)」というしょぼいスキルアップをした姉。もしかして、二日酔いに効くのでは?

姉はきょとんとしたあと、実験とばかりに兄へ「治癒魔法」をかけた。


「ん?」


「どう?」


兄は頭を左右に倒し、胃の辺りをさすさすと摩ってみた。劇的に改善されたわけじゃないけど、不快感はなくなったのかな?


「あ……スッキリした気もする」


姉も自分に「治癒魔法」をかけたみたい。確かにちょっと血色が良くなって瞼の腫れも引いたようだ。うむ、いつもの無駄に儚い美貌が復活している。


「……サクラ、俺にも……」


ガラガラの声で姉に手を伸ばす哀れなイケメン。……段々、レオンさんがイケメン冒険者から、残念食いしん坊へとレベル落ちしている気がする。


「……小次郎、朝ご飯を食べに行こうか」


「うん」


私たちは、あんな大人にはなるまい。
























朝ご飯を食べ終えて、さあ今日はどうしよう。


「……今からダンジョンに行くには時間が遅いし……気分も違うし」


二日酔いに苦しんでいた大人組のテンションは落ちたままだから、朝からダンジョンでヒャッハーの気分にはならないらしい。そもそも、オーディールダンジョンの一階でネズミを追いかけるのは、正直楽しくない。


「部屋でゴロゴロしてる?」


はい、姉の意見は却下。油断するとすぐにインドア生活に突入しようとするんだから。異世界で引きこもり生活していたら、すぐに住むところも食べるものもなくなるからね!


「……ギルドにでも行くか?」


「そうだね。昨日の人が依頼の処理をするのに来てくれって言っていたし」


駆け出しの冒険者としては生温いことだが、本日橘家はお休みとなりました。お昼前にギルドに行き依頼達成の手続きをしたあと、どこかのお店でお昼ご飯を食べることにしよう。


「あ、お姉ちゃん。ダンジョンの魔物討伐の依頼はどうなってるの?」


「え? えっとぉ……そのぅ……」


私と目を合わさないように明後日の方向に顔を向けている姉の行動で、だいたいわかった。


「……小次郎?」


「シンシャが……三十五匹ぐらいって」


全然足りないじゃない。こりゃ、しばらくはネズミ退治だな。


「まあまあ、初日だったし。また明日から頑張ってダンジョンに行こう」


兄はポンポンと私の肩を叩き、姉の頭を優しく撫でた。レオンさんはマントの背中にレーゲンを引っ付けて私たちを待っている。


「冒険者ギルドに行くから、ブランは昨日と同じ大きさになって一緒に行動よ」


「ワンッ」


テーブルの上でシンシャたちとじゃれ合っていたブランは、ぴょんと勢いよくテーブルから飛び降りると、大型犬ぐらいの大きさになって着地した。釣られてシンシャもテーブルから飛び降りると大きな猫のサイズに変わる。


「フォレスも昨日と同じ大きさで俺の肩へ」


バササッと羽の音を響かせて兄の肩の上にがっしりと捕まってとまる。


「アイテテテッ」


どうやら爪がしっかりと兄の肉を掴んでいるらしい。ふふふふ。


こうして、いつもの賑やかな橘家は何も考えずに冒険者ギルドへと向かった。……そう、すっかりダンジョンで起きたテンプレな出来事など忘れていたのだ。

















ギルドに行き、昨日子どもたちを引率していたギルド職員を見つけ、ダンジョン引率の依頼達成の手続きするまでは順調だった。私とレオンさんが昼食のメニューで意見の相違があり口喧嘩をしているのを除いては。


手続きが完了するまで、なんとなく依頼が貼ってある掲示板の前をウロウロとしていた私と小次郎。そこへ、わざとドカッと小次郎にぶつかってくる大男……ん? どっかで見たことのある奴らだな?


「あぁ~ん? なんでこんなところにガキがいるんだぁ?」


大きなダミ声でいちゃもんをつける男、その後ろに二人の男がいる。大人にぶつかられて尻もちをついてしまった小次郎も呆気に取られた顔で男たちの顔を見つめている。

うんうん、そうだよね。この、子どもに対して尊大な態度を取ってくる見掛け倒しの冒険者たち……この人、オーディールダンジョンの前で会ったテンプレ冒険者たちだーっ。


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