表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
イルブロンの街にて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/106

トラブル発生 ①

ダンジョンの壁側の暗がりに偵察に行ったフォレスはブーンとそのままこちらへ戻ってきたけど、ブランはワンワンッと吠えたまま戻らない。あの子のことだから子どもたちとじゃれているのかと、私が女性としてはあるまじきしかめっ面を晒した。


しかし、兄の元に戻ってきたフォレスは、兄の上着を鋭い爪で掴むとグイグイッと引っ張る。これは、もしかしてトラブル発生? 平和な国でのほほんと過ごしていた橘家の横をレオンさんとレーゲンがビューッと走り過ぎていく。


「あれ?」


「菊華、俺たちも行くぞ」


兄と小次郎が走り出すから、私もつられて足を動かす。もちろん、姉の手をしっかりと握って走りました。こんなところに姉を置いていくわけにはいかぬ。


「待って……菊華ちゃん、お、お姉ちゃん、そんなに早く、走れないっ」


嘘を吐け。アニメのイベントとかでバカでかい会場を動き回ったり、変な振り付けで踊ったりしているでしょ。体力はあるはずなのよ、体力は!


「ほら、お兄ちゃんたちに置いていかれたら、またネズミが出るわよ」


私の脅しが効いたのか、姉は奇声を発しつつ走りだした。




























フォレスがバサバサッと翼をはためかせつつ倒れている人の体に下りていく。……へ? 倒れている人?


「お、お兄ちゃん。あそこ、誰か倒れている」


「それだけじゃないぞ。あっちを見ろ」


兄の指が示す場所には……怯えて泣いている子どもたちが座り込んでいる姿と、その子どもたちを守るように四肢を踏ん張っているブラン。あれ? レオンさんとレーゲンは?


「菊華ちゃん、レオンさんたちは周りに魔物がいないか警戒に行ったよ」


なんだと? では、私たちであの魔物をどうにかしないといけないのか!


「きゃっ! な、なにあれ? 菊華ちゃん、どうしてあんなに大きなネズミがいるのーっ!」


姉の叫びに激しく同意だわよ。子どもの悲鳴に駆けつけた私たちの前には、倒れている大人の人やぶるぶる震えた子どもたちの姿よりも、ででーんとでかいネズミの姿がある。なにこれ?


まず、その大きさが異常。大人と同じ大きさよ? 兄と同サイズだわ。んで固そうな茶色の体毛がびっしりと生えていて、口からは前歯二本がニョッキリと出ている。あれは歯なの? マンモスの牙みたいですけど? 無毛で細い尻尾はやたら長く、うねうねと獲物を探ってるように動いていて気持ち悪い。しかも、人相じゃないネズミ相が激悪。まず眼が凶悪。白目のところが真っ黒で瞳孔が真っ赤ってファンタジー……じゃねぇわっ!


「ガルルルッ」


今にも子どもたちに襲い掛かりそうなネズミのバケモノは、ブランの唸りに体をビクッとさせてやや後退する。どうやらブランのほうが強いらしい。


「お兄ちゃん! あのネズミ倒したら経験値ががっぽり入るかな?」


「いま、そんなこと考えるか? まあ……入るだろうなぁ」


剣を構えていた兄がふと思案顔をすると、隣の小次郎も剣を握る手から力を抜く。


「よしっ! フォレス、あのネズミのバケモノを逃がさないようにこちらへ誘導! ブランはそのネズミの首ねっこ捕まえてお姉ちゃんに。シンシャはブランの代わりに子どもたちを守って!」


「ひいいいぃぃっ。菊華ちゃん、なんて恐ろしいことを!」


慄いている姉を余所に、兄と小次郎はさりげなくフォレスと共にネズミの逃げ道を潰し、ブランはシンシャと役目を交代するとダッと走りネズミへと襲いかかる。よっしゃ、ガブッと首に噛みついたね。


「ブラン、そのままネズミを弱らせてからこっちへ」


「いやぁぁぁっ。ブランちゃん、そのまま止めを刺してあげてぇぇぇっ」


うるさいっ。ブランが倒しても意味がないでしょ。私は震える姉の手にしっかりとナイフを握らせる。


「わふん」


はい、どうぞと姉の目の前に放り出される瀕死状態のネズミ。さあ、姉よ。思いっきりナイフで止めを刺して!


「ひぃぃぃぃんっ」


グサッと刺したらブシュッと黒い血が噴き出し、姉はパッタリとその場で気絶してしまった。私? 私はひょいと避けたわよ。ナイフで刺したら血が出るのは当たり前でしょ?


「おいっ、菊華。こっちも大変だぞ」


兄が倒れている人の体を仰向けにして顔を覗き込んでいた。


「どうしたの? ……うえっ」


か、顔が……倒れている人の顔が土気色で口から泡が……。ネズミに襲われて、こんな姿になるの?


「あ……毒か!」


そういえば、ミニュラットやピッコラットたちには爪や牙に微弱な毒があるって。あのでかいネズミなら微弱な毒どころか猛毒を持っていてもおかしくはない。


「お兄ちゃん、この人は毒に侵されているんじゃ?」


「ああ、そうだな。でも、桜はまだ解毒のスキルはないし……解毒のポーションも持ってないし……」


私と兄は倒れている人を前にう~んと考え込む。軽傷用のポーションは買ったが、解毒のポーションは買ってない。買うつもりもなかった。だって、そんな簡単に毒に侵されるなんて思わないじゃない?


このあと、あのでかいネズミが他にいないか探しに行っていたレオンさんが戻ってきて、無事に解毒ポーションが投薬された。私たちは倒れている人を前に呑気にしていたとレオンさんにむちゃくちゃ怒られるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ