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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
イルブロンの街にて

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トラブル発生 ②

「ビッグラットだな」


姉が倒したでかいネズミは、しばらくするとそのままスゥーッと消えていき、ポツンと何かが残された。ドロップアイテムが出現したのだ! しかし、あのネズミの名前が安直で脱力する。ミニュラットとかピッコラットときて、ビッグラットってそのままじゃん!


橘家は瀕死の人の救命を怠ったとして、レオンさんに怒られたあと、怯えた子どもたちのケアと解毒ポーションにより症状が落ち着いた人の手当てをしています。


「一階のフロアには弱い魔物しか出ないのでは?」


それとも、あのネズミはでかいだけで弱いと? 毒で死にそうになった人がいるのに? あのレベルが子どもでも倒せる激弱魔物だったら、もう橘家の冒険者活動は暗澹たる未来しか見えん。


「いや、ビッグラットは五階以上のフロアに出現する。子どもの引率を任されたギルド職員でも倒せるが……複数の子どもを守りながらでは、ちょっと厳しい」


レオンさんが同情する眼差しを、スコースコーと寝息を立てている人へ向ける。ああ……ダンジョンに潜るぐらいだからある程度の実力はあるだろうけど、子どもを守って倒すのは至難の業ってことね。ネズミ……素早かったもの。


「ビッグラットはそんなに素早くない。ただ、体当たり攻撃があるから油断はできない」


そして、爪や牙にある毒も猛毒であると……。怖っ、ダンジョンってやっぱり怖い!


「……あのぅ」


うにゃ~んというシンシャのご機嫌な声とともにかけられる子ども特有の高めな声。ぐりんと振り向けばシンシャをもふりながらこちらを窺う子どもたちの不安そうな顔があった。


「あ……」


最初に怪我はないか確認はしたけど、そのあとは解毒ポーションを飲ましたり、黒い血を振りかぶった姉の頭や顔を濡れタオルで拭いたりしていて、忘れてた。いけない、いけない。


「ああ、ごめんね。この人が目を覚ましたら君たちもダンジョンを出ようね」


一人、一人、目を合わせて声をかける。男の子が三人に女の子が二人。小次郎と同じくらいの年齢に見える男の子二人が一番年上かな? 


「……まだ、アイテム拾いできてない」


「うぐっ」


そうだ、この子たちは生活のためにダンジョンに潜っているんだ。親がいなかったり、親が働けなかったりして生活が困窮しているんだった。


「お兄ちゃん……どうする?」


「どうするって、引率者がぶっ倒れているしなぁ」


引率のギルド職員と血まみれの姉は仲良く並んで横になっている。どっちにしろ、姉が目覚めなければ私たちもダンジョンから出れないし。


「代わりに子どもたちの引率してくれば?」


「……そうするか……。小次郎も連れて行って、フォレスがいれば危険もないだろう」


兄は鞄からお菓子を出すと子どもたちに配り始めた。一緒に行動するのに仲良くなろう作戦である。





















私たちの前には土下座状態で頭を下げている男の人と、恨みがましい目でグスグスと泣いている美女がいる。ダンジョン引率のギルド職員と姉だ。


「このたびは、本当にお世話になりました」


元気そうでなにより。解毒ポーションを飲めば後遺症もなく治るとのことだから、歩いて帰れるでしょう。子どもたちのアイテム拾いも兄と小次郎が手伝ったおかげで、いつもより多めに拾えたからね。まぁ……いつもなら冒険者たちが取りこぼしていくクズアイテムを拾っているんだけど、今回は兄と小次郎が倒した魔物のドロップアイテムをそのまま渡しているから、実入りもいいでしょ。

自分たちの保護者が倒れて泣いていた子たちもホクホク顔だし、兄からもらえるお菓子でお腹もそこそこ膨れたでしょう。


「ま……まさか、Aランク冒険者パーティー「ライゼ」のメンバーであるレオンさんに助けられるなんて」


キラキラとした眼でレオンさんを見つめているが、レオンさんはガン無視だ。きっと、こういう憧れの視線を嫌ってほど浴びてきたんだろうなぁ。イケメンだし。


「もしよろしければ、今回子どもたちの引率の依頼を受けたこととして処理いたしますが?」


「いいんですか? 私たちアイテム拾いを手伝っただけですよ?」


「……私がヘマをしたので」


しかし、あんなでかいネズミが一階にうろついているなど予想外だし、彼の責任ではない……こともないのか?


「依頼は受けたことにしておけ。ポイントが高い依頼だ。パーティーランクを上げるときの評価になる」


レオンさんの助言を聞き入れて、ありがたく依頼を受けたことにする。後日、ギルドに行って手続きをする必要があるみたいだけど。


「それよりも、ビッグラットが出没したことを気にしろ」


ギロリとレオンさんに睨まれて、ポカンと口を開けたギルド職員さんは、ハッとしたあとあわあわと慌て出した。


「どうしました?」


挙動不審ですよ? 子どもたちの前ではもっとシャッキリしてください。不安になるでしょうが。


「も……もしかしてスタンピードの前兆でした?」


勢い立ち上がって発せられた言葉に、橘家はきょとん。スタンピード……あれ? どこかで聞いたことのあるワード。

なんだったけ?


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